ホメオスターシス(生体恒常性) その4 | 髭の拝さんのブログ

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病について分子栄養学的観点で思い付くまま書き記しますが、中身は栄養素の生理活性をお知らせしながら
健康回復の道筋を説きます。
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2014228(病は何故発症するのだろうか)
で以下のことをお知らせしました。

ホメオスターシスとは、生物  が、外界  条件  変動  しても体の状態や機能  一定  に保つ働き  のことです。そして、病が発症する、ということになります。

その説明が次の流れです。精神的な病の発症であるとすれば

1.栄養欠損・ストレス・加齢・感染

(タンパク質・パントテン酸・ビタミンCなどの不足、大量消費による欠乏)


2.ホルモン・自律神経の異常
・免疫機能低下

(副腎髄質からのアドレナリン・ノルアドレナリン分泌の低下)


3.生体恒常性(ホメスターシス)の低下

(やる気ホルモンの分泌不足からヒトの気力・行動力が低下する)


4.発病

(一例として、うつ病・適応障害・不安神経症など)

これを時間軸で巻き戻すと、強いストレス時に副腎が渇望する栄養である「タンパク質・パントテン酸・ビタミンC、その他、ビタミンA・カルシウム」などが満ち足りていると、ストレスが持続してもホルモン分泌や自律神経の異常が起きずに、心や体に生体恒常性が保たれて、発病には至り難い、と言うことになります。

「そのようなことはない」、と思い込んでいるのが臨床の現場(診察室)なのかもしれない。しかし、栄養の働きが体の機能を変えるのは現実なのです。

強いストレス時に副腎が渇望する栄養、と前置きしましたが脳(体)が求める栄養に「ビタミンB群」があります。


心と栄養

人の性格や心の質を、食事内容を変えただけでは方向づけられない、と、私も思います。しかし、いつも心の穏やかな人たちの食事が良くない方向に変化しただけで、荒れ狂うほど心の質が悪くなってしまった、と云う事実もあるのです。それは、実験調査の場で現実に起きました。彼らの穏やかな心が荒れた心へと変化するさまを、目の当たりに確認した精神科医や科学者たちがいる。


マクガバン報告

1977年に、アメリカ上院栄養問題特別委員会が、アメリカばかりでなく世界中の研究機関の優秀な頭脳を動員して、食事と健康の関係を調べたところ、驚くべき結果が出た。それは、アメリカ合衆国上院議会に報告されて、世界中にもその結果が発信された。「マクガバンレポート」と名付けられています。

 その報告書の中には、ガン、糖尿病、肥満、心臓病などの生活習慣病以外にも、心のトラブルを特集したものがあった。

その中で、非行や犯罪で荒れるアメリカの現状について原因を調査しよう、という調査委員会が1970年代後半に設立された。アメリカの精神科医マイケル・レッサー博士は、自らの治療経験から一つの仮説を持っていた。それは食事に原因がある、という体験的理由から、彼らの食事を変化させることで、被験者らにどのような心の変化が起きるのだろうか? という調査を開始した。「非行や犯罪の原因と栄養の関わり」を調べ上げるためでした。

マイケル・レッサー博士は、その調査結果を米国上院議会で証言した学者としても有名な方です。上院議会と云うのは、日本の国会にあたりますから、その場の証言にウソがあれば偽証罪に問われることになります。とっても責任のある調査と報告だったのです。


実験の方法

アメリカが誇る総合病院であるメイヨー・クリニック、並びに、米国州立刑務所の実験志願者たちが受けた食事による実験と調査結果です。

ビタミン.B1を除いて他は全てアメリカ人の食事に含まれる栄養量を満たしていた。ビタミンB群欠乏の症状をいくつか記します。以下、Vはビタミン(Vitamin)の略

V.B1 欠乏

衝動性、よく眠れない、無感動、錯乱、情緒不安定、興奮し易い、うつ、悲運が迫っているという感じ、疲れ、不眠、頭痛、消化不良、手足が痺れて熱くなる感じ(異常感覚)などが認められた。
 衝動性(しょうどうせい)とは、悪い結果になってしまうかもしれない行動を、何も考えずに行ってしまう、という行動特性です。 衝動性が高すぎる場合、犯罪や、ある種の精神病者と同等の問題を引き起こすことがある。
実験を続けると、3か月以内に「実験志願者全員が、興奮し易い、うつ、喧嘩しやすい、非協力的、わけもなく何か不幸が待っているという恐れを感じる」と云う状態になった。

「そのうち二人は騒ぎ立て、人生はもはや生きるに値しないと感じ、自殺の恐れに脅かされた。全員が自分の仕事に非効率的になった。」「他には、頭痛、背の痛み、眠れない、緊張、皮膚にアリが這うような感じ、わずかな痛みにも耐えられない、音に敏感になる、やがて彼らには低血圧、貧血、代謝率低下、心悸亢進(しんきこうしん 心臓がドキドキすること)、心肥大、息の短さ、心電図異常、胃酸分泌が消えた」が観察された。

21週までに彼らにはひどい頭痛、吐き気、それに嘔吐(おうと)が始まったので実験は終わりにされた。

実験終了後VB1投与を開始すると、23日のうちに彼らは皆、快活になり、胃酸の分泌は12日で正常になり、心臓の肥大は15日で正常になった。

ストレスがV.B1不足を増大させ、特に運動ストレスはそうであるので、ぎくしゃくする動きが始まったらV.B1不足を疑いましょう。

また、白米、精白粉、白砂糖及びそれを含んだお菓子は、V.B1の消費が増えて、欠乏を招きます。


V.B2欠乏
 震え、めまい、不眠、精神的不活発、深紅色または紫色の舌、口のすみの裂け目、それにヒビが切れたように見える唇。
 光に対して過敏になるのはV.B2欠乏の初期症状。菜食主義者はV.B2欠乏になり易い。


ナイアシン欠乏 

幻覚のような感覚異常、妄想思考、気分とエネルギーの障害、重いナイアシン欠乏症、下痢、皮膚炎、痴呆、そして死。この欠乏症を「ペラグラ」といいます。


V.B6欠乏

興奮しやすい、疲労、集中力の乏しさ、気分の動揺、よく眠れない、口のすみの裂け目、突然の睡眠発作(低血糖が併発していることが多い)、腹痛、脂漏性湿疹、朝の吐き気と不眠。ビール酵母が有効


パントテン酸欠乏

パントテン酸は抗ストレスビタミンでもある。ひんぱんに風邪を曳く人もパントテン酸は有効かもしれない。

アイオワ州立刑務所で志願者にパントテン酸を除いては十分な食事が与えられた。彼らは2週間の欠乏の後、疲れるようになった、食欲を失い、3週目には便秘になり、4週目までには喧嘩早く、喧嘩腰になり、不満を持つようになった。

尿中の副腎ホルモン測定値は、実験が続くに従って次第に低下した。胃酸と酸素の減少で低血圧、胃痛、連続的な呼吸器感染症にもなった。

第5週には、この志願者たちは全く惨めになり、足がひりひり熱くなるという苦痛が加わった。 その時点で実験を止めることになったが、食事にパントテン酸が戻されるとすべての症状が消えた。

V.B12欠乏

悪性貧血(巨赤芽球性貧血)、長期にわたる欠乏症として無感覚、いちご舌、ひりひりする痛み、よろよろする歩きぶり、神経反射の喪失、これらは悪性貧血の症状かも知れない。
 そして、悪性貧血になる35年前に、無感動、気分動揺、記憶の貧弱化、注意集中と学習の障害、幻聴、感覚異常、妄想思考、極度の精神不安等が現れる。

 水溶性ビタミンであるが蓄積されるのです。胃全摘出手術などによりV.B12の吸収が悪くなるのですが、全摘後35年でVB12欠乏状態になり、突然倒れることがしばしば起きる。これは、その間消耗されるまで肝臓にV.B12が蓄えられているからです。


葉酸欠乏 

V.B12と同じように、貧血になるずっと前から欠乏の症状が現れる。貧弱な記憶が目立つが。おそらく最近の記憶事象の貯蔵に必要となる核酸の合成に葉酸が必要だからであろう、と考えられている。

無気力、無感動、幼児の発達遅延、記憶障害、興奮しやすい、引っ込み思案、全ての知的過程の遅れ、うつ、幼児における脳の成長の遅れと麻痺。

ストレス時には、体内でたくさんのタンパク質が壊されて糖に変換される(糖新生)。その時に、糖をエネルギー化するのに大量のビタミンB群が消費される。その為に、ビタミンB群は欠乏に陥るので上記の症状が現れやすくなるのです。

ビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、ビオチン、葉酸、パントテン酸等)は、どの種類であれ一つだけが足りなくなることはない。その為に、どれもまんべんなく摂らなくてはビタミンBの働きが低下することになります。

次回は、脳がエネルギー産生不足になる生化学的原因について記したいと思います。堅苦しい話ばかりでゴメンなさい。