―かいてんさんオススメのスイムベイトって、デビルスイマーってやつでしたっけ?
か「そうですよ」
―なんか日本橋のキャスティングに普通に売ってますけど。
か「!! 確保して!!」
―わかりました、ということで確保したデビルスイマー。
値段は税抜きで1,500円とかなりお求めやすい価格になっていました。
僕はスイムベイトは全く詳しくありませんが、今までに少なくとも2回、
目の前でかいてんさんが釣り上げる瞬間を目撃しています。
大きさ的には20cm弱くらいでしょうかね。
これがハードルアーならビッグベイトと呼んで差し支えない大きさです。
魚をイミテートした柔らかいボディにチョコンとトリプルフックが一つだけ付けられていて、
使ったことがないながらも、非常にノリが悪そうだという想像はつきます。
にも関わらずしっかりと釣り上げられるということは、バスはよほど疑いなく喰ってくるということでしょうし、
それだけの喰わせ能力があるのだ、という裏返しでもあるのでしょう。
―次の釣行の時に渡してあげよう。
大事に釣りカバンの中にしまって、来るべき週末に備えた僕だったのでした。
この週末は房総のフローターダムへ行こう、と最初に言い出したのは勅使河原さん。
―ああ、そうですよね、去年爆釣したのはちょうど今くらいの時期でしたからね。
完全なる欲望釣行ですね。
去年、同じダムの釣行で、たしか一人で40本くらい釣ってた勅使河原さん。
こうなってくるともう魚を探すだのパターンフィッシュだのというスポーツフィッシングの本質からは外れて、
とにかく投げて釣ってリリースして、という単純作業の繰り返しになってくるわけですが、
年に一回くらい、そんなボーナスゲームのような一日があっても良いんじゃないか。
―わかります。そうですよね。
擦れっ枯らしの関東のフィールドで釣りをやってれば、そんな心の癒やしが必要になることもあるでしょう。
すぐにかいてんさんがその欲望に乗っかり、続いて僕も、ということになったのでした。
…とは言え、状況は去年とはだいぶ違います。
去年はずっと残暑が続いていた中での台風襲来というタイミングでしたが、
今年は8月末から冷たい雨が降り続き、気温も上がったり下がったりと安定しません。
そういった状況が水質の改善であったり、水温の適正化に繋がっていたりすればよいのですが、
逆にネガティブな方向に転んでしまっている可能性も充分にあります。
ポテンシャルは既に証明されているフローターダムですが、
いつ、どんな時でも期待に応えてくれるスーパーフィールドではありません。
渋いときにはただひたすら渋い、関東フィールドの当たり前の側面も持ち合わせているわけで、
実際、今年の夏の初めに訪れた時は一日やって4本と、なんとも言い難い釣果でした。
…でも、ねぇ。
夏の終わりに大爆発!なんて、やっぱり期待しちゃうじゃないですか。
バスが水面直下を大群でスクールしてて、岩盤を撃てば待ってましたとばかりにフィーディングのバスがすっ飛んでくる、
シャローを巻いてもいいし、ストラクチャを狙ってもいい。
そんな期待が持てるのが、夏の終わりの時期というものじゃないですか。
手返し良く釣っていくには―、やっぱり巻物とー、撃ちはシンカー重めでー、
なんて、捕らぬ狸ならぬバスの皮算用をしながら、僕は無意識のうちに二桁は釣るつもりで、それを前提に用意を進めていたのでした。
当日。
3時半に房総のコンビニで勅使河原さんと合流をする約束になっていますので、
2時にかいてんさんを拾ってそのまま房総を目指します。
―今日、どんな感じでしょうね。
友人と釣行する際、道中絶対に話に上る質問ですが、これほどフワリとした答えのない質問もなかなか無いわけで、
結局は思い思いに想像の翼をはためかせつつ、最後は自分が思うとおりにやってみよう、という結論に落ち着くことがわかりきっていますので、
実はこの類の質問自体が無意味なのかもしれません。
か「ダムだから、人が感じているほどには影響を受けてないと思いますけどね」
かいてんさんが言っているのは、このところの低気温と雨のことでしょう。
チラリと車内の温度計を確認すると、外の気温は19度しかありません。
この気温を信用すると、じゃあダムの季節はすっかり秋なのか、ということになるわけですが、
ところがどっこい実は水中は夏のままでした、なんてのは良く聞く話です。
今日の天気予報では、たしか午前中が雨で…、最高気温は23度くらいだったはず。
…雨、降らないといいんですけどね。
言いながら、無理な相談かなぁと自分でも思わないでもありません。
車を走らせている途中途中で小雨がフロントガラスを濡らしています。
きっと、一日パッとしない天気になるのでしょう。
か「雨は、基本的に歓迎ですよ」
雨好きを公言するかいてんさん。
僕自身も雨天の釣行で良い思いをしたことが何回もありますから、それは理解できるのですが…。
ただ、この気温と、今日はなんといってもフローターですからね。
なんとなく不安な気持ちのまま、房総のコンビニに到着して勅使河原さんと合流します。
お久しぶりです、なんて挨拶もそこそこに、
―どこからエントリーします?
僕が質問したのは、フローターでダムを釣行するために避けては通れない問題に対するもので、
想像がつく方もいらっしゃるでしょうが、ちょっとだけ解説をしておきますと、
ダムのような広大なフィールドは、そもそもフローターでの釣行には向きません。
ボートのように、「あれ、ダムサイトには魚がいないか。じゃあ河川筋の方かなー」
なんて気軽に移動ができるものではないのです、フローターというものは。
非常に複雑に変化が入り組むダムにおいて、その中でも「どのエリアが可能性が高そうか」と一度判断をしたら最後、
大きな移動が行えないフローターは、エントリーしてしまったそのエリアと一蓮托生ということになります。
ということで、フローターによるダム釣行はエントリーポイント選びの時点でその日の勝敗が八割がた決まってしまう重要なもので、
さすがにこればっかりは、自分の勝手で決めてしまうというわけにはいかないのでした。
…とはいえ。
―去年、爆ったとこでいいですかね?
勅&か「いいですよ!」
…うん。今回に限っては、聞くまでもなかった。
来たれ、昨年の再現よ、てのが今日のテーマなんですから、それに反するような決定があろうはずがない。
夜が明ける前に準備を始められるように、早速現地に向けて出発したのでした。
4時に現地に到着。
このところすっかりと夜明けが遅くなってきて、あたりが明るくなるのは5時前くらいになるでしょうか。
―4時半くらいから白ずみ始めると思うので、それから準備しましょうか。
それまでは、各自エントリーポイントの確認や水量、水質の状況などを行っておくことにします。
―かいてんさん、レイン持ってきました?
か「持ってきましたけど、今結構暑いくらいなんで、どうしようかな…」
気温計は変わらずに19度を指していますが、風がなく湿気があるせいか気温よりも蒸し暑さを感じます。
―僕は着て行こうかな、暑かったら脱げばいいし…。
ウェーダーの上からレインを纏いますが、汗でレインの内側が張り付いて気持ちが悪い。
エントリーするまでの我慢、ということで、ようやく白ずんできた風景の中、エントリーの準備を始めます。
―最初のルアー、どうしようかな。
サーフェイスクランクか何かで魚が浮いてるか確認しようと思ってたけど…。
―あ、そういえば、かいてんさん、あれ持ってきましたよ、デビルスイマー。
か「あ、持ってきてくれてたんですか。ありがとうございます」
でもかいてんさん、これ既に何個か持ってましたよね?そんなにストックが必要なんですか?
か「8個持ってますよ」
―8個!?
ハァ!?
か「最終的にデビルスイマーでアラバマやりますから」
…多分、冗談のつもりなんでしょうが、かいてんさんならやりかねないかもしれない…。
笑えずにいると、
か「何個あっても困りませんから!それくらい良いルアーなんですよ!」
…なんだかそこまで言われると少し興味が出てきました。
―試しに僕も使わせてもらってもいいですか?
か「いいですよ!ロッドもMLあれば投げれますから大丈夫です!」
―1オンスでしょ、ほんとに?
半信半疑のまま、とりあえず巻物用のMにセットしてみます。
考えてみれば、釣れるか釣れないかはともかくとして朝一のサーチルアーに丁度いいかもしれない。
この手のルアーの集魚力は僕も知っているところ。
まずはチェイスをしてくるバスがいるか、確かめてみよう。
準備が整い、早速出航です。
レインを脱いでカバンに突っ込み、さっぱりしたところでデビルスイマーを巻いていきます。
岩盤キワに落として、そこからヌラヌラと…。
…うーん、確かに良い動きをしている。
ビッグベイトを初めて見た時も同じような感想を抱きましたが、
実は大きなルアーほど、自然な生き物っぽい艶かしい動きが出しやすいのかもしれない。
ヌラヌラーっと巻いて、またバシャーンと投げて…。
周りを確認すると、かいてんさんはデッカいポッパーでトップから始めている模様。
聞くと、シイラなんかを狙えるルアーとのこと。
勅使河原さんは…、あれはなんだろう。
実は勅使河原さんはフローターではなく一人フロートボートでの参戦。
エレキを搭載し、持ち前の機動力で遥か先に行ってしまっています。
エントリーにはものすごく苦労しているようでしたが、いったん浮いてしまえばやはりボートは快適。
大場所ならなおさらです。
…その後も僕はシャローをヌラヌラ、立ち木周りをヌラヌラと攻めていきますが、チェイスすらありません。
―かいてんさん、そっちどうですか?
か「チェイスすら無いですよ」
同じか…。
この時間帯で浮いてないのは寂しい。
てことは岩盤か、あるいは…。
直リグを手にして壁際に投げてみます。
この辺りの壁際は密に木が沈んでいて、引っ掛けては外し、引っ掛けては外しながら落としていくのが有効。
昨年も同じ攻め方で40アップを釣りました。
ククッ、チョンチョン…
ククッ、チョンチョン…
…グゥーーーー!
向こうから引っ張り込むようなアタリ!
スイープにアワセてみます!
…ゴツン!!
…乗った!
―かいてんさん、きました、喰いましたよー!
言いながらもやり取りを続け、枝に巻かれないよう水面にバスを誘導します。
慎重に慎重に…、
…ギューーーーーン!!
わわ、走った、やばいそっちじゃない!
…ギューーーーーン!!
そっちでもないって!こっち!
…グゥゥゥゥゥ!!!!
突っ込むな!、…重い、これデカイ!45ある!
デカイデカイ!デカいっすよ!なんて叫びながらネットで一気に…、
いよっしゃ、アッブネー!
か「…? やり取りの割にあんまり大きくない?」
…ん?
あれ、ほんとだ。思ってたより大きくない。
サイズを測ると、40丁度くらい。
―でも、めっちゃ引きましたよ、コイツ。
か「相変わらずここの魚はコンディションいいみたいですね」
かいてんさん曰く、餌にポイントがあるのでは、とのことでしたが…。
いずれにしても、どうやら水深のある沈み木の中に付いていたようです。
とすると、やはりテキサスや直リグ、ラバージグなんかで枝の間を落としていくのが良さそうですが…。
でも、この時間帯で沈み木の中、かぁ…。
か「シャローにはいませんね」
シャローを引き倒していたらしい、かいてんさんが近寄ってきました。
―ちょっとこれは、期待通りにはいかないかも、ですね。
開始から一時間も経っていません。
ここからひたすら沈める釣りだけ、というのはちょっと辛いなぁ。
それで数が出るような状況には思えない。
かいてんさんも直リグに変更して底を取りだしたようです。
僕も先ほどと同じように、沈み木に引っ掛け引っ掛け進んでいきます。
か「…喰った!」
…ん!?
振り返ると、かいてんさんのロッドがしなっています。
―来ましたか、かいてんさん!どこで喰いました!?
か「ベタ底!」
答えながら、バスを引きずり出そうとしているかいてんさん。
右に寄せ、左に寄せ…、
…ブヅッ!
!!!
え、ブレイク!?かいてんさん、そんなデカかったですか!
か「…いや、魚体見る限り35くらいでしたけど…」
…抜いた時にこすってたんだろうか。
残念無念ですが、自分の釣りに戻ります。
すると、またすぐに、
か「…喰った! …!?ああああああああ」
―なんですか、どうしました、かいてんさん!
か「アワセ切れしました…」
―へっ!?立ち木の中ですか?
か「いや、底をズル引き」
…ついてない。
しかしそれほどブチブチ切れるとは、底にゴミが多いのか、バスの引きが強いのか…。
いずれにしても底付近でアタリが集中しているということは、やはりバスは沈んでいる様子。
シャローを攻めても反応が無かったわけです。
勅「…どう?」
いつの間にか勅使河原さんも戻ってきていました。
―いや、僕はまだ一本で…、かいてんさんが連続でバラしてましたが…、
勅使河原さんの方はどうでした?
勅「あっちは浅すぎるね、エレキ擦っちゃうくらい」
―なるほど、魚は沈んでるみたいですからね。水深があるところを狙ったほうが良さそうですね…。
来た方向に引き返します。
引き返しつつ底を取っていくと…、
これくらいのサイズの魚が3人にポロポロ釣れてきます。
―小さめのは底べったり、大きいのは沈み木の中なんだろうか。
そんなことを考えながら、大きく移動を開始します。
移動途中、ワンド状になっているシャロー。
普通ならクランクか何かを巻きたいところですが、今日はシャローは望み薄。
つけっぱなしになっているデビルスイマーを投げて、魚の有無を確認してみます。
ビューーーーン!…ジャボーン!!
…ゴン!!!
!?
…落ちパク!?
スイムベイト落ちパクとかあるの!?
意表をつかれましたが慌てて巻きを開始します。
―ぐ、こいつも結構引く…!
普通なら40くらいだと思うけど、ここだと30ちょっとってところなのかな?
余計なことを考えつつ巻いていくと…、
…フッ
急に重みが消え、垂直に戻るロッド。
―うわっ、バレた!?テンション緩めたつもりなかったのに…。
巻いている途中で魚が外れてしまったようです。
たしかにフックはデカイし、スイムベイトは乗りにくいしバレやすいルアーなのでしょう。
しかし意外だったのは、シャローで落ちパクするようなバスが居たという事実。
案外、中にはやる気のあるバスもいるということ…?
クランクやスイッシャーを試してみるものの、反応なし。
ただ、この場所は温めておけばまた違うバスが入るかもしれない。
あまりプレッシャーをかけないように、攻めきらずに次のポイントに移動します。
…寒い。
空を見上げると小雨が降ってきました。
さきほどしまったレインウェアを着込みます。
エントリー時点の気温は19度でしたが、気温は上がるどころか下がってきている気がします。
最高気温は23度と言ってたから、そこまで上がれば人の活性も上がるんだけど…。
フローター釣行は夏場が多く、干上がることはあってもあまり低気温に苦しめられることはないのですが、
いつものクセで購入しておいた1リットルのペットボトルは、まだキャップを空けてすらいません。
万一の際のモニョモニョのために、上陸できる場所はあそことあそこと…。
シミュレートしながら、釣り下っていきます。
しばらく、先ほどと同じように底を取りながら進んでいきますが反応のない時間帯が続きます。
水深は、さっきの釣れていたところは3~5mくらいかな?今のところは10m近くありそう。
水深が深すぎると魚は付いてないのか。
同じような水深の場所を探していきますが、こんなときに魚探は有効なんだろうな…。
フローターに積める魚探、検討してみようかしら。
…ブルブルブル
あれ、嫁さんからメールだ。
嫁「錦織勝ったよ!次は決勝!」
―えっ!?勝ったの?相手世界ランク一位じゃなかったっけ?
このところ、各局のニュースが錦織の躍進を繰り返し報道していたのは知っていましたが、
テニスに特に興味のなかった僕は、フーン、くらいに思っていたのでした。
しかしそんな僕でも、アメリカの一番大きな大会で日本人が決勝に進むということが、
いかにとんでもないことなのかというのは理解しているつもりです。
なにしろそれまでの日本男子テニス界といえば、同規模の大会でベスト8に進んだ松岡修造がレジェンド扱いとなっていて、
しかもそれも20年位前の話だったはずです。
…いやー、これは凄いことになってきました。
明日だか明後日だかには、文字通り日本のテニス界の歴史が変わるかもしれません。
ミーハー丸出しではありますが、しかしこうやって日本中が日本人選手の活躍に盛り上がるというのは、悪いことではないはずです。
つらつら考えながら、ふと前を見ると勅使河原さんが近くにいました。
寄っていって状況を聞いてみます。
…勅使河原さん、どうですか?
勅「さっきそこでデカいのかけたけどねー。スピニングだったから切られちゃった」
―え!マジですか勿体無い。
なんか、こっちの方のエリアは反応薄いですよね。
引き返します?
勅「うーん、そうだね…」
キャストを繰り返しながら情報交換です。
…そうだ、情報といえば。
―あ、そう言えばさっき嫁さんからメールありまして。
錦織勝ったみたいですよ。
勅「え!凄いじゃん」
―凄いですよね、勝てると思ってなかったですよ。
ウチの嫁さんもミーハーなんで、早起きして結果確認したみたいですけど…、
…あれ、
なんかリグが重たい。ゴミか。
もう、こういうのがリズムを狂わせるんですよね―。
ゴリ巻いて回収しようとすると、外れてくれたのか軽くなりました。
お、ゴミ取れた。
んじゃ引き返して…、あれ?
回収したリグには、しっかりとバスが喰ったと思わしき痕跡。
…。
魚だったっぽいです…。
勅「ちょ、錦織とか言ってるからでしょ!」
ゴミ(と僕が思い込んでいたもの)を巻き上げる状況を見ていた勅使河原さんのほうが、
あるいは違和感を感じていたのかもしれません。
別にテニサーでもなんでもない僕がミーハーぷりを発揮して会話に熱中した挙句がこの体たらくです。
久しぶりのアタリだったのに、気がつかないどころかゴミと判断するとはなんたることでしょう。
ちくしょう、錦織のせいだ…。
責任転嫁して、引き返します。
先ほどから温めておいたワンド状のシャロー。
違う魚は入ってきてるかな―、とばかりに、まずはスイッシャーを投げてみます。
キュルキュル…、
…ゴッ!
!!
ほんとにいた!
オリャアアアアア!
釣れたよ…、
シャローで巻き、今日やりたかった釣り。
…とは言っても、朝一、3人がかりであれだけシャローを攻めて結果が出なかったんだから、
どちらかと言うと、この一本の方がイレギュラーなんだろう。
きちんと場所を厳選して狙うぶんにはいいんだろうけど、シャローだから撃てば釣れるっていう状況じゃないのは間違いない。
ここは「良いシャロー」として記憶しておくとして、本命はやっぱり5mくらいの水深で底を取ることなんだろう。
シャローへの未練はこの一本で断ち切ることにして、先へ進みます。
…雨が強くなってきました。
今日の予報では午前中が雨、午後は曇りのはずですが、
とっくに正午をまわったはずの天候は一向に回復しません。
…寒い。
リールを握るとヒヤリとします。
手がかじかんではたまらない、と息を吐きかけたり、ウェアの中に手を突っ込んで温めたりしながら撃ち続けます。
ふと、水中に手を突っ込んでみると温かい。
今の気温が何度くらいあるのかわかりませんが、水温の方が高いのでしょう。
しかし突っ込んでいる間はいいのですが、手を取り出すとあっという間に気化熱で体温を持っていかれます。
手を極力濡らさないように、レインウェアの裾を引っ張って雨の侵入を防ぎます。
岩盤に密着した、とある立ち木。
遠目から直リグを投げてみます。
コツコツと枝にぶつかりながら沈めていくと…、
…コツン、
あれ?あたった?
半信半疑でアワセると、確かな魚の感触。
久しぶりに釣れた一本は、25cmくらいのコバス。
雨が強くなってきたため、写真撮影は断念です。
同じ場所に同じように投げてみます。
…コツン、
あれ?また?
同じようにコバスが釣れてきました。
…ふむ、あれか、コバスの成る木というやつか。
釣った様子を見ていたらしい勅使河原さんが近づいてきました。
勅「どう?」
―今そこの立ち木で2連チャン中ですね。
あのへんに投げると…、
ググン!!
あれ、またきた!
今度は多少サイズアップして30ちょっと。
―こんな感じで釣れるんですよ。
なんかバスが溜まってるみたいですよ、あの立ち木。
か「…なんだなんだ!どうした!」
…かいてんさんも寄ってきました。
―いや、そこの立ち木で連チャンしてて…、
か「なんだ!ええ!?どの立ち木だ!」
―いや、それですよ、そのちっちゃい立ち木。
か「あれか!どうせあれだろう、一杯食わせようってんでしょ!?騙されてやるよ!」
素直に立ち木にネコリグをキャストする、かいてんさん。
か「…喰わないじゃないか、ほら、騙りだこれ!やられたわー、ビジ夫さん性格わr…喰った!!!」
!!
ビシッとアワセるかいてんさん!
ロッドのしなり具合が、バスの大きさを知らせてくれます。
…あ、結構良いサイズだこれ。
思った瞬間に、
か「あれ…?」
―どうしました、かいてんさん。
か「巻かれた…」
―ええ!?
ちょっと、かいてんさんお願いしますよ、大丈夫ですか。
か「いや、まだ付いてる…はず。あれ?外れた?」
―それ?その手前の枝?
テンション緩めずにゆっくり近づいて外してみたほうが…、
か「外れてた…」
…。
状況が悪くなってきている中で、久しぶりの大物の予感でしたが…。
…あれ?かいてんさん、Tシャツ一枚?
レインは?
か「車の中です…」
―え。結局着なかったの?
か「だって朝方は暑かったんだもん…」
―そりゃアカン。
この気温で、雨の中、Tシャツ一枚じゃ風邪ひきますよ。
ちょっと早いですけど、早上がりしますか。
…なんだか締まらない感じで、撤収と相成ったのでした。
2014/9/7(日)
曇→雨
弱風
気温:19→17度
水温:?度
アタリ:9
バラシ:2
ゲット:6
なんとなく、二桁はいけるんじゃないかという根拠の無い思いは打ち砕かれました。
最終的にライトリグに変更したかいてんさんはそれなりにバスを拾えていたそうですから、
最初から岩盤と沈み木に絞って、じっくり丁寧に徹していれば、ある程度の数はいけたかもしれません。
…ただ、やっぱり、去年の光景がまぶたを過るわけじゃないですか。
自分の好きなようにルアーを投げて、好きなような釣り方で釣る、
そんな光景がまぶたを過るわけじゃないですか。
それに囚われたことによって、皮肉なことにそれに反する結果になってしまったわけですが、
まぁ、やっぱり爆釣なんてものは計算に入れて考える方が愚かな話で、
日頃の行いを良くしておけば、たまに神様の計らいで遭遇出来てラッキー、てな程度のことなんでしょう。
季節は急激に秋に向かって進んでいるようです。
20日の大会は、僕が大の苦手な秋の釣りを主体に考えなければいけないのでしょう。
秋の釣りなら俺に任せろ、という猛者の皆様、
涼しくなってきたことで人肌の恋しくなったソロバサーの皆様、
まだまだ募集を受け付けておりますので、お時間があればぜひ気軽のご参加をご検討ください。
第6回印旛水系『West Cup』お申込みページ