【FAカップ決勝プレビュー】連覇を狙うアーセナルに成熟したコクランの姿 #アーセナル | ヒロ・ゴラッソ

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2連覇を狙うアーセナル

 シャーウッド効果で蘇ったヴィラ


 FIFAの不祥事で揺れる喧騒の中、欧州各国リーグの多くが終了して国内カップ戦決勝を行う今週末。イングランドでもプレミアリーグが先週末に終了し、本日はFAカップ決勝が行われます。


 今季の決勝の対戦カードは昨年の同大会で9年ぶりの主要タイトルを獲得し、8年間の無冠時代に終止符を打ったアーセナル。対するは今季も含めて近年はプレミアリーグの残留争いの常連となっているアストンヴィラの対戦。決勝はロンドンのウェンブリースタジアムで行われます。


 プレミアリーグで17位に終わったアストンヴィラは2月中旬に2年半指揮していたポール・ランバート監督を解任。リーグ24戦を消化して5勝7分12敗という成績以上に24試合で僅か12得点しか記録していなかった得点力の乏しさが大きな理由でした。


 後任に就いたのは昨季後半戦でトッテナム・ホットスパーを指揮したティム・シャーウッド監督。もともとチームにはベルギー代表FWクリスティアン・ベンテケやガブリエル・アグボンラホールという抜群のフィジカルの強さやスピードを持ち、個で打開できるFWが揃っていました。そこで、シャーウッド監督には昨季もトッテナムで出番のなかったトーゴ代表FWエマニュエル・アデバイヨルを再生したようなアプローチが期待されました。具体的には緻密な戦術よりもシンプルにFWにボールを入れる事で縦への推進力を出し、スピード感溢れるチームに変貌。特にベンテケはシャーウッド就任後だけで出場14戦11得点(それまで僅か2得点)を記録して完全復活。チームとしても意気消沈していたムードが監督交代後3戦目の初勝利から10戦で5勝してプレミアリーグ残留を勝ち取りました。


 監督交代直前には6試合連続無得点など難しい状況にありながら、燻っていたFW陣の再生によってプレミア残留と並行して、FAカップでも決勝まで勝ち上がって来た功績はまさに「シャーウッド効果」と言えます。クジ運が良かったとはいえ、準決勝では名門・リヴァプールを破って、今季限りで退団するスティーブン・ジェラードの誕生日に行われるFAカップ決勝を「ジェラード・ファイナル」というサッカーファンが期待するストーリーを"台無し"にした実力は強豪アーセナルも危険に感じる事でしょう。



FA杯連覇を狙うアーセナル

 クラブも監督も"宿敵越え"狙う


 FA杯の2連覇を狙うアーセナルは先週末のプレミアリーグ最終節でウエスト・ブロムウィッチ・アルビオンに勝利してリーグは3位でフィニッシュ。18年連続の欧州チャンピオンズリーグ出場権を獲得しました。その上で8年間続いた無冠の歴史を経て、2年連続のタイトル獲得に挑みます。


 今季のアーセナルは中盤戦まではリーグ戦で中位に低迷。12月の第15節には数年前まで「ロングスローやロングボールの放り込むだけのラグビー・フットボール」とアーセナル陣営が揶揄していたストーク・シティ相手にお株を奪われたように試合の主導権を握られた末の3-2の敗戦。この時点で15戦6勝のみで「アーセン・ヴェンゲル監督体制19年目で最低の成績」とヴェンゲル監督に批判が集まりました。


 特にチームの不振の要因だった守備的MFの選手が軒並み負傷。もともとミケル・アルテタはこのポジションが専門職でもなく、マシュー・フラミニは今季序盤戦から明らかに昨季よりも衰えを感じさせていました。そこでヴェンゲル監督は同じロンドンを本拠地とする2部リーグのチャールトン・アスレティックへ出場機会を求めて1カ月間の短期レンタルで移籍していたフランス人MFフランシス・コクランを急遽復帰させました。そのコクランが第19節から先発に定着。技巧派の攻撃陣が多いチームで守備の仕事を一手に引き受ける24歳の主力抜擢により最適なバランスを見つけたアーセナルはリーグ戦8連勝も記録するなど16節以降は23試合で16勝4分3敗とV字回復。リーグ3位でシーズンを終了。FA杯でも準々決勝で"天敵"マンチェスター・ユナイテッドを敵地オールド・トラフォードで破る快進撃で決勝まで勝ち上がって来ました。


 アーセナルはクラブとして大会最多タイの11度のFA杯優勝回数を誇り、ヴェンゲル監督も監督として最多タイの5度の優勝を手にしています。共に並ぶのは"宿敵"マンチェスター・ユナイテッドとサー・アレックス・ファーガソン監督です。ファーガソン監督が26年間ユナイテッドを率いて5回の優勝に対して、ヴェンゲル監督は18年で5回という数字を考えれば、ヴェンゲル監督が如何に"FA杯マスター"なのかが理解できると思います。そういう意味ではアストンビラと対戦する本日の決勝はクラブとしては大会最多の12度目、監督としても6度目で"宿敵越え"を狙う舞台でもあります。



鍵を握る成熟したコクラン

 Jリーグの課題も感じさせる日進月歩の成長ぶり


 明日の決勝で鍵を握るのは上記したフランス人MFコクラン。チャールトンでの1カ月のレンタル移籍が終了し、さらに延長が決まった際、急遽レンタルバックされた時、コクランはヴェンゲル監督からの電話に対して、「チャールトンではレギュラーでプレーしていたけど、あなたは私を控えに置くために呼び戻す。プレーさせるためじゃない」と、強気に自身の出場機会を要求。負傷者続出のためでもあったものの、与えられたチャンスを最大限に活かして多くの勝利に貢献し、いつの間にか彼は主力に定着していました。


 もともとボール奪取力に定評があり、2011-2012,2012-2013の2シーズンはアーセナルでターンオーバー要員の位置は占めていたコクラン。最近はコクランの台頭に対して、日本メディアや日本のサッカーファンは「日本代表FW宮市亮(オランダ1部のトゥウェンテへレンタル中)もチャンスがあるかもしれない」としているのはお門違い。宮市はアーセナルでリーグ戦の先発記録は1度もないのに対して、コクランは2年間に渡って準主力の位置は担っていました。特に2012-2013シーズンにはアーセナルの全公式戦53試合中41試合でベンチ入りを果たしています。2010-2011シーズンにはフランスのロリアンで24試合出場、2013-2014シーズンはドイツのフライブルクで16試合出場と、共に若手育成に長けたクラブへレンタル移籍して経験を積んでいました。コクランと宮市を比べるのはコクランに失礼だと思います。


 また、コクランが今季先発メンバーに定着してから感じた事ですが、彼が先発で10試合ほど出場し続けた頃、明らかに体幹が太く大きくなっていました。日本のJリーグでも若手が主力に定着し始めると逞しい顔つきや表情、精神面に成長を感じられますが、一見してすぐに身体が大きくなっていくのをシーズン中に感じる事はないでしょう。ましてや年末年始のプレミアリーグはカップ戦も並行して開催されているため、練習の時間をまともに取れず、フィジカルトレーニングなど皆無。如何にプレミアリーグの1試合に置けるプレーの激しさや重要度、経験値が大きいモノなのか?と実感させてくれます。コクランはチームに復帰する際に監督に強気で自身の要求を示し、ピッチでは1試合1試合に勝負を賭けて挑み、見事にチャンスを掴んだのです。コクランの日進月歩の成長ぶりはJリーグの課題も感じさせてくれました。


「75億円の価値のある選手」=コクラン

 現地で観た若手選手だから応援したい



 先日、ヴェンゲル監督は記者会見でコクランの事を「75億円の価値のある選手」と称えましたが、コクラン自身のサッカー人生を賭けた気持ちのこもったプレー、コクランを信じて起用し続けたヴェンゲル監督の信念にも感動です。「これだからアーセナルファンであり続けられる」と言えるアーセナルらしさに感じます。結果を残した選手がチャンスを得るのは当然。J2リーグで日本代表選手が5試合を欠場した2013年のガンバ大阪で、彼等の欠場時に4勝1分無敗の1失点と結果を出したにも関わらず、その若手を外して首位から陥落したガンバ大阪と、その長谷川健太監督とはココが違いますね。


 そのコクランの特徴はフィジカル的な強さが増したボール奪取力ではあるのですが、彼には守備的MFとしては珍しいスピードもあります。それゆえに両SBでもプレーした事も多く、起用貧乏になってしまいがちだった過去ですが、今ではその守備的MFとしては稀有な才能であるスピードをカウンター対策や、セカンドボール回収に活かしてアーセナルらしいパス&ムーヴによる攻撃的サッカーを支えています。


 当然ながらレンタル移籍を繰り返したり、ターンオーバー要員止まりだった過去があるゆえ、彼には著しい短所もあります。それは技術力に長けた中盤の選手が揃う中では凡庸なパスセンス。しかし、彼は様々な経験を通して成長を見せ、「自分の出る幕ではない」と察知すれば、わざとパスコースから消えてスペースを周囲の選手に提供してサポートやリスク管理に集中するような全体を冷静に見渡せる判断力が備わりました。誰よりも動き回って激しいプレーをする選手が誰よりも冷静な判断をする姿に成熟ぶりを感じさせます。


 もともと17歳の時にフランスからアーセナルに引き抜かれて"アーセナル流"をアカデミーで経験しているためにテクニック面に関しては水準レベルにはあるコクラン。けしてボールを奪われるようなプレーはせず、サイドチェンジのような無理なパスもせず、シンプルなプレーを選択。近年獲得したビッグネームであるドイツ代表MFメスト・エジルやチリ代表FWアレクシス・サンチェスのような技巧派の攻撃陣の利き足にしっかりと"つける"パスを出したり、相手のプレスをいなすぐらいのキープ力は備えています。


 その上でスピードのある守備力を備えるコクランは、ベンテケやアグボンラホールのような俊足FWを活かす速攻を武器とするアストンヴィラの攻撃に対して大きな鍵を握る選手になるでしょう。


 実は僕は以前からコクランが好きで、常に彼を応援していました。と、言うのもロンドンのエミレーツスタジアムで若手選手主体で挑んだリーグカップのリヴァプール戦を現地観戦した際に出場していたから。若手主体のアーセナルに対して、リヴァプールは当時のディルク・カイトやライアン・バベルという当時の両オランダ代表FWが出場していた中で2-1と競り勝つ中、守備固めとして投入された彼を生で観たからこそのファンなのです。


 ちなみにその日のマッチデー・プログラムがコレ。イングランドではマッチデープログラムは有料なのですが、アーセナルは2ポンド(当時のレートで300円くらい)です。

 有料とはいえ、50ページ以上のボリューム+ポスター付きですから「買い」ですよね?

そして、そのマッチデープログラムの特集がコクランだったのです。写真が小さいので拡大して観てもらいたいのですが、この頃はヒョロヒョロでした。それでもポジショニングの上手さとスピード対応可能なのも一見して分かる稀有な守備者であるのは一目瞭然でしたよ☆


 と言う事で、本日のFAカップ決勝はコクランの成熟ぶりに注目しながらアーセナルの連覇を願って観戦したいと思います☆
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「宇佐美貴史と武藤嘉紀、どちらが日本代表や欧州で活躍できる?

 当ブログでも取り上げております同級生ライヴァルFWである宇佐美貴史と武藤嘉紀。今後の日本代表や近い将来での欧州移籍が噂される2人を読者の皆様はどうお考えでしょうか?


 "ザ・エリート"の宇佐美と、遠回りしてきた武藤。Jリーグだけでなく、日本サッカーの育成やユース組織の在り方まで問われそうな2人のキャリア。今後はどちらがリードしていくのか?それとも切磋琢磨し続けるのか?それとも、どちらも尻すぼみなのか?選択肢のない場合は【その他】を選んでいただき、【コメント欄】に記入をお願い致します。

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