Wed, November 22, 2006

「食物アレルギー」を特捜せよ!~スーパーマリオから学ぶこととは?~

テーマ:ブログ

はじめに
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犬のアレルギー性皮膚炎の1つに食物がアレルゲンとなる食物アレルギーがあります。乳幼児の卵アレルギーもその1つですが、赤ちゃんの食物アレルギーと比較しつつ犬及び猫の食物アレルギーを概説したいと思います。

食物アレルギーとアトピー皮膚炎の関係
高校時代、部活の合宿の夕食でエビフライを食べた直後に顔がお茶の水博士のように腫れあがった記憶がありますが、
食物アレルギーとはシンプルに説明すると食べた食物が原因となってアレルギー症状を起こす病気です。人間では乳児の約10人に1人が食物アレルギーになっていると推測されており、また食物アレルギーの乳児はほとんどアトピー性皮膚炎を合併していると言われています。動物の場合でも最近の報告で食物アレルギーの犬と猫の20~30%でアトピー性皮膚炎やノミアレルギー性皮膚炎を併発していると報告されています。

食物アレルギーのアレルゲンとは?

乳幼児のアレルゲン(犯人)になりやすい食物は、卵・牛乳・大豆の3つで、
最近の厚生省の報告によれば、卵、牛乳、小麦、そば、えび、ピーナッツ、大豆、チ-ズの順に増えていることが報告されています。一方、犬で最も一般的なアレルゲンは牛肉、乳製品、鶏肉、小麦、鶏卵、とうもろこし、および醤油です。ペットフードは昔から牛肉、鶏肉、とうもろこし、および小麦で作られてきましたが、最も一般的なアレルゲンは実はドッグフードの一般的な成分だったのです。

食物アレルギーのメカニズムに迫る!
食物アレルギーの原因となる物質は母乳以外のものを初めて体内に取り入れる離乳時に食べたものの中に含まれています。有名な乳幼児の卵アレルギーについても、離乳の早い時期に与えることが問題であると指摘されており、出生後8ヶ月になるまでは、卵と卵を含む一切の食品を完全に禁止すると、食物アレルギーの発症は1/2から1/3に減少するというデータも見られます。乳幼児の食物アレルギーと動物の食物アレルギーは厳密には異なりますが、この考え方が非常に重要となります。

よく飼い主さんが「うちの子は、生まれてからずっとチキンを食べているからチキンは絶対大丈夫です・・・」といいますが、これは大きな誤解であることも容易に理解できます。逆に「生まれてからずっと食べているもの」が危険なのです。
それでは何故、幼獣期に摂取した食物に対してアレルギー反応を起こるのでしょうか?
それは幼獣期には
消化機能がまだ未熟なため消化の不十分な物も吸収してしまったり、腸粘膜を守っている免疫(警察官)が少ないので腸を通過して体内に侵入してアレルギー反応を起こすからです。例えばチキンアレルギーの動物がチキンを食べると、小腸からチキンのタンパク質が吸収され、血管を通って全身に運ばれます。するとチキンのタンパク質を異物(犯人)だと思っている動物は、それを撃墜しようと攻撃を開始します。それが痒みや赤みなどの皮膚症状や下痢などの消化器症状となって現れるのです。

食事アレルギーの一般的なサインとは?
まず第一に皮膚の痒みです。また慢性あるいは再発性の外耳炎、抜け毛、過剰に引っかく、抗生物質に反応するが休薬すると再発する皮膚感染などです。食事アレルギーのサインは他のアレルギー疾患と似ており、鑑別することは非常に困難ですが、食物アレルギーを強く疑うポイントがあります。

①再発する外耳炎(特に酵母菌):「この子は昔から耳が弱いから」という犬は食物アレルギーも視野に入れる必要があります。
②とても若い時期(1歳未満)から中等度から重度の皮膚炎がある。
③一年中症状が続き(非季節性)、もしくは冬に症状が始まる。
④痒みがとても強いが抗ヒスタミン剤やステロイド剤に反応しない。

食物アレルギーの診断とは?
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血液検査や人の
皮膚テスト(プリックテスト)に相当する皮内反応、胃鏡食物感受性試験(GFST)などがありますが、最も信頼でき、信憑性の高い唯一の診断方法は食物除去・食誘発試験です。
具体的に説明すると、まず疑わしい食物を与えないようにするため低アレルギー食を4(~8週間)与えて様子をみます(
食物除去試験)。獣医師専用の低アレルギー食とは人でいう低アレルゲン乳、低アレルゲン米に相当する食物アレルギー用療法食で、理論上アレルギー反応が起こらないよう配慮されているフードです。


食物除去試験の期間中は特別食と水だけです。途中で盗食したり、ルール違反をした場合は初めからやり直しです。

スーパーマリオに例えるとピーチ姫を無事救出する一歩手前の「8-3」で非常に難易度の高いハンマーブロスを見事倒したとしてもルール違反(無限UPやショートカットなど)をした場合は「1-1」からやり直しなのです。


もしビンゴの場合、消化器症状であれば2~3日、外耳炎などの皮膚症状であれば4週間でかなりの効果が出ます。4週間続けても何も効果がなければ食物アレルギーは否定しても問題ありません。もし何らかの良い反応が得られた場合は疑わしいとされる食物(これまで与えていたビーフジャーキーやフード)を再び少量ずつ与えて症状が再発するか観察します (食物誘発試験)。もし症状が悪化したら食物アレルギーの可能性が高くなり、もう一度低アレルギー食を与えて症状が改善されればさらに信憑性が高くなります。   

食物アレルギーの治療とは?
「小さい頃からずっと食べている」蛋白源がベースのフードではなく、逆にこれまでに食べたことがない(新奇)蛋白源を原材料としたフードが治療のゴールドスタンダードとなります。しかし幼獣期にフードを変更するケースが多く、さらにOTCで陳列されているペットフードの蛋白源はチキンや牛肉が多く、全く食べたことがない蛋白源がベースとなる入手可能な市販のフードは少ないため、「目新しい」蛋白源のフードを探すことは至難の業です。

強引に治療するなら、フランス北部のアルザスやロワールの山奥などで野うさぎを捕まえてきたり、北海道でエゾ鹿を捕まえて食物アレルギーの犬や猫に与えればほぼ間違いなく症状は緩和します。

しかし時間と手間がかかるため、獣医師専用の低アレルギー食(カンガルーやナマズといった新奇蛋白を使用)を利用した方が合理的です。もちろんインターネット上で鹿や馬をベースとしたフードも購入できるので「食物アレルギー」、「犬」、「低アレルゲン」などのキーワードで検索してみるとよいかもしれません。OTCのペットフードラベルに「低アレルギー性のラム(子羊)肉ベース」などと記載されていますが、こういったキャッチフレーズは飼い主さんの混乱を招く原因となります。オーストラリアやニュージーランドではラムを食べる機会多いのでラムがアレルゲンとなっているケースが多いのが現状です。大切なことは「これまでに食べたことのない“目新しい”蛋白ベースのフードを与える」というセオリーを忘れないことです。

自宅でできる予防策とは?
以上のことを踏まえると逆に仔犬を飼ってフードを与える際に気をつけなければならないことが出てきます。つまり少なくとも3年間は単一の蛋白しか与えないと言うことです。A社のフードの食べが悪いからB社へ変更することは問題ありませんが、蛋白は一種類以上与えない(ジャーキーの蛋白源も統一する)ということを念頭においておくと将来食物アレルギーになった場合にスムーズに治療に入ることが出来ます。


今回は食物アレルギーにピントを絞り、症状、診断、治療について解説しました。乳幼児同様ペットの食物アレルギーも増加傾向にあります。ただポイントさえ抑えていれば例え病気になったとしてもコントロールできる病気です。このコラムが将来「かゆみ」で悩むペット達のために少しでもお役に立つことをお祈りしております。

<参考文献>
Dietary trials with a commercial chicken hydrolysate diet in 63 pruritic dogs.
Vet Rec. 2004 Apr 24;154(17):519-22.
Loeffler A, Lloyd DH, Bond R, Kim JY, Pfeiffer DU.

Food allergy in dogs and cats: a review. Crit Rev Food Sci Nutr. 2006;46(3):259-73.Verlinden A ,Hesta M , Millet S , Janssens GP .

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