2016年の夏、北海道の秘境駅ならびに野湯アタックを続ける旅の
最終目標がここ、「金花湯(きんかとう)」である。
ここは国内に数ある野湯の中でも日本一到達が困難な野湯といえ

よう。

 

冒頭からいきなり脱線させて申し訳ないが、ここで秘湯(ひとう)と

野湯(のゆ)の違いを述べておこう。まず秘湯は、どんなに山奥に

あっても、人(宿など)によって管理されていて有料のものが多い。

 

一方、野湯は誰にも管理されず(善意で管理する人もいるが)、

基本的に放置状態。24Hいつでも入れ、当然ながら無料というの

が条件である。放浪癖が強くてケチな私は自由と無料に弱いのだ。

 

ちなみに秘湯では、今回訪れた金花湯よりも、もっと険しいところが

ある。富山県の北アルプス山中に沸く「高天ヶ原温泉」で、どのルート

を通っても片道13時間。基本的に2泊3日を要する。ただし、先ほどの

条件で、高天ヶ原小屋によって管理されており、300円の入湯料が

かかる。薬師ヶ岳への登山ルートでもあるので人通りも多い。


余談はさておき、2016年8月10日、私は意を決して訪れることにした。

金花湯へは往復42kmの全行程が徒歩であるため日帰りは不可能。
いわゆる温泉脇でのテント泊という強行軍である。

コースは廃林道とはいえクルマの通ったことのある道ゆえ、全般的
に登山道とは異なり比較的ゆるやか。しかし、あまりにも長丁場の
ため、体力的消耗は著しいものがある。

途中の沢で水分補給をしたいところであるが、北海道の沢水はキタ
キツネなどが媒介するエキノコックス症(寄生虫)に罹患する可能
性も否めない。特に流れの緩やかなもの、たまり水の飲用は禁忌で
ある。不用意なことを避けるべく、水などの飲料は重くても持参す
べきである。

さらに羆(ヒグマ)の遭遇率も極めて高く、ネットの情報でも過去
に幾度か遭遇した記述も見られる。現実に真新しい痕跡(足跡、糞)
も見られることから、唐辛子スプレーをはじめ、鈴、ラジオ、爆竹
ホイッスルなど複数の熊対策が必須となろう。

こうした様々な事案を鑑み、目標の金花湯へ到達することは、あら
ゆるリスクを背負うため、体力、技術、装備、覚悟が必須である。
さらに細心の注意を払っても、起こりやすいアクシデントに対し、
冷静かつ適切な処置などが求められる。

あらゆる面で自らの行動に全責任を持つことが出来る人に限られ、
ゆえに誰もが到達可能な場所ではない。

十年ほど前は、現場(温泉)までオフロード4WD車、オフロード
バイクなどで到達できたようだが、2016年現在、林道の入口は
二輪車の通過さえも許容しない厳重なゲートに阻まれているため
徒歩以外の進入は不可能。しかも、片道21kmも離れた距離にある

のだ。

前置きが長くなって恐縮だが、ここで温泉の一般的データを紹介
しよう。

【概要】
金花湯(きんかとう)は北海道島牧郡島牧村、泊川支流小金井沢
川沿いにある温泉、いわゆる野湯である。温泉法に基づく温泉で
はなく、正式な名称も決まっていない。

文献やサイトによっては、「小金井沢温泉」「小金の湯」
「金華湯」「黄金湯」「黄金温泉」などと表現される事もある。
ここでは使用頻度が一番高いと思われる「金花湯」の表現を用い
る。

【泉質】
含石膏土類硫化水素泉(中性低張性高温泉)ph6.5
成分総計4,029ミリグラム(含S-Ca・Na-Cl・HCO3・SO4)
自然湧出

大量に白い湯の花が生成される事、石灰華の成長が早いことから、
硫黄、カルシウムが豊富に含まれていると推測。泉色は無色透明
であるが湯の花によって白濁しており硫黄臭がする。

【温泉地】
渡島山中の奥深く、ブナの原生林に囲まれた北海道でも屈指の
秘湯である。
一番大きい源泉は小金井沢川横の高台から湧き出しており、黄褐色
(見方によっては黄金色)の石灰華ドームを形成している。

源泉のやや下には先人が掘った湯船があり通常はそこを利用する。
見晴らしは良く周りの山々の様子を眺めながら入浴できる。

周辺にもいくつか少量湧出の源泉がある。サイトによっては
「大判小判の湯」「鳳凰の湯」などと名付けている。

【歴史】
昭和30年代に鉱山調査のボーリング中に偶然湧き出た。昭和の末
頃までは温泉のすぐ横までトラック通行可能な林道(今回向かった

コースとは別で近道)があったが、現在は廃道(泊川林道)となって

いる。

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