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2011-12-28 12:35:05

ゆずソフトSS 今年を振り返って

テーマ:SS
[千歳家のコタツ]
真琴「――というわけで、今年を振り返ってみたいと思うんだが」
春樹「...」
佐奈「...」
真琴「おいおい、君たちなんかノリが薄いよ!?一体どうしたと」
春樹「あのなあ、いきなり人ん家上がりこんでコタツ占領してみかん10個も食べてそんな態度だとノリが薄くもなるっての!だいたい、あんた誰だ」
佐奈「見たところ六麓学院の生徒さんみたいですが...」
真琴「おいちゃんは若い女の子の味方でおじさんの味方でもある、まこっちんだよ!」
春樹「はあ」
佐奈「あ、私お茶を淹れてきますね」
春樹「佐奈、お前やる気満々だな」
佐奈「自己紹介は終わりましたし、いいんじゃないですか」
春樹「俺はまだこいつを放り出したい衝動でいっぱいなんだが」
真琴「固い事言わないの春樹」
春樹「なぜ俺の名前を知っている!」
真琴「いつから名前を知られていないと錯覚していた?」
春樹「ぐぬぬ」
真琴「六麓学院の生徒の力、甘く見てもらっては困るのだよ」
佐奈「なんだか険悪だなあ...」
真琴「あ、佐奈ちん、あたしミルクティーとケーキ!」
佐奈「ケーキ、ですか?ちょっと今...あ、バームクーヘンをお歳暮に頂いてあったんですが、どうですか?」
真琴「バームクーヘン?おお、最近食べてないなあ。じゃあそれ!」
春樹「どっちが客だかわからんっての...つか、あんなにみかん食べてまだ食うか」
真琴「別腹別腹」

真琴「さて、今年を振り返るってことだけど」
春樹「うーん、割と災害とか多かったような気がする」
真琴「地震とかね。東北とか関東とか、その他いろんな地域で大きく揺れて怖かった怖かった」
佐奈「私のクラスでも、東北のおじいちゃんやおばあちゃんが大変な目に遭ったって人いますね」
真琴「なんなんだろうね、これはもしや、小松左京?」
春樹「日本沈没でいいだろ。わざわざ遠回しに言わなくても」
佐奈「そういえば2012年地球滅亡説なんてのも出てましたし、いろいろと気をつけておいたほうがいいのかもしれませんね」
春樹「地球滅亡論は根拠ないからな?まあ災害や事故に備えて気をつけておいたほうがいいってのはそのとおりだと思うけど」
真琴「まあそんな堅い話はいいや」
佐奈「? どういうことですか?」
真琴「今年は、まあ正確に言うと今年じゃないんだけど、のーぶる☆わーくすが発売されたんだよ」
春樹「発売日が2010年12月だったしな」
真琴「でもプレイとかまとめとか同人活動とかが活発になったのは間違いなく今年でしょ?」
春樹「結構人気出たみたいだな。まあこのSSの作者は未プレイらしいが」
真琴「えっ、じゃあ私のことあまり知らずに書いてるってこと!?いけないぞうp主!」
佐奈「あの~そういう楽屋ネタは...」
真琴「ごめんごめん。でさ、いろいろと人気が出てきたのはいいんだ。いいんだ、けど...」
佐奈「?」
真琴「私だって男の子と抱き合ってるシーンの一つや二つ、あってもいいんじゃないかな、って...」
春樹「...」
真琴「なんで先生なの?なんで私じゃないの?もしかして朱里くん年増好み!?」
佐奈(うわぁ~、まだバレてないみたいですねぇ...ってか作者さんも苦し紛れで書いてるの見え見えじゃないですか~...)
真琴「おいちゃんの若々しい身体より、年増のほうがいいらしいのさ...」
春樹(言えない...先生に手を出したってこと言えない...)
真琴「真琴ルートを入れなかったことは誠に遺憾である」
春樹「駄洒落かよ。というかいつまでこんな居酒屋的トークするつもりだよ」
真琴「ミルクティーとバームクーヘン切れるまで」
佐奈「いやあの、バームクーヘンあれしかなくて、しかもまだおじいちゃんにもヒメさんにもルリちゃんにもあげてないので...」
春樹「ちゃんと祖父さんに届いたってこと言ったんだろうな?」
佐奈「い、いいましたよ!それで先に食べていいって言ったから、私が兄さんに真っ先に食べさせてあげようと思ってたんです!主に口移しで!」
春樹「口移し?」
佐奈「あああ当たり前じゃないですか!バームクーヘンって結構甘いんですよ!甘すぎたら甘党じゃない兄さんが困るから私の唾液で中和して食べやすい味に、ってなんてこと言わせるんですかこの変態兄い!」
春樹「濡れ衣だ!?」
真琴「ほう?」
春樹「な、なんだよ」
真琴「佐奈ちん、今度、男についてゆっくりと語り合おうではないか」
佐奈「え、あ、はい。でも私、兄さんしか男の人知らなくて...」
真琴「春樹...君は妹に一体何を...」
春樹「なんか誤解生んでるぞ佐奈!俺しか男を知らないとか聞き方によっては危険な匂いしかしない!」
真琴「ふふん、よいではないかよいではないか。もっと素直になりたまえよ日本優良健全男児よ」
春樹「元から素直ですがなにか」
佐奈「――あ、でもでも兄さん以外の男の人も興味はありますよ?最近は動画サイトに出てきて、パンツ一丁でレスリングする外国人とかが」
春樹「いつから佐奈の性格こんなにねじ曲がったのか誰か教えてくれ!」

[千歳家の玄関]
真琴「今日は楽しかったよ。じゃあまたね」
佐奈「こ、今度は二人でゆっくりと語り合いましょう!」
春樹「やめろ」

春樹「それで結局、なんだったんだろうな、あいつ」
佐奈「今年もいろいろとあったってことじゃないですか?」
春樹「何の話だったか途中からわからなくなってなかったか?」
佐奈「これから先起こることも、今年起こったことも、わからないものなんですよ」
春樹「それはオチないぞ?...はあ、腹減った」
佐奈「あ!」
春樹「どうした佐奈?」
佐奈「ごめんなさい今日ご飯も食材も何もかも切らしてて、今家に何も無いんです...」
春樹「ええっ...」
佐奈「私のお財布もピンチですし...外に出るのも買ってくるのも厳しいと言うか...」
春樹「そうか...カップ麺とかもないのか?」
佐奈「はい...どうしよう、きょうはおじいちゃんたち帰ってこないんですよね。何かあればいいんですけど......あ」

[翌日の朝、リビングに春樹と佐奈が正座している]
眞一郎「わしはバームクーヘンを食べてない」
春樹「うん」
姫「妾はバームクーヘンとやらを楽しみにしていた」
春樹「うん」
ルリ「ばーむくーへん、たべたかった」
春樹「うん」

三人「全部食べたとかどういうことだ?」
春樹「まず俺と佐奈にご飯下さい昨日からバームクーヘンだけしか食べてなくて死にそうです」


おわり
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2011-12-25 21:39:44

須美SS 「Long Distance」 (R-18有)

テーマ:SS
須美と付き合って、3回目のクリスマス。須美は地元の短大に進学し、俺は縁あって東京の音大に進学している。つまり、今は遠距離恋愛だ。去年のクリスマスは俺の大学の都合で会えなかったけど、今年はクリスマスの定期演奏会が早めに終わったり、休みが重なったこともあって、須美に逢えることになった。
12月23日の終電に乗って、実家へ向かう。新幹線の車窓から外を覗くと、都会では珍しく、雪が降っていた。ケータイを開くと、須美からのメール。
[こんばんは。今晩帰ってくるんですよね。寒いので気をつけてください。先輩に逢えるのが、凄く楽しみです。駅で待ってます]
彼女は絵文字をあまり使わず、代わりにストレートな思いを文章に乗せてくる。
嬉しくもあるが、ストレートな分、寂しがっているんじゃないかって、一抹の心配がよぎる。
「帰ったら、うんと甘えさせてやろう」
俺は須美との再会を心待ちにして、新幹線を降りる新大阪まで一眠りすることにした。

ところが。
[...らに於いて大雪のため、運転を見合わせております]
「ん...?」
新大阪駅到着10分前に鳴るようにセットしておいた携帯のバイブレーションがなった。つまり新大阪についたはず、なのに周りの乗客は座ったままで、かつ慌ただしい。
「あの、何かあったんですか?ってか、新大阪についたんですか?」
俺は隣の席にいたサラリーマンらしき人に声をかけた。
「いや、まだ岐阜羽島。というか、もう1時間は足止め食らってる」
「え?」
「ここんところ、強い低気圧が岐阜から滋賀にかけて雪を降らせてるらしくて、関ヶ原は数年ぶりのドカ雪らしい。だから運転見合わせ」
その重苦しい内容に、俺は焦った。
メールの着信。
[新幹線が遅れてるらしいですが、大丈夫ですか?でも、到着するまで待ってます]
須美が写真まで入れてきた。寒さに顔をしかめつつも、にこにことカメラに向かって手を振っている写真。
「...っていうか、ここって新大阪駅のホームだよな...」
須美は相も変わらず律儀だ。改札の前、いや時間まで駅ビルのカフェとかで時間を潰してくれればいいのに。
なんだか自分が申し訳ないことしているみたいなので、駅ビルの中で待つようにメールを入れた。
「はぁ...困ったな」
岐阜羽島の駅のホームを眺める。幸せそうなカップル、再会に喜ぶ親子、長旅を労う友人。それぞれが羨ましかった。そんなことを考えていると、アナウンスが再び流れた。
[お客様に申し上げます。ただいま雪のために止まっております当列車は、天候回復の見込みが出来次第発車いたしますが、現在復旧の目処がたっておりません。したがって規約により、新幹線の座席料金を払い戻しいたしますので、目的駅に到着した際は、駅員にお知らせし、自動改札を使わないよう、お願い申し上げます。本日はお急ぎのところ、誠に申し訳ございません]

新幹線が再び動いたのは、それから1時間後のことだった。雪がひどかった関ヶ原を抜けると、嘘みたいに雲が消えていて、星空がくっきりと見えた。京都をすぎる頃には、日付が変わっていた。
「須美、大丈夫かな」
微睡みをシートに預け、俺は疲れきった身体を休めることにした。

[新大阪、新大阪。本日は列車遅れましたことを大変お詫び申し上げます]
新大阪に着いて、俺は真っ先に須美を探した。ホームには、見当たらない。どうやらメールの文言を守ったようだ。では、どこにいるのか。
遅延による払戻金を受け取り、改札を出る。すると、改札前の公衆電話の前で、キョロキョロとしている須美が、いた。赤いコートから覗く黒いスカートと黒のストッキング。数ヶ月会ってないだけなのに、須美がより大人っぽくなっていて俺は興奮した。と同時に、喜びもこみ上げてきた。
「須美!」
須美が俺に気付く。須美は顔をぱあっと明るくさせて、駆けてきた。
「先輩!」
俺は周りの目も憚らず、須美を抱きしめた。
「ただいま」
「お帰りなさい、先輩」


終電がとっくに過ぎていたので、俺たちは近場のホテルに泊まることにした。ドキドキ、していた。
「ごめんな、須美。新幹線が途中で2時間も止まっちゃって」
「そんな、もういいんです。先輩が無事に帰ってきてくれたら、もうそれだけで私は...」
今はその前にご飯にしようと、レストランにいる。俺は和定食で、須美はカルボナーラスパゲッティを頼んだ。
「久しぶりに会って、須美が可愛くなっててびっくりしたよ」
率直な感想を述べた。須美はすぐに顔を赤くして、
「そ、そんな。私そんなに変わってないですよ...」
照れ隠しに水をグイグイ飲んだ。その指先が、少しだけ赤くなっている。
「というか、須美、いつからホームで待っててくれたんだ?」
「えっと、確か...到着するはずの時間の1時間前からいました」
つまりあのメールはホームで1時間待った上で寄越したわけか。
「よくあの寒い中ホームにずっといたよな」
「だ、だって先輩が帰ってくるんですから、居ても立ってもいられなくて...」
脇を向いてもじもじする須美。
「それに、クリスマスですから、先輩と一緒にいたくて...」
そのいじらしい一言で、俺は心が熱くなった。
須美もじいっと俺を見つめてくる。目と目が絡みあって、お互い目が離せなくなった。そして――
「おまたせしました、和定食とカルボナーラです」
店員に遮られた。
ついでに去っていく店員から冷ややかな目線を投げられた。

ホテル。
部屋に入った瞬間、須美が抱きついてきた。
「先輩...もう、私...」
「須美...」
「先輩に会ったら、こうしたいって、ずっと思ってました...でもずっと、我慢してたんです...」
俺は須美をしっかりと抱きしめ、肩や背中を撫でた。その弾みで、コートを脱がせる。
「会いたくて、声が聞きたくて、先輩を感じたくて、うずうずしてました...だから、先輩...」
須美を一旦離す。セーター姿の須美が、目を潤ませて、懇願した。
「今夜は、私に先輩の全てを下さい...また離れ離れになっても、忘れないくらいに...!」
俺は須美の唇を塞いだ。
須美の口の中へ侵入する。柔らかく、温かい感触に、俺はどんどん酔っていく。須美が俺に絡み付いてくるのに合わせて、俺も激しく須美に絡みついた。離れることを拒むように、須美がありったけの力を込めて絡み付いてくる。
キスの間に、須美の胸をまさぐる。はじめはセーターの上から揉み、その感触に飽きたら荒っぽい動作で服をたくし上げ、直に胸を触った。久しぶりの須美の胸の感触に、目眩すら覚えた。
須美も負けてはいない。俺のズボンのチャックをぎこちない手つきで下ろし、俺のモノを取り出して触ってくれていた。快感で気が遠くなりそうな須美であったが、モノを握った手は離そうとしなかった。
そのままベッドになだれ込む。すべての衣服が脱ぎ捨てられた状態になり、俺と須美はベッドの上で激しくキスをしたまま身体を寄せ合っていた。動くたびにモノが須美の秘部をこすり、その度に須美が嬌声を上げる。
「せん、ぱい...先輩の、欲しいです...」
「いいのか?」
「私、もうたくさん我慢しました...これ以上我慢したら、切なくて、苦しくて、おかしくなっちゃいそうで...だから、遠慮せずに、お願いします...!」
「俺も、もう我慢できそうにない」
数カ月分の思いを、須美にぶつける。
須美の秘部が決壊を起こし、俺のモノが泡を立てて往復する。奥をノックするたびに須美は快感を訴える。俺もその快感が嬉しくて、自然と腰が速くなった。
「先輩、せんぱい...離れちゃ、だめ、だめです...!ずっと、ずっと、いっしょ...ああっ!」
須美の秘部だけでなく、俺のモノも決壊を起こしそうになった時、須美が腕を俺の後ろに回し、脚で俺の腰をがっちりとキープした。
離れたくないという、須美の願い。
今だけでもその願いを叶えるべく、俺は須美の膣へ全てを注ぎ込んだ。

翌日。俺が起きると須美は窓辺で裸のまま佇んでいた。
「おはよう」
須美は俺に気づくと、羞恥心からか胸と陰部を隠して、
「お、おはようございます」
挨拶してきた。
「そのままじゃ風邪引くよ。ほら」
俺は備え付けのバスローブを須美に差し出す。須美は手早くそれを着た。
「昨日は激しかったよな、須美」
思い出したのか、顔を赤くした。
「ご、ごめんなさい。はしたなかった、ですよね...あんなにあからさまに」
「いや、いいよ。むしろそのほうが嬉しい」
「え?」
俺はバスローブを羽織って須美のそばに寄った。
「須美が寂しがっているんじゃないかって、ずっと自問自答してたんだ、新幹線の中で」
須美が目をぱちくりさせている。
「須美にしてあげられることってなんなのかなって色々考えてみたけど、やっぱり一番なのは、そばに居てやることしかないんじゃないかなって、思ったりした」
「そんな...」
「だからさ、もっともっと須美は、俺に甘えてくれていいんだよ。メールでも何でも、自分の思いをいっぱい伝えて欲しい。俺、須美の思いに応えられるように、頑張るから」
「...」
須美は目に涙を浮かべていた。
「まあ、また数日後には、帰っちゃうけど...でも、必ず須美のところに帰ってくる。それまで、一緒にがんばろうよ、須美」
「...はい!」
須美が抱きついてきた。
この後俺がバスローブを脱がせたのは言うまでもない。
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2011-12-13 03:10:28

妙SS 「演奏会前」

テーマ:SS
妙が風邪を引いた。
原因ははっきりしている。最近、全体練習の後に妙がひとり部室に残って、毎日夜遅くまでトロンボーンを吹いているからだ。それで朝練も律儀に顔を出す。紀子や健太郎の報告で発覚し、薄々心配はしていたけど、ついに寝込んでしまうとは...。
「ちょっと、指揮が止まってるわよ」
紀子の声にふと我に返る。そうだ、練習中だったんだ。俺は慌ててスコアをめくり、
「じゃあBパートから」
タクトを振る。しかし、
「ちょっと、また止まってる!」
相変わらず、手が動いてくれなかった。
「どうしたんだよ純。お前らしくないぞ」
健太郎が毒づく。尖った声音だが、オーボエに隠れて表情は見えない。
「いや、なんかいつもと違和感があるっていうか...自然と手が止まっちゃうっていうか...」
心が感じる瑣末な違和感。なんかこう、くぐもっててぼんやりとしている、というのが、今日の演奏なのだ。いつもなら、キリッと澄んだ音がこの音楽室内にしっかりと反響して、指揮している自分さえ興奮して弾むような気分になるのだが...。
「どうせ妙ちゃんのことが気になって仕方ないんだろ?」
自分でもわけがわからないほど肩が震えた。
「そ、そんなわけないだろ!」
「はあ、あまり無理しないほうがいいわよ。そんなことだろうって思ってたわ」
「な、なんで」
「今朝から割と落ち着きなかったし授業も上の空だったしお昼もムスっとしてて不機嫌だったし」
そんなことを部員の面前でつらつら暴露する紀子。
紀子は俺のことをいちいち細かく見てるんだよな...。
「ダメですよセンパイ、こんなことでいちいち気を病んでいたら何もできませんよ!」
そう言ったのはみなせだ。いつもは俺に突っかかるくせに、こういう時はしっかりした態度なんだから、少し気が滅入る。助かっている部分もあるんだけど。
そこで音楽室の扉が開く。
「遅れました...って、何やってるんです?演奏会まで日がないのですよ?ぼうっとしている暇があったら練習をしなさい!まったく、あなたたちは何を...」
由貴だ。彼女は今日は家庭の事情で部活に遅れてくると言っていた。
「由貴センパーイ、センパイが妙センパイのことで頭いっぱいだそうですー!」
「は?」
「お、おい!」
「あ、あの...」
そこでおずおずと御影さんが口を開く。この状況で彼女が口を開くのは珍しい。と言っても、部活が統合されて以来、少しずつではあるが会話が増えていて、喜ばしいことではあるけど。
「こ、こういうこと言うのはちょっといけないかもしれないんですけど...先輩、今日は部活お休みしたら...いいと、思うんですが...」
部員全員が御影さんの言葉に目を丸くし、その数瞬後に、
「そうだ、部活休んじゃえ部長!」
「今日だけ、許す」
「リア充爆発しろ!」
「須美ちゃん、たまにいいこと言うよね!」
と、音楽室内が騒がしくなった。
「お、おい、静かに、静かにっ!いいから練習を――」
タクトを持とうとした時、その手が由貴に遮られた。
「事情は、なんとなくわかりました」
由貴がこちらに射かけるような視線を投げ、それからその視線を更に鋭くして、
「全く、中之島さん一人のことが気にかかって練習を疎かにするなんて、部長はおろか、指揮者としてもどうかと思いますわね」
完全に俺を非難する口調で言った。
「そ、そこまで言わなくたって...」
「でも」
そこで、由貴がタクトをとって、一度髪を靡かせてから、言った。
「今日は特別ですわ。早く中之島さんのところに行ってあげなさい」
「え、いいのか?」
「ええ。でも勘違いしないでください。これは私の練習の為です。最近私の指揮の練習が誰かさんのためにあまりできていないので」
「うぐ...」
そこでぐさりと釘を刺しておくあたり、由貴はしっかりしてるよなぁ。
「ほら、純、とっとと消えろ」
「もう少しいたわりある言い方をしろ健太郎!」


「妙」
妙の家に上がり、部屋に通してもらうと、妙は寝ていた。朝、窓越しに話しかけてきた時よりは顔のほてりは収まっているが、まだ顔に朱が差している。
「まったく、どうしたもんかな」
どうして妙が練習を厳しくしだしたのか。考えられるのは、今度の演奏会。
次の演奏会で演奏する曲は、レベルが高め。個人的にも、部活的にも、挑戦してみようという気持ちがあった。当然由貴からは反対された。自分たちの身の丈をよく考えた曲にしようと。彼女は厳しい物言いをするが、無理なことは言わない主義であり、部内でも侃々諤々になった。
それで練習は始まったが、やはり癖のある曲のため、全体がどうにか通るまで2週間はかかった。それからさらにブラッシュアップしていくには、個々人の努力がまず第一に他ならないわけであり、そこから妙が無理しはじめたのだ。
「まあ、俺のせいでもある、のかな...」
スコアを手に取る。[交響曲 未来]作曲者、香住充。つまり、俺の親父。最終的に俺と由貴と二人で相談する場においても、頑としてこの曲を通したのは、正直に言って、親父の名前が理由だった。さっきの部内の雰囲気も、割とにこやかになってはいたけど、心のどこかでは申し訳ない気持ちがあって。
「正直、一番ついていけてるのが御影さんで、あとはまだみんな試行錯誤の途中なんだよな...」
パーカッションが一番安定してくれているのは助かっている。みんながそこにしっかり乗っかって演奏できるから。
「やっぱり、無理かな...もう1週間後だし」
その時、妙の眼が開いた。
「...純くん?」
「あ...」
「どうして、ここに?」
「いや...部活抜けてきた。あまりに俺が集中できてないからって、追い出されたよ」
「だ、ダメだよそんなことじゃ!演奏会、あと1週間後なんでしょ?すぐに練習...こほっ、こほっ」
勢い余って起き上がろうとした妙であったが、咳と倦怠感ですぐに横になる。
「うう...」
「まだ寝てろって」
「...何も出来ない自分が、もどかしい」
「そんなことないだろ。毎日毎日居残り練習してたの、俺は知ってるぞ?」
「でも、うまく合わせられないと、自分だけできても何もならないもん...」
枕横に置いてある洗面器の水の中にタオルを入れて、絞る。
そっと妙の額に載せて、頬も触ってみる。
「まだ熱いな...」
「純くんの手、温かいね」
その笑顔に押されたのか、俺はぽつりぽつりと喋り出していた。
「なあ、妙」
「え?」
「俺、間違ってるのかな」
「何が?」
「時間ないのに、難しい曲に挑戦しようとして、未だに完成しきれてない」
「それは、まだ時間があるよ。頑張ればまだ大丈夫だって」
「その譜面、俺の親父の曲なんだよ」
「うん。おじさんの曲なんでしょ?」
「そう。で、正直言うと、この曲を選んだのは、俺の独り善がりだ。廃部をかけたあの時の曲は、親父に助けてもらったって思ってる。だけど今は、その親父を超えたいとも思ってるんだ。だから、由貴にも無理言って、この曲にしたんだ。でもそれが逆に皆を追い詰めてるんじゃないかって...俺のせいで、演奏会に間に合わなかったら、どうしようって...」
さっき由貴に指揮者としての資質がどうとか言われた。由貴に限って俺を本気で非難するはずはないってわかってるけど、今の俺にとって、その言葉は何よりも重かった。
「うん...」
妙は俺を見ながら、少し考え、言った。
「確かに、難しいよ、あの曲。デモテープの音はいくらでも耳に残ってるのに、それを真似しようとすればするほどつっかえちゃう」
「そうか...」
「でもさ」
そこで妙が起き上がった。
「やっぱり、独り善がりな曲だって、わかるよ」
「は?」
「純くんさ、この曲の運指とか全て調べてみた?実はこの曲、ほとんどのパートが指が絡みやすい運指になってるの」
その言葉に、俺は驚愕した。つまり親父は、演奏できない曲を作ったことになる。
「それで色々と調べたんだけど、どこの楽団でも演奏してない、忌避されてる曲だったんだ。で、このデモテープも、よく聞けば電子楽器の音だし」
親父がそんな巧妙なことを?しかしなぜ?その答えは、すぐに分かった。
「その曲の発表日、純くんと私が幼稚園に入園した日になってるの。おばさんに聞いたんだけど、おじさんはどうやら、純くんのために作ったみたいだよ、その曲」
「ってことは、つまり...」
タイトルを見返す。[交響曲 未来]。それでなんとなく察しがついた。
「たぶんおじさんは、まだわからない純くんの未来を、演奏できない楽譜になぞっていたんじゃないかな?」
単純。かつ機知に富んだ曲。俺は笑っていた。
「あはは...あのクソ親父、変な真似してくれちゃって...どこがレベルちょっと上だっての。っていうか、そうだったんなら皆、教えてくれればいいのに...」
演奏できないこの曲が、15年近く前に親父が予想した今の俺。だったら。
「今の俺が、今まで歩いてきた道筋を付けないといけないってわけか」
俺はその晩、スコアを大幅に書き換えていった。


「...というわけで、残り1週間しかないけど、大幅に編曲してみました。この編曲で、行きたいと思います」
翌日の練習。出来たばかりのスコアを配り、各パートに一つ一つ説明する。編曲の評判は、
「センパイ!この曲、演奏しやすくていいですよ!」
「あなたにしては、偉く意気込んだ曲調にしてあるけど、なにかあったの?」
「こういう曲調のほうが、俺は燃えるぜ!」
と、なかなかの評判だった。これなら1週間でどうにかなるだろう。と、そこに由貴が来た。
「指揮者として働いてみて、どうでした?」
「指揮者、ねえ...しばらくぶりに編曲してみたけど、結構楽しかったかな」
「ならいいのです。指揮者はみなさんの演奏を見るだけではなく、演奏できる環境を楽譜の面からメンタルに至るまで指揮してこそのものです。まあ、気づけたならよしとしましょう」
由貴は勝ち誇った笑みを浮かべた。
「なあ、なんで教えてくれなかったんだ?無理な楽譜だって、わかってたんだろ?」
「それは、あなたがあまりに意気込んでいたから、言わないでおこうかなと思ったに過ぎません」
なんか、今回は完全に遊ばれた気がする。
「では、今日からの指揮はあなたにお譲りいたします。私はこれから別件がありますので」
「あ、ああ...」
最近由貴は部活を空けることが多い。指揮の勉強で東京とか海外とかに足繁く通っているそうだ。
大体説明が終わった時、妙が近寄ってきた
「純くん」
「おう妙」
妙の風邪はすぐに治った。どうやら違和感を感じたのは、妙に親父の仕掛けたカラクリを教えてもらえってことだったみたいだ。
「残り時間は少ないよ。早くやろうよ!」
「ああ」
俺はタクトを構えた。
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2011-12-13 03:08:48

ご無沙汰

テーマ:ブログ
えーと、まずは...
ごめんなさい、完全に放置プレイ決めてました!

色々と忙しかったりモチベーションが出なかったりして、気がついたら7ヶ月も更新が停止...須美を愛でて放置してしまった。許すまじ自分!

えー、そんな訳で7ヶ月ブログから姿をくらましてたわけですが、最近少しは余裕が出てきたので、リハビリも兼ねてちょくちょく書けたらいいなあ、なんて思ってます。具体的な案は無いけれど、だいたい世間密着ネタだったりするんだろうなと思う。

では、これからもよろしくお願いします、再起のりおんでした。

眠い(更新時間が夜3時)
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2011-05-16 23:51:26

須美を愛でる。ただこの気持ちを知りたくて、自分はここにいるのかもしれない

テーマ:ブログ
5/17は須美の誕生日!


はじめは無難にみなせを好きだったはずが、いつの間にか須美を好きに、いや、愛していた。そんな自分も、ぶらばん!をクリアして、1年とちょっとになるでしょうか。周りからすれば、凄く遅くやってきた「ゆずソフト好き」ですが、まあ、須美を愛する気持ちは、負けたくない。
だれか「自分の方が須美を愛している!」という猛者がいらっしゃったら、ぜひ挙手をばお願いします。いい酒が飲めそうです(笑)。

あの危うさが、まず心ひかれたのかもしれない。
あの健気さが、勇気をくれたのかもしれない。
あの決意が、自分に大切なことを気づかせてくれたのかもしれない。
あの別れが、須美を大人にさせたのかもしれない。

最近はangelaさんの「蒼穹」をよく聴いてるのですが、人が子供から大人へと成長する、その過程を歌っている点で、凄く共感して、ノスタルジアを感じていたり。
須美も然りで、叫んで涙して解き放っても、それはカタルシスにもならずに、ただ陰鬱となるだけの日々だった。しかし、心の中ではどこまでも深い蒼を求めて彷徨い続けた、曖昧なままの彼女の心象。
それが、純たち赤城山のメンバーとの交流、そして杏子ちゃんとの約束で、ついに心の中に青々とした空が広がった瞬間は、自分たちが幼かったころを振り返れば、ありありと思い出され、共感できる。
そう、須美は、いつか自分たちが遠くに置き去りにしてしまった「幼さ」を抱き続けていた、愛おしき少女ともいえよう。

...勝手なことばかり言いすぎました。
忙しくてSSとか書けなかったので、こういう形で須美の誕生日祝いにしたいと思います。
では改めて

須美、おめでとう
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