愛媛新聞 11.4

土地にしみついた固有の空気や記憶を見つめて
作品に結晶させている気鋭の作家たちがいる。

かつては中上謙次さんが紀州熊野の路地を
大江健三郎さんが四国の森をモチーフに

均質化していく風景と閉塞感のなかで
現代の若手作家が今の地方都市をどのようにとらえているのか?


田中慎也(下関市)
(閉塞感はあるが、緊張感や危機感はない地方都市)
「今」の行き場のない情景を「過去」とつなげる。
「安徳天皇が亡くなり、平家が滅んだ土地です。
800年前に、そこでいっぺん日本が終わっているのだという
気持ちが払拭できなくて・・。」

土地の特殊性とそこで生きる人々の感情をとらえることで
独自の世界観を現出。


ファミレスやコンビニなどが
地方の風景を似通ったものに変えてしまったが
コンクリートの”皮膜”の下には
土地が抱える物語がある。

かつてその地でうごめいた人々の思いがある。
そうした過去をくみ上げる力を持つ作家たちが
地方の新しい小説を生み出していくのだろう。


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確かに、どんどん均質化し
閉塞しているのに弛緩している。
永遠の日常がそこにあって
なんとももったりとした重さにくるまれている。

人と同じ。
他人と違う自分の個性が見つけられれば好きになる。
町をあきらめず、好きになるためには
そこにしかない個性を見つけること。
そのためには、こうした小説、物語という表出も
一つの手法だと思う。