うつ病予防の為に~一銀クリニックブログ「心の処方箋」

平成25年、沖縄タイムスにて好評連載後、書籍化されたメディカルエッセー『心の処方箋』。
その著者、一銀クリニック院長の城間功旬が、うつ病予防の提案として“言葉の力”をお届けします。
皆様の心の悩みを軽くする読むクスリになれば幸いです。


テーマ:

人生の悩みとの上手な付き合い方
悩みの棚上げ棚卸しをして、前向きに生きる。

 

 人生には悩みというものはつきものである。
私も多く悩みを抱えている。しかし、この悩みというものは、何なのだろう。
悩みとどう向き合えば良いのか。どう付き合えば良いのだろうか。教えてくれる人は誰もいない。

 

 30数年間、心療内科医として、悩みを抱える患者さんと向き合ってきた。
いろんな悩みと出会った。
ある女性の患者さん「夫が浮気相手との悩みを私にどうしたらよいかと聞くんですよ」。開いた口がふさがらなかった。
不安障害の患者さん「悩みのないのが悩み」。沈黙するしかなかった。

 

 多くの患者さんの悩みは次の四つに分けられる。
仕事・人間関係・経済問題・健康問題である。
悩むとは、自分の大切な事に対し問題が発生し、その事を解決しようとして考えをめぐらす事である。

 

 悩むという事は、問題認識が出来、ストーリーを構築でき、このままいくとどうなるであろうかと、推測する能力があるからなのである。

無関心・認識する能力がなければ悩みは生まれない。認識し関心を持ち執着するゆえに悩むのである。
それからすると、一生懸命生きている「光」がゆえに、生まれてくる「影」であり、それゆえ人は悩むのではないだろうか。

 

 人生の悩みとどう向き合えば良いであろう。
それは、悩みをどうとらえるかによる。

 

 悩みを「運が悪かった」「不幸」と捉える事も出来る。それはそれで悪くは無い。
愚痴を言う事も、大切である。しかし、それだけでは、後ろにしか向かえないと思う。
「あの時あの道を選んでいたら良かった」「ああすればよかった」。「たら」「れば」では、前には向かえないと思う。

 

 悩みを人生から自分に与えられた「課題」・「試練」と捉えてみてはどうだろうか。それだけでも前向きになれると思う。
そうすれば、それらの悩みに「立ち向かっていこう」「生き抜こう」と闘いの「のろし」を揚げる事が出来る。
これまでの私の臨床経験でも、初めは落ち込んでいても、後々は悩みと立ち向かっていく患者さんと多く出会った。

 


 さて、本日の一番の課題「悩みとどう付き合うか」である。
人生の悩みを否認せず、しっかり向き合う事は大切な事である。
しかし、その付き合い方を間違えると、うつ病を発症する事もあるため、付き合い方を知る事は、大切な事である。

 

 悩みとの付き合い方の良くない例として、ロダンの考える人を挙げたい(ロダンの彫刻は大変素晴らしい彫刻である)。
24時間頬杖をつきっぱなしであるところがいけない。
朝から晩まで寝ながらも、一つの事を考えっぱなしだと、エネルギーを消耗してしまい、それが何日も続くとうつ病を発症してしまいかねない。
一日中悩み続けるという事は、うつ病へのたどり道なのであるから。

 

 私からの提案であるが、悩む事の「オン」と「オフ」が大切なのである。

 

 悩む時は「オン」と言って頬杖をつき、しっかり悩みと向き合い考える。
そして、5分たったら「オフ」と言って頬杖つくのをやめよう。
数学の問題でも5分間考えて解けない問題は、一時間考えても解けない事も多いのであるから。

 

 つまり、5分間考えたら、悩みへの執着を離れ、棚上げして、目の前の今に集中する事である。
そして、また、翌日に、棚から降ろして5分間だけ考えよう。
エネルギーのロスが少ないので、うつ病を予防する事になると思う。

 

 この悩みの棚上げ棚卸の訓練が大切で、出来るようになるのに時間はかかるが、切り替えの訓練を続ける事で出来るようになる。
そのための方法としては、「なるようになる」と言い聞かせて執着を断ち、手足を動かして目の前に集中しよう。

 

 江戸時代の禅僧の良寛さんの言葉で「災難に逢う時節には災難に逢うがよく候。死ぬる時節には死ぬがよく候。これはこれ災難をのがるる妙法にて候」という言葉があります。
私の解釈ですが、悩みはある程度考えたら、あるがままに受け止めて、執着を断ち、切り替える事が大切であると説いたのではないでしょうか。
もしかしたら、何か出来事があった時の、本当の災難は出来事そのものよりも、その災難が生み出す心の苦しみ(二次災害と私は呼んでいます)なのかもしれない(災難の出来事により違いますが)。
良寛さんは、「あるがまま受け止めて切り替える事」で、災難から生じる心の苦しみからの、逃れ方を説いたのかもしれない。
周囲の環境はなかなか変える頃は出来ない。変える事の出来るのは自分の心の受け止め方である。
そして、その災難の状況をしっかり受け止めて、その中で自分の出来る最大限の事を探して生きる事を説いたのだと思う。

 

 また、場合にもよるが、時間というクスリがある事もお忘れなく。

 

イラスト:ウエズタカシ

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