「何のためにこの世に人は生を受けたのか」は宗教的、霊的な問題で日本人が不得意とするエリアなのかもしれません。

 

イーストウッド監督にはかつて「ミリオンダラーベイビー」という尊厳死を扱った話題作が発表され物議を醸しました。

 

死後や霊的世界をどのように捉えるかというのはあくまでも個人的な問題だと私は思います。

 

ヒアアンドアフターは、イーストウッド監督が〈死後の世界〉を問題にしたスピリチュアルな作品です。

 

 〈死後の世界〉と云うと、古いですが『ゴースト/ニューヨークの幻』みたいに(その後も似たような映画が作られましたが)、霊になって愛する人に密着したりする荒唐無稽な映画になりがちですが、これはそういう映画で人の気をひくような映画とはレベルが全く違います。

 この映画では霊が実際登場するわけではないし、あの世の描写も全くない。

 

 すべてはマット・デイモン演じる霊能力者が見たものを代弁しているだけなのである。

 

そこで、相手がその話を信ずるか否かは相手に依るわけですが、通常は他人には知るよしもないことを言い当てられたら信じてしまうでしょうね。

 

 宗教的に解決をするわけでもなく、したがって魂の救済と言った大げさな演出もないので、登場人物達はほんの少し、以前より前向きに生きて行けそう──と云うような淡々とした描き方が却って素晴らしいのだと感じました。