鳩山由紀夫首相が実母から7年間にわたり毎月1500万円を資金提供されながら贈与税を納めていなかった問題が昨年末以降、日本中の注目を集めた。鳩山首相は贈与税約6億円を納付したが、国政のトップが税金を免れようとした事実は全国の納税者の怒りを買った。それにしても、鳩山首相と違って普通の家庭で育った一般国民は、贈与税にほとんど縁がないのでは。「いえいえ、贈与税は結構みなさんに身近な話ですよ」。こう話す近畿税理士会専務理事の杉田宗久氏(55)に、贈与税について聞いてみた。(宮本尚明)

 ■意外に高い認知度

 「基礎控除額である年間110万円を超える贈与を受けると贈与税がかかるという知識は、多くの納税者が知っていると思う。節税のために毎年110万円だけ贈与を受けている人も結構いますから」。杉田氏は贈与税が決して認知度の低い税でないことを強調する。

 身近な贈与税の例としては、住宅購入する際に親や祖父母から資金援助を受けるケース。平成21年に500万円の資金援助(贈与)まで非課税枠が設けられたが、今年は景気対策で住宅需要を刺激するため、非課税枠が1500万円まで拡大した。23年も1千万円の非課税枠が残る。

 贈与税とは、生前の贈与で相続税を回避するのを防ぐために設けられており、相続税を補う役割を担っている。相続税法の中で相続税とともに規定され、相続税とは「切っても切れない仲」という感じだ。年間110万円を超える贈与に対して課税され、贈与額に応じて10%から50%まで段階的に税率が上がる。基礎控除後の課税価格が1千万円を超えると税率は最高の50%となる。

 ■仕送りは対象外

 親が子の面倒をみるのは当然という理由から、税法上、親子(扶養義務者)間で日常生活に必要な生活費や教育費を必要なときに援助する小遣いや仕送りは、贈与税の対象にはならない。杉田氏は「不動産や株の贈与では多くの人が申告の必要性を認識するが、多額の現金を贈与されても、援助という誤解をするためか、申告を忘れてしまうことは結構ありうる」と指摘する。

 実母からの月額1500万円の資金提供を「知らなかった」という鳩山首相の金銭感覚は、一般国民にとっては衝撃的だった。もし月額1500万円もの贈与について、鳩山首相がその金銭感覚から「生活費の援助と認識していた」と主張したら、課税を逃れることができたのか。杉田氏は「たとえ鳩山首相が援助と認識していたとしても、日常生活に必要な生活費や教育費でなく、政治資金に使われていたのだから、それは通用しないでしょう」と言い切る。

 ■無申告には加算税

 贈与税は、1月から12月までの1年間に受けた贈与について、翌年2月1日から3月15日までに各税務署に申告書を提出しなければならない。鳩山首相のように申告せずに期限を超えてしまった場合、すぐにでも申告しなければならないが、当然、ペナルティーもある。それが無申告加算税だ。

 無申告加算税は、税務調査を予知していない段階で自主的に期限後申告すると、本税の5%にとどまる。しかし、税務調査での指摘はもちろん、税務調査の連絡があった直後などに急いで期限後申告しても、無申告加算税は15~20%にアップされてしまう。

 また、一般的な税の時効は5年だが、贈与税の時効はなぜか6年となっている。以前は5年だったが、平成16年1月以降の贈与から6年に変更された。税理士のなかには、現在でも5年と勘違いしている人が結構多いのだとか。

 杉田氏は「時効がないと、国税当局はいつまでも目を光らせておかないといけないので大変だろう」と話す。

 ■首相問題の悪影響

 鳩山首相の贈与税問題は、納税者の怒りを買っただけでなく、現実に悪影響を与えた部分もあったようだ。近畿のある税務署では今年の確定申告期間中、納税者が「税金は(自主的にでなく)指摘されてから払えばいい。鳩山首相を見てみろ」などと言って、税務署から送られてきた申告書類をそのまま突き返しに来た人もいたらしい。

 杉田氏は「首相の税金問題は、全国の納税者のコンプライアンス(法令順守)意識を崩してしまったようだ」と手厳しく批判する。

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