うらな

#6 年下の君を想う

2008年03月06日(木) 00時00分00秒 posted by urana
テーマ:第一章

この気持ちが恋であると自覚したのは一年も前のことだった。
つまりようするに私の片思い歴は365日にもなるのである。

愛しの君は今日も王子のごとく光り輝いていてニコニコと笑っている。
なにしろネクタイの色もスーツも彼に良く似合っていて爽やか度100%なのだ。

朝からその顔は反則、目に毒、仕事にならない。

彼の少し茶色の瞳にとらわれてしまっていた。

ああ、本当に綺麗だなあ、この人

「先輩どうしたんですか?俺の顔になんかついてます?
ここ数字間違ってるみたいですけど」
どうやら見蕩れていたらしい。


どうにかこうにか今日も仕事を終えることができそうだ。
王子の席をさりげなくみる。
王子の隣には彼と同期の職場のアイドル、かなちゃんがいた。

二人はなにやら親しそうに話をしている様子だ。
とても似合うのである、王子とかなちゃん
お内裏さまとお雛さまみたいだ。
私はため息をついた。

「あの、先輩も飲みに行きませんか?会社の近くの店ですけれど、
私たちとあと二人ほどくるとおもいますが」
顔も性格も完璧なかなちゃんが私を誘ってくれた。
「ありがとう。でも、ごめんね。まだ仕事終わってないから、無理かな」
私は小さな嘘をついた。

「わかりました。じゃあ、お仕事頑張ってくださいね」
かなちゃんのスイートボイスが私に向けられた。

王子は軽く私に手を振り
「それでは先輩お先に失礼します」と言った。

先輩か、一度でいいから名前で呼んで欲しいな

この先何年たっても私は彼より5つも年上のただの先輩という存在なのだ。

王子と一緒の飲み会は魅力的だけれどかなちゃんがいるとなると話は別だ。
仲良しの二人のことを勝手に想像してしまい、落ち込んでしまいそうだ。
ほとんどやけ酒になってしまうだろう。
二人が言葉を交わすたびに悲しくて嫉妬に狂ってしまいそうだ。

私はありもしない残業をしていた。
PC前に座り明日やれば十分間に合うような書類をたくさん作っていた。
結局午後11時になっていた。
私はいったい何をやっているのだろう。

会社を出た。
春とは名ばかりで寒さが身にしみるようだった。
寂しくてこのまま死んでしまいそうだ。

駅へと向かう道をのろのろと歩いていた。
暗く続く孤独への階段を登っているみたいだった。
不意に声をかけられた。

「先輩!仕事終わったんですね。
俺も今から帰るところなんですよ」
そこにはいるはずのない幻の王子。

私はうつむいたままでいた。
まさか彼のはずがない。
幻聴があり幻覚がみえるほど私は重症なのだろう。
医者にも治療不可能の恋煩いだ。

王子は私の肩をぽんぽんとたたいた。
「先輩一緒に帰りましょう」
顔をあげた私を見るなり彼は少し驚いたようだった。
「先輩!」
「?」
ああ、きっと私の顔はまぬけそのものだろう。

彼のひとさし指が私の目の下をそっとなでた。
何?今、何がおきた?
落雷が落ちた、私の心に。
無言のまま彼をみつめる。

「涙、流れてる、先輩、どうしたの?」
「えっ、私、泣いてるの???」

「先輩、迷子にでもなったの?」
敬語でも丁寧語でもない普通の言葉で彼は私に話しかける。
「えっ、なんでだろ、泣いていないよ、平気、なんでもない、きっと寒かっただけ」

彼はくすりと笑い、私を突然抱きしめた。
私はブロンズ像にでもなってしまったかのように固まっていた。
動けない。いや動きたくない。このままでいたい。
でもこれは夢なのかもしれないのだ。
あとでほっぺをつねってみよう。

「残業なんかなかったくせに。
・・・もう、ほうっておけない、そういうところがかわいすぎる」
彼は私にそう囁いた。

そして、私を抱きしめたまま、
「泣かせたのは俺?」と聞いた。
私はすこしためらってからゆっくりと首を縦に振った。
彼の心臓の音を聞いていた。

「もう、泣かせないよ、」
と言い、彼は私のファーストネームを呼んだ。






年下君、やりますね。
彼の方もいままでずっとあなたのことを見ていたのでしょうね。
にほんブログ村 恋愛ブログ 恋愛アドバイスへ

#5 彼に言われた。「俺じゃだめ、か」

2008年03月05日(水) 00時00分00秒 posted by urana
テーマ:第一章

彼女の本気の抵抗にむなしさを感じつつ、
それでも俺はラストのチャンスにかけた。

嫌がる両腕を俺のネクタイで縛り上げ
怯えて涙を流す彼女をみつめた。

彼女を乱暴に押し倒した。
欲望のままのキス
自分よがりの抱擁
偽りのメイクラブ
彼女から返してくれる優しさは何一つなかった。

いつか二人で選んだブルーのソファーの上で
彼女は全てをあきらめたかのように静かに目を閉じていた。
まるで人形のようだった。

「目、開けて」
俺は自己嫌悪に苛まれていた。
こんなことをしても彼女はもう戻ってはこないのだ。
傷つけてしまっただけだ。

彼女の長いまつげは涙に濡れていた。
それでも見開いたその瞳は強くて彼女の心の中のようだった。

俺を好きだと愛してると言ってくれた彼女はもうそこにはいないのだろう。

俺は彼女の拘束を解いてやり
彼女を抱き起こし彼女を自分の胸に引き寄せた。

冷たい空気が俺を包みこんだ。
拒絶なのか俺への哀れみなのか
とにかく彼女はおれを全身全霊で否定していた。
「そんなに震えるほど、俺が嫌いか?」

「ごめんなさい。やっぱり無理なの。好きなの、あの人のこと・・あなたの友達なのに。
心変わりしたのは・・・悪いのは・・私なんだから、私の事はもう捨てて」
彼女は自分の言葉に酔うように捨ててくれといい続けた。

そうしてひとしきり泣き続け、やがて彼女は帰り支度を始めた。
俺はグラスにバーボンをそそぎ一口飲んだ。
強い酒も俺を救ってはくれないのだろう。

「・・・あいつさ、ずっとつきあってる彼女いるぞ、それでもいいのか?」

「・・・それでも、いい、振り向いてくれなくてもいい」

「それでいいのかよ。今までどおり俺といればいいだろ?俺よりあいつが好きでもいいよ。俺はお前が好きだから」

彼女は息をのみ、何度も何度も俺に深く頭を下げた。

そしてさよなら、いままでありがとうと言って部屋を出て行った。
はかないけれど綺麗な笑顔だった。
俺への彼女からの最後のプレゼントなのかもしれない。

なあ、俺じゃ、だめなのか・・・・・

俺のつぶやきは雨音にかき消された。


心を縛り付けておける呪文があったらいいのに







にほんブログ村 恋愛ブログ 恋愛アドバイスへ

#4 心まで抱きしめて

2008年03月04日(火) 00時00分00秒 posted by urana
テーマ:第一章

滴り落ちるあなたの汗が私の頬を濡らす
あなたはつややかな黒髪を揺らし
あなたのクールな瞳が少しだけ甘くなる


余裕のなくなったような吐息をもらす。
耳元で何度も私の名前を呼ぶ


その瞬間だけは私を確かに愛してくれるのだと錯覚させてくれる

私を切なくさせ
私の全てに快楽をもたらす
私を抱きしめ
私を揺さぶり
私を天へと誘い込む

悲しいのか
嬉しいのか
むなしいのか
もうわからなくなる
「好きなの、私だけをみて」
あなたはいつも無言で曖昧な笑みをうかべる

あなたは私を抱きながら
誰のことを思っているの?


私の心はあなたを求めて
そしていつも迷子になる。





→あなたの傍にいる彼は幻ではないはず。
恋をすると確かな言葉が欲しくなる。
心も身体も愛する人の全てが欲しくなる。
にほんブログ村 恋愛ブログ 恋愛アドバイスへ
powered by Ameba by CyberAgent