今回、日本一遠い温泉といわれる"高天原温泉"へ行くため、いつもな

がら綿密な計画を立てた。東広島の会社を定時の17:30に上り、

そのまま山陽道の高屋ICから高速道路に乗る。中国道、舞鶴若狭道、

北陸道と順調に走って富山ICで降り、有峰林道の亀谷ゲートへ2番目

に着いた。ちなみに一番先頭は水戸から来られたというO氏である。

彼と少しばかり話してから仮眠を取った。

 

さて、なぜ先を急ぐかというと、午前6:00にゲートが開くが、登山口付近

にある折立連絡所の駐車場が狭く、場合によっては路上駐車を余儀な

くされる恐れがあるからだ。

 

予想通り朝6:00前には後ろにズラーっと車列が出来た。車中泊でわずか

3時間あまりの仮眠しか取れなかったが、もはや闘いの火蓋は切って落とさ

れたのである。

 

1番目のO氏がなかなか飛ばしていたので、折立連絡所に20分あまりで着い

てしまった。私も多少腕に覚えがあるので、お陰様で後ろのクルマが付いて

来れることなく、余裕を持って登山口近くのベストポジションに駐車することが

出来た。ここまでは完璧すぎるほどの行動だ。

 

折立登山口 6:50(0:00) 標高1356m

 

そそくさと準備して6:50に出発。いよいよ黒部最奥部への旅が始まった。

しかし、のっけから急登の試練が続く。薄々嫌な予感はしていたが、こちらが

普通列車ぐらいのスピードに例えると、アスリートみたいな屈強な若者集団が

新幹線並みのスピードで追い抜いていった。うーん、仕方ない。

 

しかし、その後はショックの連続… ベテラン高齢者のみならず、山ガール

+?才の特急列車にも抜かれる始末。寝不足とテント装備の重量と登山靴

の寿命末期という言い訳さえ虚しくなるほど、脚力の差を見せつけられた。

普通のハイキングコースでは有り得ないことなのだが、黒部へ向かう人々の

実力は、もはやエキスパートと呼ぶにふさわしい。

 

ゆえに自分の無力さを痛感しながら、薄暗い樹林帯のなか黙々と歩みを

進めるしかなかった。完璧なはずの登山計画は開始早々から揺らぎ始めて

いる。

 

しばらく歩いていると、亀谷ゲートで一番前だった、水戸から来られたO氏と

再会した。彼は薬師沢源流へ釣りに来たというが、釣りにしては本格登山の

行程である。ペースも私と同じくゆっくりで、薬師沢小屋まで様々な会話を

しながら同行させてもらった。なにぶん本格登山は久しぶりだし、まして黒部

は初入山なのでたくさんの情報も得られて心強かった。

 

三角点 8:37(1:47) 標高1870m

 

幾度かの小休止のあと、三角点というポイントに着いて休憩。標準タイムが

1:30だから17分もオーバーしている。うーん悲しいがマイペースを守ろう。

完璧なる計画はここで無残にも滅び去った。

 

天気も見晴らしも良く、気温もグッっと下がって気分爽快。緩いアップダウン

のあとに石畳の登りがだらだらと続く。

 

積雪観測棒 9:01(2:11)

 

ガラガラ蛇みたいなデザインの棒が建っている。冬季に積雪量を計る

のだろう。相変わらずの登りが続くが、次第に身体が慣れてきたせいか、

ペースが上がってきた気がする。いや、抜かれてばかりで、抜いた人は

数人だけだ。確実に遅い。

 

太郎平小屋 12:10(5:20) 標高2330m

 

息を弾ませながら太郎平小屋に到着。標準タイムは4:30だから50分も

オーバーしたけど、もう気にしない。私は歩くのは遅いが、並みの人よりも

執拗な性格?のため、長時間歩けるのだ。今はね(苦笑)

 

ちょうどお昼時だったが、さすがにノンビリできないので、コーヒーを沸かし、

カロリーメイトを頬張ることしか出来なかった。

 

太郎平小屋からの下り。ホンモノの絶景に息を飲む。あの谷間の下まで

降りて行くと思うともどかしい。

 

所々に階段が設置されている急な下りが延々と続く。帰りに通ると思うと、

いささか気が重くなる。

 

ああ~梯子だ。高所はあまり好きではないけど、そんなことを言っている

場合ではない。しっかり掴まれば怖くはないが、渡る前に梯子の状態や

取り付け具合を自ら確認することが大切だ。

 

薬師沢が見えた!あのエメラルド色の美しさは、この世のものとは思え

ない。宝石店で大枚を叩く前にこれを一度見ておくと、要らなくなるので

はないか?

 

薬師沢小屋 14:40(7:50) 標高1920m 

 

もったいない話だが太郎平小屋から410mも下って薬師沢小屋に到着。

どうやら地図に載っているコースタイムは健脚向きで、あてにならないこ

とが判明。プランは多少の余裕も持って作成したが、下りで稼いだぶん、

40分オーバーにまで10分詰めた。

 

 

ここで今までお世話になったO氏とお別れ。彼はここで山小屋に泊まって

沢で釣りをするそうだ。握手して別れ、私は雲の平へ向けて吊り橋を渡り、

“直登”を開始した。黒部で急登は当たり前。直登って何だ?と思ったら、

ガレた崖をそのまま登ることを意味していた。

 

↑ 雲の平 直登ガンバレの記述が不気味…

 

何なんだ! いきなりこんな梯子で崖を登れってか?

 

今までの道が舗装道かと思えるほどの険しさで、もはや山ではなかった。

人間大の大岩がゴロゴロした登りで、まさに地獄へ入り込んでしまい、

重い装備を放り出してしまいたくなる程の厳しさだった。

 

こんな登りが延々と続く。もう2度と通りたくない修羅場。汗が滝のように

流れ、息はターボチャージャーで強制過給された状態。これほど長くて酷い

道は、いままでに経験したことが無い。これを3時間もぶっ続けで格闘した

のだから、自分で自分を褒めたくなった。

 

もうね、あまりの疲労に麻生太郎なみに口がひん曲がってしまいました…

 

その3へつづく

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