全国で昨年、受粉用のミツバチが不足した問題を受け、農水省所管の独立行政法人「農研機構畜産草地研究所」(茨城県つくば市)と名古屋大のグループが調査結果をまとめた。元気なミツバチから複数のウイルスが見つかったほか、大量死には農薬の影響がうかがわれた。ミツバチに何が起きているのか--。【下桐実雅子、写真も】

 ミツバチはハチミツ採集だけでなく、イチゴやナスなどの受粉を担い、果物や野菜の生産に欠かせない。農水省のまとめでは昨春、21都県で受粉用のミツバチ不足が報告された。ミツバチの価格も上昇し、巣箱ごと盗まれる被害も相次いだ。今回の調査は、元気なミツバチと、巣箱前で大量死したミツバチの双方を対象にした。

 元気なミツバチでは、28都府県から集めた57群すべてから、特定のウイルスが見つかり、5種類のウイルスが検出された群も20あった。発症すればマヒで飛べずに死んだり、寿命が短くなるという。また別の336個体でハチ病菌も調べたところ、いずれも幼虫の伝染病である▽チョーク病(約15%)▽ヨーロッパ腐蛆(ふそ)病(約13%)▽アメリカ腐蛆病(約2%)--などが見つかった。

 同研究所みつばちグループの木村澄主任研究員は「予想以上にウイルスがまん延している。発病しなくても寿命を縮めるなど、ミツバチ全体を弱らせている可能性がある」とし、「ウイルスを媒介するダニ対策や、ミツバチを丈夫にする餌の開発が課題だ」と話す。

 大量死の調査では、日本養蜂はちみつ協会を通じ、「農薬の疑い」として提供された死んだハチの検体26件を調べた。約9割の24件で、害虫の神経系に作用するネオニコチノイド系の農薬が検出され、うち16件は「半数致死量」(群れの半数が死に至る量)以上の高濃度だった。農薬で弱体化したとして届けられた検体16件のうち、11件でも同じ農薬が検出された。

 今回、半数致死量以下の農薬なら、ハチの寿命に影響はないとする実験結果も出たが、盛岡市の養蜂家で日本在来種みつばちの会会長の藤原誠太さんは「ダニの寄生が増えているのは、農薬の影響で体力が落ちているためだ。幼虫への影響も含め、調べてほしい」と訴えている。

 ◇海外では花の減少に関心

 ミツバチ不足は欧米でも問題になった。国際獣疫事務局(OIE)は先月末、「ミツバチの大量死の原因は複合的」との見解を発表した。ダニなどの寄生生物、ウイルス、バクテリア感染、農薬のほか、環境問題から起因するハチの栄養不足などが絡み合っていると分析。「ハチは世界的な食料安全保障を支えている。消失すれば、生態系の大惨事を招きかねない」と警告した。

 玉川大ミツバチ科学研究センターの中村純教授によると、海外では特に、栄養不足の問題に関心が高まっているという。ミツバチは花のみつや花粉を食べるが、開発などで花が減少し、体力が落ちているとの見方だ。野山で花が減れば、ミツバチが花を求めて農地に向かい、農薬との接点も増えかねない。

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 ミツバチ不足には、1次産業の事情も影を落とす。国内では、中国などから安いハチミツが輸入され、養蜂家が飼うハチの数が横ばい状態。一方、園芸農家は付加価値の高いイチゴやメロン、スイカなどの果物を作ろうとし、受粉用の需要が増している。今春は「ミツバチを融通し合うことで何とか乗り切っている」(農水省)というが、受給のアンバランスは中長期の課題だ。

 畜産草地研究所などの今回の調査でも、イチゴ栽培の温室の中では、ハチが高ストレス状態にあることが遺伝子解析で判明したという。中村教授は「体力が落ちれば、病気や農薬に影響されやすくなり、無理をして働けば寿命も縮む。餌である花を増やすべきだ」と指摘する。

 ミツバチがすみよい環境を築こうと市民有志が今年1月、NPO「みつばち百花」(東京都三鷹市)を設立した。東京・国分寺市でミツバチがどの程度、花に集まっているか調べたり、岩手県紫波(しわ)町でミツバチが好むレンゲなどを植え始める。「花を植える活動は、ミツバチへの関心が低い人も参加しやすい」と中村教授。ミツバチをきっかけに、自然との共生を考える動きも広がっている。

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