うつ病予防の為に~一銀クリニックブログ「心の処方箋」

平成25年、沖縄タイムスにて好評連載後、書籍化されたメディカルエッセー『心の処方箋』。
その著者、一銀クリニック院長の城間功旬が、うつ病予防の提案として“言葉の力”をお届けします。
皆様の心の悩みを軽くする読むクスリになれば幸いです。


テーマ:
うつ病を予防するための魔法の言葉「今に集中する」

「『今に集中する』は私を回復させてくれた魔法の言葉ですよ」と回復したうつ病の患者さんから言われる事が時々あります。
あるいは、「以前にこの言葉(今に集中する)と出会っていたらこの病気にならなくて済んだのに」と残念そうに話される方、あるいは「今に集中することで考えの切り替えが出来るようになれたなんて感動ものです」と話される方もいました。
なぜこの言葉がうつ病の予防・回復にそれほど大切な言葉なのか、例をあげて説明します。

75歳、男性、元公務員。
兄弟の不幸・妻の手術等で忙しい中、老いてゆく不安を感じて食欲が低下し、腰椎の圧迫骨折で一ヶ月間入院した。
弟がすい臓がんの骨転移で亡くなった時に背中の痛みと食欲不振があったので、自分も同じ病気でないかと不安で眠れなくなり、当院を受診した。

初診時、両手足と胸が痛む。
悪い病気ではないかといても立ってもおれず不安になる。
楽しい気分が全く無く、何をするのも億劫で庭の花木の手入れもしない。

うつ病と診断し、睡眠薬と抗うつ剤を処方し、「気を病む事と考える事の違い」を説明し、「今に集中」して生活するよう話し、それをメモしてさし上げた。

回復後に彼が言った。
「風に当たっても両腕がヒリヒリするのが一ヶ月間も続いたので、もうこれで自分は終わりでないか、死のうかと思う事が、一ヶ月間も続いていた。しかし、初診時にドクターから『今に集中』と書かれたメモをいただき、始めは実行が難しかったが、『今だけを考えればよい』と割り切って生活しているうちに、実践出来るようになった。すると不安も徐々に治まり、胸の痛みや手足のしびれも取れ回復した。『今に集中』は私にとって『魔法の言葉』ですよ」と話された。
そう言っていただき、私も嬉しかった。

なぜ「今に集中する」がうつ病の予防・回復に大切であるかとの私の考えはこうである。
うつ病は過去の後悔・未来の取り越し苦労に捕われる事で大量にエネルギーを消耗した結果、エネルギーレベルが低下し発症する事が多い。
このような無駄の多い心の運転の仕方による精神的エネルギーのロスを避け、心の消エネ運転をする事が「今に集中」なのである。
これで心のエネルギーが充電され易くなり速く回復するし、また、うつ病を予防するための心の動かし方なのである。
このような心の消エネ運転の生活習慣「今に集中する」を心がけ、生き易い生活をして欲しい。

気を病まずに切り替えて今に集中出来るようになるまでに要する年月は人それぞれで、数カ月から数年かかる人もいる。
しかし私の30年間の臨床経験から言える事は、「今に集中」出来るようになった人は、その時点では、ほとんどの人が改善・回復した状態に達しているという事実である。
ですから、今すぐに出来なくとも焦らずに努力目標として欲しい。
きっと生き易くなります。

最近、以前受診した患者さんが診断書の用事で15年ぶりに来院し、その帰り際に「今でも先生からいだいたメモ『今に集中する』を壁に貼って見ています」と言って帰られた時は、驚きと同時に嬉しく思った。

言葉の力

イラスト:ウエズタカシ

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