スピンギア西八王子店で密かに行われた「モッズミーティング」のレポートです。
長谷川さんから「旋盤とか3Dプリンター集めて遊ぶからおいで(要約)」というお誘いを受け、一路東京へと向かった僕。
始めて訪れた西八王子店の中には…
旋盤!
3Dプリンター!
旋盤!
3Dプリンター!
モッズ好きにはたまらない道具が所狭しと置かれていました。入店直後からワクワクが止まらない。
さてこのモッズミーティング、どんなことをやる集まりだったかというと
・旋盤とプリンターで何かを作る
・新品(またはジャンク)のヨーヨーを改造する
・近所に住む小学生の自由研究を手伝う
くらいしか決まっていなくて。本当にその場のノリで色んなことをやりました。
3Dプリントヨーヨーの第一人者「東方さん」と自由研究中の小学生。
ヨーヨーの加工ノウハウについて話し合ったり…できたてホヤホヤのヨーヨーで遊んだり。
ヨーヨーというおもちゃを軸に大人たちがワイワイガヤガヤ遊びまくり。
東方さんに愛車のホイールを模したキャップを作ってもらったs.konさん。
側面を塗装中。
90年代後半から00年代前半はヨーヨーの「モッズ(改造)」が盛んに行われていました。ヨーヨーの性能が今ほど高くなかったり、自分が求める仕様・フィーリングのヨーヨーがなかった時代、プレイヤーはモッズを施すことでヨーヨーを理想の形に進化させていたのです。
例えばベアリングホイールズ。ホイールズにヨメガやプレイマックスのスペーサーとベアリングを仕込んでベアリング化するモッズ。国内外問わず行われていたこのモッズホイールズは伝説のヨーヨー「オリジナルフリーハンド」として製品化されました。
オリジナルフリーハンドにバイパー(コブラ)のシェルを取り付けることで高い回転力と有効幅、耐衝撃性能を持つヨーヨーにする「バイパーフリハン」のアイデアはダンカンの「ハヤブサ」へと受け継がれました。
フリーハンドのレスポンスを削ってオフセットさせる「レセス」は今やレスポンスのスタンダートになっています。
海外版レイダーのスペーサーを削り、さらにボディを締め込んで作る「ナイスペレイダー」構造は現在出回っている多くのルーピングヨーヨーで採用されています。
モッズによって生まれたアイデアが現代の高性能ヨーヨーを作った、といっても過言ではありません。
モッズはヨーヨーの欠点を補うための作業であり、ヨーヨーの構造理解を深める勉強でもあり、新しい可能性を見出す研究でもあります。開けポンで高性能なヨーヨー、手を入れる必要が無いヨーヨーが増えたのは間違いなく喜ばしいことですが、それによってユーザーがヨーヨーについて考える機会が損なわれてしまったという見方もできます。
そんな状況に一石を投じる催しのがこのモッズミーティングであり、拙いながらも記事にして残すのが僕の役割だったのです(だよね?長谷川さん)
3D プリンターヨーヨーを華麗に操るシュンくん
性能は下がるけれど自分好みの装飾を加えたヨーヨーを作る。ヨーヨーを飾るためのスタンドを作る。ボディを着色して世界にひとつだけのヨーヨーを作る。
ヨーヨーというおもちゃを題材にして出来ることはたくさんあります。
業界を牽引する競技シーンと競技ヨーヨーを尊重しつつ、それらと離れた部分での楽しみ方を見つけ、広めていくこと…ヨーヨー遊びの多様性を後世に示すこと。今後ヨーヨーが末永く愛されていくために必要なことだと思います。先人の使命といってもいい。
僕が初めてモデリングしたデータを東方さんに修正・出力していただいた作品。PROYOをベアリング化するスペーサーです。
ヨーヨー文化が根深い海外(特にアメリカ)では最先端以外のヨーヨー遊びに目を向けるプレイヤーが日本よりも多く存在します。
次々に木製固定軸のメーカーが生まれているし、最新の技術で作られたトレンドとは異なるヨーヨーもちゃんと売れています。固定軸技を中心に楽しむプレイヤー、フルメタルを塗装するプレイヤー、メタルヨーにプラヨーの軸周りを移植するプレイヤー、写真撮影のモデルとしてヨーヨーを選ぶプレイヤー…楽しみ方が実にカラフルです。
DocPopとアーネスト・カーンが作った「エグゼクティブ」は「コインポケットに入るヨーヨー」がテーマです。回転力&マウント成功率向上のためにワイド化が進み持ち運びにくくなっているヨーヨーとは逆を行く設計。
ランシッドミルクやエニグマの発案者としてお馴染みのスペンサー・ベリーも小型引き戻しの「ウォルター」を作っています。競技用ではないこと、バインド仕様を望む人には合わないことを明確に述べ、その上で楽しんでくれる人を募って販売していました。
国内だとヨーヨースタジオリャマがヘンテコなヨーヨーを多数リリースしています。ペットボトルキャップが付けられる「ハートランド」、直角ボディで複数個体が合体可能な「ディスクリート」、100g超の超重量級バイメタル「ミョルニル」、高すぎるエッジ高の「カルペディエム」、リムにボルトをねじ込んで重量増加と装飾が可能な「ガラクタ」など…
販売方法が話題となったBasecampの「ムーンシャイン」は今を時めくメーカーが今のアイデアと過去のアイデアを融合させた作品です。「旗を振る立場がこういうものを作った」という事実とその要素によって現代のプレイヤーがトレンド以外の形状に興味を持つきっかけも産みました。
ボディとキャップを切削してマジコマウエイトを搭載したs.konチューンスティンガー
ヨーヨーの楽しみ方は人それぞれ。その「楽しみ方」を見つけるために、色々なヨーヨーに触れて色々な遊び方を試してみて欲しいと思います。本当に。
…なんだか落とし所がわからなくなってしまったので(笑)会場で聞いて耳に残った参加者たちの言葉を書いて終わりにします。みんな!ヨーヨーは楽しいおもちゃだぞ!
(切削を失敗して)
「やっちゃったな~でもフリハンはいくつ削ってもいいモノだからな~」
「(車輪型の)ヨーヨー作ったんだからこれに乗る車体も作らないとね」「えっ」
「これはコーヒーっていう素材で…」
「ああ、言われてみれば香りがするような?」
「色の名前です」
「ホントだ、香りなかった」
(発売当時不評だったヨーヨーを渡されて)
「すごい良いですよこれ」「アリ」
「改めて振るとアリだね…」
「なんでそんなの作ったのさ」
「この世になかったから」
「色とか音が綺麗なだけでさ、遊んでて気持ちがいいよね」