担当 つご、はな、まり、やし

 

第3部 自信過剰(承前)

第22章 エキスパートの直感は信用できるか

  -直感とスキル

 

22-0

a.専門的な議論は研究者の最悪な部分を引き出す

b.ゲーリー・クラインとの研究

c.自然主義的意思決定とアルゴリズムの対立

d.経験豊富な専門家が主張する直感はどんなときなら信じてよいか

e.7、8年におよぶ議論

f.「エキスパートの直感の条件―不一致には至らず」

 

22-1.驚異と欠陥

a.『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』(マルコム・グラッドウェル著)についての意見の一致

b.ギリシャ彫刻のエピソード

c.専門家を導く手がかりを系統的に探すことは可能である

d.ハーディング大統領のエピソード

e.別の質問に置き換えた直観的予測が自信たっぷりに主張されることがある

22-2認知としての直感

a.筆者の見方の形成

→自分自身の妥当性の錯覚とポールミールの本

b.クラインの見方の形成

→消防隊長を対象とした初期の研究

b-1.クラインのチームの発見

→消防隊長は1つだけの案を検討する

b-2.認知主導的意思決定(Recognition primed decision)モデル

b-3.システム1:試案の思い付き

b-4.システム2:試案の検討

c.ハーバード・サイモンのアイデア

→状況を手がかりに、専門家は記憶に蓄積された情報を呼び出す。そして情報が答を与える。直観とは認識以上でもなければ以下でもない

d.直感は日々のありふれた経験に成り下がる

 

22-3スキルの獲得

a.直感を生み出す情報の記憶への保存

b.ある種の直感は短時間で身につく

b-1.恐怖体験からただちに学ぶ能力

b-2.不安感に続いて悪いことが起こると「予感が働いた」と感じる

b-3.パブロフの条件付け実験

b-4.恐怖は実体験だけではなく、言葉によってでもごく簡単に学習できる

b-5.消防士の例

c.困難で時間もかかる複雑なタスクのスキルの習得

c-1.単一ではなく小さなスキルの膨大な組み合わせで構成される

c-2.チェスの名人は一万時間練習に費やす

c₋3.読み方の学習

c-4.『鏡の国のアリス』に出てくるナンセンス・ポエム「ジャバウォックの詩」

 

22-4スキル習得の環境

a.直観的スキルの性質とその習得方法に関するクラインとの合意

b.研究テーマの意見の不一致

b-1.想定しているエキスパートの種類が異なる

b-2.クラインの想定するエキスパート

→消防隊長、看護師など本物の専門知識を備えたプロフェッショナル

b-3.筆者の想定するエキスパート

→臨床医、ファウンドマネージャーなど根拠に乏しい長期予測を試みる人たち

c.自分の判断への自信には認知容易性と一貫性が重要

d.つじつまが合っていることが真実であるとは限らない

e.人々が自分の直感に対して抱く自信は、その妥当性

の有能な指標とはなりえない

f.スキル習得の2つの基本条件

f-1.十分に予見可能な規則性を備えた環境であること

f-2.長期にわたる訓練を通じてそうした規則性を学ぶ機会があること

g.ロビン・ホーガスの「悪質な環境」に関する言及

g-1.ルイス・トーマスの例

g-2.自分の臨床診断への間違った自信

g-3.最高の統計アルゴリズムの精度の不完全さ

h.統計的アルゴリズムの有用性

→信頼性の高い手がかりを発見しやすく、ある程度の精度を維持できる点

 

22-5フィードバックと実践

a.ある種の規則性は見つけやすく応用が容易である

a-1.自動車のブレーキ操作の習得

b.プロフェッショナルの直感的なスキルの習得

b-1.質の高いフィードバック

b-2.練習し実践する十分な機会

c.専門的なスキルとはさまざまなスキルの集積である

c-1.プロフェッショナルは自分の専門分野の一部に習熟しているが、それ以外については初心者同様ということは大いにありうる

d.エキスパートの自分の専門知識やスキルの限界を必ずしもわかっていない→自信過剰の一因

22-6予測妥当性の評価

a.ゲーリー・クラインとの答

→有効な可能性の高い直感と低い直感の区別は可能

b.直観を信用できる場合

b-1.規則性の備わった環境に関するものである

b-2.規則性を学習する機会が十分にあった

c.連想記憶が主観的にはもっともらしい間違った直感を生み出す可能性もある

d.予測妥当性の低い環境ではつじつま合わせによって答を出しやすい

d-1.会社の収益予想の例

f.なぜ最初からスキル習得環境の規則性と学習履歴に注目し直観を評価しなかったのか

→いったん結論を知ってしまうとはじめからわかっていたように感じるもの

 

第23章 外部情報に基づくアプローチ

  -なぜ予想ははずれるのか

 

23−0.

a.カリキュラム作成の専門家セイモアとの教科書作成

b.セイモアに対する質問

b-1.教科書作成にどれ程の時間がかかるか

→2年後に集中

b-2.自分らと類似のプロジェクトを行うチームが程の時間がかかったか

→必ずしもプロジェクトを完了した訳ではない

(40%)

→完成したチームは7年以上10年未満かかった

→我々のチームは平均以下

c.セイモアの判断と異なる答

d.二つの対照的なアプローチの違い

d-1.内部情報に基づくアプローチ

d-2.外部情報に基づくアプローチ

e.計画の錯誤

ベストケース・シナリオによほど近かった

f.不合理な忍耐

合理性の排除を選択

 

23-1.内部情報に基づくアプローチ

a.内部情報に基づくアプローチ

a-1.見たものがすべて

a-2.手元の材料から推定

a-3.「無知に無知」

a-4.予想外の出来事が起こる可能性を予測する手段を持ち合わせていない

a-5.成功、失敗の確率を分かっていない

b.外部情報に基づくアプローチ

b-1.基準予測

失敗率40%、7〜10年

b-2.外部情報に基づいて参照クラスが適切に選ばれた場合、おおよその範囲を把握できる

b-3.内部情報だけに基づいていて、基準予測を起点にして調整したものではない

c.外部情報を無視した

c-1.内部情報に基づくアプローチと対立する場合、外部情報に基づくアプローチに勝ち目はない

c-2.内部情報に基づくアプローチを好む傾向には、感情が絡んでいることが多い 

 

23-2.計画の錯誤

a.当初の予想は妄想と言わざるを得ない

b.計画の錯誤の定義

b-1.ベストケース・シナリオに非現実的なほど近い

b-2.似ケースに関する統計データを参照すれば改善の余地がある

c.計画の錯誤の例

c-1.スコットランドの予算見積もりの例

c-2.鉄道建設プロジェクトの調査の例

c-3.アメリカでの自宅改築の調査の例

d.当初予算の見込みちがいは、必ずしも無知に起因するわけではない

d-1.場合によっては計画の錯誤を回避する責任は、意思決定者にかかる

d-2.意思決定者が外部情報の必要性を否定するようだと、計画の錯誤は避けられない

 

23-3.計画の錯誤を減らすには

a.参照クラス予測法…計画の錯誤の治療法

a-1.多くの人は過去の分布に関する情報を軽視または無視しがちであり、この傾向がおそらく予測エラーの主因だと考えられる。

a-2.計画立案者は、入手可能なすべての分布情報が十分に活用できるように、予測問題の枠組みを整える努力をしなければならない。

b.「無知に無知」な者は罰する

困難を予想できず予測不能の困難ありうることを見逃していた立案者

 

23-4.決定とエラー

a.楽観バイアスが過度のリスクテークの重要な原因

b.成功の確率に対する過度の楽観視が原因

 

23-5.私はテストに落第した

a.誤った前提に基づくプロジェクト

b.サンクコスト(埋没費用)の錯誤

合理性<これまでの時間・労力

c.思考停止状態

何が起きているのか考えたくない、考えまい

d.外部情報を自ら探す習慣を身につける

→自然にできるようになるには決してならない

 

第24章 資本主義の原動力

  -楽観的な起業家

 

24-0.

a.計画の錯誤とは数ある楽観バイアスの1つ

b.意思決定に及ぼす影響としては、楽観バイアスは認知バイアスの中で最も顕著なもの.

c.楽観バイアスとは好ましくもあるが危険な面もある

 

24-1.楽観主義

a.楽観的バイアスを持つ人は自分のことを運がいいと思っている

b.保険数理に基づく合理的な予想以上に自分の余命を高く見積もる人を対象にした調査

b-1.長時間働き、将来の所得に楽観的

b-2.離婚後に再婚する確率が高い

b-3.見込んだ株に賭ける傾向が強い→こうした良さが発揮されるのは、現実を見失うことなくプラス思考になれる人に限られる

c.楽天家の決定は大きな変化をもたらす

c-1.楽天家とは発明家であり、起業家であり、政治や軍の指導者であり、そこらの人間とは違う

→自ら困難を探し、リスクをとったため

d.小さな企業の創業者を対象にした調査

d-1.起業家は人生全般において中間管理職よりも楽観的

d-2.成功体験を通じて自分の力に自信をつける

d-3.その自信は周囲からの賞賛で強まる

→多くの人の生活に多大な影響力を及ぼす人たちは、楽観的かつ自信過剰である可能性が高い。

→自覚している以上に多くのリスクをとる

e.個人や組織がリスクをとる時には楽観バイアスが関与していて、決定的な役割を果たす

 

24-2.起業家の妄想

a.アメリカ人起業家は事業の継続性を期待する傾向が強い

a-1.起業家の81%は自社の成功率を70%以上と見積もる

a-2.起業家の33%は失敗の確率はゼロだと豪語

→自社のことになるとバイアスが顕著になる

b.トーマス・オーステブロの研究

b-1.楽天家が悪いニュースを受けとったときの反応に注目

b-2.ニーズなどの37項目から評価し、総合的にA≈Eのランクをつける

b-3.Eをつけられた発明家の約半分はそこで断念するが、47%は継続する

b-4.残念な評価を受けながら継続する発明家は楽観的傾向が強く見受けられる

c.ほとんどの人は性格特性の大半において自分は他人よりも上だと信じている

c-1.心理学実験によって確認済み

d.大企業の経営者は買収や合併に巨額の資金を賭ける

→よその会社の現在の経営者より自分の方がうまく経営できるという誤った信念

e.経済学者のウルリケ・マルメンディとジェフリー・テートの研究

e-1.楽観的傾向が強CEOほど過大なリスクを取りがちであるということ

→「ターゲット企業に高すぎる金額を払い、価値を破壊するような合併をやりたがる」

f.買収側のCEOが過度の楽観主義者とされた場合、合併時に株価が大幅に下落

→株式市場には自信過剰のCEOを見分ける能力が備わっている

g.CEOは個人的に自社株を保有自らが損をするかもしれない場合でさえ、大きなリスクとる

g-1.有名人扱いされているCEOほど発せさせる損害が大きい

→権威のある賞をCEOに贈呈するのは株主の利益を損なう行為

h.起業家の楽観的なリスクワークが資本主義経済を活性化させている

i.「倒産の可能性の方がはるかに高いスタートアップの創業者が政府に起業支援を要請した場合どうすべきか」

i-1.行動経済学者の多くは「リバタリアン・パターナリズム(自由主義温情主義)」に基づく政策に賛同

i-2.スタートアップを政府が支援すべきか、するとしたらいくら支援するのかという問題についての答えは見つかっていない

 

24-3.競争の無視

a.起業家の楽観主義

a-1.感情は原因の一つにすぎない

a-2.重要な役割を果たしているのは認知バイアス

a-3.システム1の「見たものすべて」効果が果たす役割は大きい

b.ドライバーに対する心理実験

b-1.「平均以上効果」の代表例

b-2.自己の美化 → 認知バイアス

c.競争相手の情報が少ない → 予測に競争がほとんど登場しない

d.競争の無視(コリン・キャメラ―、ダン・ロバロ)

d-1.システム1の「見たものがすべて」効果と置き換え → 競争を無視し、自分は平均以上と思い込んでいる

d-2.競争を無視すると

d-2-1.利益は確保できなくなる

d-2-2.経済全体にとってはプラスである

e.楽天的な殉教者(ジョバンニ・ドーシ、ダン・ロバロ)

e-1.破綻して優秀なライバルに道を譲る起業家

e-2.楽天的な殉教者は経済にとっては好ましいと歓迎されている

 

24-4.自信過剰

a.CFOは自分の市場予測能力にひどく自信過剰である→「見たものがすべて」効果の現れ

b.自信過剰な専門家の言葉を信用する組織は、高い代償を払うことになりかねない。

c.自信過剰を優遇するような社会的、経済的圧力は様々な分野の予測で働く

d.大胆な予想と臆病な決断(ダン・ロバロ、筆者)

d-1.過度の楽観主義を容認する感情的、社会的な要因が重なり合うと、興奮剤として作用する

d-2.その結果、ときに人をリスクテークに走らせる

d-3.このような人たちは臆病な人ほどリスクに気付いていないだけである

e.ものごとを実行する時において、楽観主義はプラスの効果が大きい

f.「楽観的原因究明」スタイル(マーティン・セリグマン)

f-1.成功は自分のおかげ、失敗は他人のせいという考え方

f-2.このスタイルは、すくなくとも、ある程度は学習することができる

 

24-5.死亡前死因分析

a.自信過剰からくる楽観主義は克服できるのか

a-1.自信過剰はシステム1の本来的な性質に由来するもので、完全に支配できない

a-2.問題は、首尾一貫すると主観的な自信が形成されること

b.組織の方が個人よりも楽観主義を抑えられる。

c.死亡前死因分析(ゲーリー・クライン)

c-1.将来、失敗することを想像して、その原因を考える

c-2.死亡前死因分析のメリット

c-2-1.死亡前死因分析は集団思考に陥りがちになるところを、克服できる

c-2-2.死亡前死因分析は、想像力を望ましい方向に解放できる

c-3.死亡前死因分析は、懐古的な見方に正統性を与える

 

(以上)