まず正直に白状すると、つい先日まで「日本一遠い温泉」があるという事実を

恥ずかしながら知らなかった。つい先月の8月11日に日本一到達困難な“野湯”

である北海道の“金花湯(きんかとう)”へ片道21km(往復42km)の到達に成功

していた。その時、ここが一番遠い温泉と思い込み、先のブログに書いた通り、

ひとり悦に入っていた。

 

しかし、人間にも同じことが言えるが、温泉にもさらに上がいたのだ。

登山者のための温泉なら八ヶ岳の“本沢温泉”や北アルプスの“白馬鑓温泉”

が知られており、こちらは既に入湯済み。遠いと言われる白馬鑓でも数時間

もあれば到達できる。

 

ところが、同じようなアルピニスト系の温泉でも、鼻歌まじりのハイキング気分

では絶対に到達不可能な温泉が存在する。それは、富山県にある秘境黒部の

最奥部にひっそりと沸く「高天原温泉(たかまがはらおんせん)」である。

 

何しろ到達するために片道13時間、往復では通常で3泊4日の山小屋泊が

必要と言われるほど遠い。さらに初めこそ普通の登山道レベルなのだが、

中間部(薬師沢小屋)より先は、峡谷のゴロゴロとした大岩が行く手を阻み、

時に足がすくみそうな危険箇所を命懸けで越えなくてはならない。

 

もちろん入念な下調べと装備は必須だが、ある一定の山岳経験と知識、体力、

脚力、精神力、判断力のすべてを要求されると言っても過言ではない。険しい

現場と対峙した時、容赦なく試練を与える大自然との駆け引きと、弱くて挫け

そうな自分との闘いが待っているのだ。

 

それでも、私は「知ってしまったからには、到達するが我が人生」が信条なので、

2~3ヵ月のダイエット(85→78kg)と筋肉トレーニングでエセ肉体改造を行い、

北海道から帰ってから、わずか20日後には、再び秘境の最奥部へと入り込む

ことにした。

 

余談だが、山小屋の雰囲気こそ否定しないが、大金を払ってまで互いに寝床を

共有するのは戴けない。よって、いつも通りにテント+シュラフなどの装備に加え、

歩荷訓練として4Lの水を持ち、装備重量を16kgにして挑んだ。おまけに日程が

厳しいため2泊3日へ短縮し、一日当たり10時間以上の歩行を3日間連続させる

など、徹底的に自分を追い込むことにした。

 

しかし、疲労困憊と、登山靴の寿命による破壊危機、それに伴う足の痛みで

さすがに無理は出来なかった。幸いルート上で水はふんだんに入手できる

環境のため、後半から歩荷の水を半分の2Lに減らしたことを白状しておく(笑)

 

【解説】

高天原温泉(たかまがはらおんせん)は、富山県富山市有峰黒部谷割に

ある温泉。

 

飛騨山脈(北アルプス)水晶岳の麓、黒部川支流・温泉沢沿いの標高

約2,100 mの場所に位置する。山奥であることから徒歩(登山)でしか行く

ことができず、またどの登山口からも距離があるため1日でたどり着くことは

困難で、通常は途中の山小屋で1泊を要する。

このようなアクセスの困難さゆえに「日本一遠い温泉」と呼ばれることもある。

 

昭和20年代頃まで操業していた大東鉱山のモリブデン鉱山がこの付近に

あり、そこで働いていた作業員たちによって発見された。現地に泉質の表示

はないが、湯は白濁しており単純硫黄泉(硫化水素型)とされている

 

源泉をそのまま注いでいる露天風呂が沢沿いに3つあり「からまつの湯」と

呼ばれている。うち1つは囲いがあり女性用となっている。山中の温泉であり

簡易な脱衣所しかない。石鹸やシャンプーなどは用意されていない。

 

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