「お前は被疑者(容疑者)にうそをつかれているんだ!」。新任検事として札幌地検に赴任し、大規模な手形詐欺事件の捜査に当たっていた際、上司からこう言われた。「うそなのか」。容疑者に迫ると、こんな答えが返ってきた。「(共犯者に)合わせて供述してもいいけど、検事さん、本当にそれでいいのか」

 実際は、上司が取り調べを担当した共犯者の供述が虚偽で、自分の担当する容疑者は真実を語っていた。「人を見る力をつければ、被疑者から学ぶこともある」。そう心に刻んだ。

 冷静でありながら、熱血漢。捜査現場から離れ、法務官僚経験の長い「赤レンガ派」とみられがちだが、「現場」感覚は人一倍強い。「自白は重要だが、過信してはいけない。供述を合わせようとして失敗するケースが多い」。念頭には再審無罪となった足利事件などがある。

 法務官僚になっても、現場で培った精神は一貫している。平成13~14年に名古屋刑務所で起きた受刑者暴行死事件では、法務省官房長として、ほかにも暴行死した受刑者がいないか、病死とされた数百人分の死亡記録に当たった。刑務所を管轄する矯正局は当時、上層部に情報を上げない風土があったとされるが、特捜検事も駆り出して実態解明に乗り出し、監獄法改正へとつながる道筋をつけた。

 一度書店に入ると、10冊はまとめ買いし、読書に明け暮れる「熱中肌」。フランス研修を前に夜学でフランス語を学び、外務省研修所で中国語を習得した国際派としても知られる。検事初の1等書記官として赴任した中国の日本大使館では、残留孤児の国籍問題に直面。帰国支援に奔走した。

 「真相を解明し、適正に処分するのが基本。若手の指導育成のため有用な情報を即時に共有する体制をつくり、先輩の経験を若手に継承していきたい」。穏やかな口調には実直な人柄と、検察組織を統率する強い意志が垣間見えた。(大竹直樹)

【プロフィル】大林宏

 おおばやし・ひろし 昭和22年6月17日、東京都生まれ。63歳。一橋大法学部卒。47年に任官。法務省刑事局長、事務次官、札幌高検検事長、東京高検検事長などを歴任し、検事長定年当日に検事総長に就任。座右の銘は「苦あれば楽あり、楽あれば苦あり」。趣味は読書とテニス、散歩。

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