宇野ゼミぶろく!

法政大学社会学部宇野ゼミナール生によるブログ


テーマ:

担当者:さあ


0.はじめに
去年の研究では携帯電話を頻繁に利用するのは孤独を過度に恐れているということが分かった。今回は、携帯電話利用により生まれた孤独感についてと、なぜ孤独を恐れるのかを調査した。


1.ネオ・デジタルネイティブの青年期
a.ネオ・デジタルネイティブ
a-1.仲間から離れたくない願望
a-2.つながりがなくなることへの恐怖
b.青年期
b-1.友人から理解・評価されたい欲求
b-2.他者とのつながり希求


1-1.デジタルネイティブ
a.デジタルネイティブ世代
a-1.76世代(現在40歳前後)
インターネットを介在としたビジネスを立ち上げる(ex.mixi、GREE)
⇒インターネットが世界へ飛びだす入口
a-2.86世代(現在30歳前後)
携帯電話の利用増大


1-2.ネオ・デジタルネイティブ
デジタルネイティブ:子供の頃からPCやインターネットを使う環境の中で育った世代
   +      
モバイル志向  
=ネオ・デジタルネイティブ (=96年生まれ前後)


※96世代(現在の20歳前後)[2010.6 参加者:13~69歳2500人]
a.年代別メディア重要度:
15~29歳がインターネットと携帯電話を選択
b.情報機器の所有状況:
携帯電話・PHSの所有率100%
c.携帯電話をはじめて所有・利用した年齢:
6割以上が13~15歳


1-1-1.ネオ・デジタルネイティブの特徴(橋本 2010)
a.動画ランカレンシー志向
 動画+ラン(Language:言語)+カレンシー(Currency:貨幣)
 ⇒動画でのコミュニケーションを盛んに行っている
b.オンタイム志向
 友人がリアルタイムで何をしているのか
 ⇒周囲の人への気づかい、仲間から離れたくない願望
c.つながり志向
 終わらないメッセージの送受信
 ⇒つながりがなくなることへの恐怖
  つながっていることへの安心
d.モバイル志向
 携帯の普及とともに成長
 ⇒自分だけの空間の作成


1-2.青年期
14,5歳~24,5歳までの時期
内省的傾向、自我意識の高まりがみられる


1-2-1.青年期における対人関係の変化 (岡田 1999)
a.表面的で快活な関係を求める傾向
b.内面的関係を避ける傾向
c.相手に気をつかう傾向


ⅰ.内的対人関係(伝統的青年観):
 親密で内面を開示するような関係
 人格的共鳴や同一視をもたらす関係


ⅱ.現代的友人関係(現代の青年観):
 低い評価を受けないように警戒
 表面的に円滑な関係を志向する


1-2-2.青年期における自己評定
現代的友人関係:
自他を傷つけないように警戒する
⇒他者から肯定的評価を受けるような関係を維持
a.自他が傷つくことを避けようとする
b.自己愛的な傾向が高い


∵青年の友人関係と自己概念・自尊感情の関係
a.友人関係尺度
a-1.自己閉鎖:互いの内面に踏み込まないような関わり方
a-2.傷つけられることの回避:
   自分が否定的に評価されないよう気をつかう関わり方
a-3.傷つけることの回避:
   友人を不快にさせないよう気をつかう関わり方
a-4.快活的関係:楽しく円滑な関係をとる


b.適応指標:社会的環境に応じた行動をとる営み
b-1.優越感・有能感:強い自己肯定を表す
b-2.注目・賞賛欲求:注目の的になりたい等の権力志向
b-3.自己主張性:意見や判断力を表す
b-4.他者評価過敏:他者の視線を過度に気にする
b-5.自尊感情:自己評価


c.回答者の分類
友人関係尺度を変量とし、クラスター分析によって回答者を分類した結果3クラスターに分類


d.結果[1998 参加者:大学生261名]
d-1.第1クラスター:
  「自己閉鎖」得点最少
  ⇒伝統的青年観に合致
d-2.第2クラスター
  「自己閉鎖」得点が最大、「快活的関係」得点最低
  ⇒友人関係から回避、自分にこもる傾向
d-3.第3クラスター
  「傷つけられることの回避」・「快活的関係」得点最大
  ⇒自他ともに傷つくことを回避  ⇒「現代の青年観」に合致
   円滑な関係を志向
  「注目・賞賛欲求」得点最大
  ⇒友人から理解・評価されたい欲求が高い


1-3.「ひとりでいられなさ」と「つながり感」[2002 参加者:大学生74名]
「ひとりでいられなさ」はその背景に青年期の孤独感がある
その孤独感をひとりで抱えることができない
→「つながり感」を得ることの追及
⇒他者とのつながりを求めている


青年期の孤独:
人と親密な関係をもとうとする志向性を持ちながら、それが実現しないときに、人間同士の理解・共感は難しいと感じ、自分はひとりだと感じることであり、その感じの意味あいは、自分を含む人は、個別性をもつ存在であることに気づくことによって変化する。
 (落合 1987より一部抜粋)


a.ひとりでいられなさ:4カテゴリーに分類
a-1.寂しい時
a-2.辛い時
a-3.周囲と関わりをもたない時
a-4.周囲に人がいない場面で一人の時


b.つながり感:3カテゴリーに分類
b-1.他者からの受容・共感
b-2.信頼と相互サポート
b-3.同じもの(場面、気分、話題)の共有


c.結果(文章完成法の結果から6群に分類)
c-1.抱えた問題をひとりで引き受けらければならない孤独感が生じるときに「ひとりでいられない」と感じる
c-2.他者と気持ちを共有しそこで「つながり感」を求める


2.携帯電話利用による孤独感の誕生
2-1.つながりとしての携帯電話
a.大切な相手:いつでも連絡可能な状態にしておく
b.大事にしなくてもいい相手:話すことなく拒絶できる
⇒つながる相手を選択
⇒選択される自分に気付く


2-1-1.携帯電話の歴史的コンテクスト[1997.1~1998.7 参加者:大学生117~193名]
「電話をする用件」から「気楽な用件」へ
⇒進化とともに気軽なメディアへ
a.電気通信メディア:電話
b.文字メディア:手紙→Eメール
c.デジタルメディア:インターネット
d.対話メディア:おしゃべり→チャット


2-1-2.携帯電話の利用動機・目的の変化
パーソナル通信としての利用増加
a.1997年1月
 外出が多いので、外出時の連絡用に(55%)
 たまたま安く売っていた(35%)
 友人からの深夜電話を家族に迷惑かけずに受ける(34%)
b.1998年7月
 外出が多いので、外出時の連絡用に(59%)
 自分専用の電話が欲しかったので(33%)
 友人が持っていたから(29%)


2-1-3.行動・意識の変化[1995 参加者:大学生590名]
a.解放と束縛の二律背反
a-1.効用
  「いつでも連絡ができるという安心感がもてる」(93.1%)
  「連絡がつかずにイライラすることが減った」(71.2%)
a-2.負効用
  「束縛されているという感じが強くなった」(32.7%)
b.ネットワークの維持・強化に必要
 友人とのネットワーク維持・強化には携帯電話が重要
 「携帯電話を持っている人との結びつきが強くなった」(47.1%)


2-1-4.携帯電話が利用者相互の関係性に及ぼす影響
a.関係の契約・形成、修復・維持
a-1.あまり仲良くない人との関係を築く
a-2.疎遠関係の人との関係を修復・維持
b.関係の深化
 対面では言いづらいことを補完
c.関係の距離化
 あえて距離をおく(間をとる)
d.新たな関係性の発見・開発
 家庭内でメール利用による新たな関係性の発見


2-1-5.境界の無効化、人間関係の可視化
応答しなくてはいけない対象が増加
⇒一人でいることが難しい環境が日々構築

a.境界の無効化(関係の空間的非連続性)
 空間的に隔たっていれば即時の応答は求められない

 空間的距離がもたらす関係性の枠を無効化


∵基準リアリティの転倒
 文字は相手の存在を確かなものに実感させる

ⅰ.関係のリアリティ:
 相手との関係が確かなものであるときに感じる
ⅱ.対象のリアリティ:
 感覚器によって形成される外界のホントらしさ


b.人間関係の可視化
友人関係が携帯電話によって処理される
Ex1.アドレス帳:自分と相手を結ぶ=準対面的状況
   アドレス帳の整理:人間関係の整理
   関係を維持する努力を非対面関係状況でもする
Ex2.友人と一緒にいる状況が終わった後
   それぞれ別の空間の生活へ
↓ 境界の無効化
   携帯電話をオフにしないとつながりは消えない
   ⇒自分の外部で人間関係が確認できる


2-1-6.携帯電話利用による友人関係への影響[1973~2008 参加者:16歳以上の5400人]
「全面的関係」から「選択的関係」へ
a.近隣との付き合い方(図6)
a-1.全面的関係を望む人:減少
a-2.部分的関係を望む人:増加

b.居留守番型コミュケーション
 連絡をとる相手や直接会う相手の選択
 受けたくない相手からの通話   ⇒人間関係を
 受けたくないタイミング         峻別・選択


ⅰ.番号を教えている相手の平均数[1997.1~1998.7 参加者:大学生117~193名]
 平均26.0人(1997.7) → 42.8人(1998.7)
ⅱ.実際に連絡をとる相手
 日常的に顔を合わせる相手が中心
 (ex.親しい友人、彼氏・彼女、家族)
ⅲ.普段連絡を取り合っている友達の数:平均7.6人


2-2.自己評価としての携帯電話
携帯電話をもつから孤独を感じる
a.連絡が来る:友達の誰かが「私」を選択してくれた
 「誰がいつどれくらいの割合で」自分を評価してくれたか記録が残る
b.連絡が来ない:「私」は選ばれなかった
 受信がない:「偶然」か「意図的」かわからない
 ⇔選ばれなかったことは記録に残る
 ⇒孤独感につながる


cf.携帯電話登場以前
 いつ誰が「自分を思い起こしたか」察しようがないし、記録にも残らなかった。


3.携帯電話依存 -メール依存から考える

3-1.携帯メール依存の認識の特徴
a.利用スキルの上達:メールを打つのが非常に速い
b.暇つぶしの利用:何もすることがないとメールを打つ
c.過剰な利用:一日中メールをする
d.情動的な反応:着信がないとさびしい
e.脱対人コミュニケーション:
相手との対面を回避するためにメールを使う
f.利便性の認知:メールだと伝えられることがある


3-2.メール送信数が多い群[2008 参加者:大学生・専門学生 計105名]
つながりの感覚・群れ・不携帯不安・常時利用・つながり希求得点が高い
(不携帯不安以外ネオ・デジタルネイティブの特徴と類似)

⇒メールをよく用いる:
ひとりでいても他者とつながっている感覚を持つ
他者とのつながりを求めて携帯電話に依存


a.指標尺度
a-1.ひとりでいられる能力
孤独不安耐性・くつろぎ・つながりの感覚
a-2.友人関係
群れ・気遣い・不介入
a-3.ふれあい恐怖的心性
対人退却・関係調整不全
a-4.携帯電話依存
不携帯不安・常時利用・携帯脅迫・つながり希求


4.まとめ
4-1.なぜ携帯電話利用により孤独感が生まれたのか
全面的関係 → 選択的関係
連絡が来ない=選択されていない
⇒孤独感の誕生


4-2.なぜ携帯電話利用により孤独を恐れるのか
携帯電話:連絡する相手を選択できる
 →選択されないと連絡が来ない
 ⇒他者とのつながりが遮断されるのが分かる


携帯電話:友人と気軽に連絡をとれる
⇒青年期の孤独を埋める都合の良いメディア
青年期: 孤独を一人で抱えることができない
他者とのつながりを求める

⇒孤独を感じると分かっていても他者のつながりを求めるため携帯電話を離すことができない
⇒孤独感と葛藤しながら携帯電話を利用している


4-3.携帯電話依存による負の連鎖
ネオ・デジタルネイティブ:モバイル志向・つながり志向・メール依存傾向が高い(3より)


携帯電話利用:孤独感を生み出す

⇒依存するとさらに孤独感を生み、その孤独感を生めるためさらに依存する…その繰り返し
⇒ネオ・デジタルネイティブは孤独と携帯電話依存の負の連鎖に陥っているのではないか


5.今後の展望
携帯電話利用により、他者とコミュニケーションする機会や時間は増えたと言える。では、それに伴って自我とコミュニケーションする機会や時間は減少したといえるのか、自我コミュニケーションの定義を明確にしながら研究していく予定。


<参考文献・URL>
内田康人2004「若年層による「ケータイメール」のメディア実践に関する調査研究―二重の脱コンテクスト性という技術的特性を受けて―」育英短期大学研究紀要第 21 号
岡田努 2007「大学生における友人関係の類型と,適応及び自己の諸側面の発達の関連について」日本パーソナリティ心理学会 15 巻2号
岡田朋之・松田美佐・羽渕一代 1999「移動電話利用におけるメディア特性と対人関係―大学生を対象とした調査事例より―」情報通信学会年報 pp43-60
高橋利枝・本田量久・寺島拓幸 2008「デジタル・ネイティブとオーディエンス・エンゲージメントに関する一考察 -デジタル。メディアに関する大学生調査より」応用社会学研究 第50号 pp71-92
仲島一朗・姫野桂一・吉井博明 1990「移動電話の普及とその社会的意味」情報通信学会誌16号3巻pp79-92
橋元良明 2010「日本人の情報行動2010」東京大学出版会
藤本一男 2006「携帯電話コミュニケーションを考えるための考察―非連続的空間の拡大と可視化される人間関係―」作新学院大学人間文化学紀要 第4号 pp1-14
松田美佐 2011「大学生のスマートフォン利用」中央大学社会科学研究所年報 第16号 pp99-112
小田切亮・二俣詩織 2009「携帯メールにみる現代青年の対人関係及び携帯電話依存に関する研究」日

本パーソナリティ心理学会大会発表論文
http://ci.nii.ac.jp/els/110007674312.pdf?id=ART0009487299&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1368506463&cp

落合良行 1987「青年期における孤独感の構造」教育心理学年報 第26集 p174
http://ci.nii.ac.jp/els/110001895969.pdf?id=ART0002075132&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1368530439&cp

吉田加代子 2003「青年期の「ひとりでいられなさ」と「つながり感」:文章完成法・面接法を用いて」日本青年心理学会大会発表論文集 第18巻
http://ci.nii.ac.jp/els/110009483496.pdf?id=ART0009952206&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1368514397&cp

NHK 日本人の意識調査

http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/yoron/social/pdf/090401


(URL最終閲覧日 2013.5.14)


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