宇野ゼミぶろく!

法政大学社会学部宇野ゼミナール生によるブログ


テーマ:

担当:さあ

0.はじめに
0-1.前回の発表では対人コミュニケーションにおける非言語コミュニケーションについて研究した。今回は、言語コミュニケーションと、携帯電話によるコミュニケーション(モバイルコミュニケーション)について研究した。


0-2.メラビアンの法則について
(前回)携帯電話の進出により言語を使う機会が増え、
メラビアンの法則は変化するのでは?

(改正)メラビアンの法則
感情の総計= 顔による感情表現:55%
   +
     声による感情表現:38%
   +
    言葉による感情表現:7%
×(前回) 普段使われているコミュニケーションの割合
○(今回) 感情表現をする際の影響力

言語的行動:接近や関わり合いを示す重要な目安
言語的行動の量:会話の相手に対してどれほど好意を
もっているかを示す指数
⇒どれだけ携帯電話の普及によりNVCが減っても、
 感情表現をする際の影響力は変わらない


1.言語コミュニケーション
1-1.言語コミュニケーションの機能
a.恣意性:言語社会により異なる音声表現が用いられる
     意味と音声の結びつきは恣意的任意的
(ex.「犬」…日本語:inu 英語:dɔg 露語:sabak)
⇒言語伝達は多様で変化に富む
b.分離性:文→語の単位に分けられる
語→形態素の単位に分解される
(ex.[bıt](bit)と[bit](beat):
わずかな舌の位置等により異なる語と認定)
⇒言語単位を取り出すことが可能
c.生産性:文法規則に従って、文は無限に多様な表現力を持つ

cf.ピグマリオン効果:
肯定的なもので誉めることで人間の能力を引き出すこと


1-2.言語コミュニケーション能力
a.文法能力:文法的に正しい文を用いる能力
b.社会言語能力:
言語が使用される社会的な文脈を判断して適切な表現を用いる能力(ex.お互いの関係により言葉遣いをかえる)
c.談話能力:
文の羅列ではなく、意味のある談話・テクストを理解し、作り出す能力
d.方略的言語能力:
コミュニケーションの目的を目指してメッセージを伝達
する対処能力(ex.語彙や文法等を補って言い換えや繰り
返しや推測を行うこと)


1-3.敬語
1-3-1.敬語の種類
a.尊敬語:話題の人を高めて表現する語
→その人に敬意を表す
b.謙譲語:話題の人を低めて表現する語
     →聞き手や話題の人の相手に敬意を表す
c.丁寧語:聞き手に対する話し手の丁寧な態度を表わす語(ex.です、ます)
d.美化語:話し手が自分の言葉を上品できれいに表現する語(ex.お~、ご~)


1-3-2.敬語表現の心理
a.送り手の顧慮の対象
送り手が敬語を使用する場合:対象者に対する何らかの顧慮がある(ex.初対面の相手への気配り)


b.送り手の顧慮の観点
b-1.上下関係:自分と関係者の上下関係を評価
高地位の人に尊敬語や丁寧語を使い、自分側に関しては謙譲語を使用
b-2.親疎関係:自分と関係者の間の心理的な距離を評価
親しくない人や初対面の人に対しては丁寧語を使用
b-3.状況の公式性:公的な状況か私的な状況かを評価
公的であらたまった状況では丁寧語を使用
b-4.話題となることがらの重要性:
話題が重大であれば丁寧語を使用


1-3-3.敬語表現の効果
a.望ましくない使い方
a-1.使い方が不足していて不十分な場合
a-2.使い過ぎで過剰な場合
a-3.不適切な使用
b.望ましくない敬語表現の否定的な効果(受け手視点)
ⅰ.上下関係の観点
不十分:送り手を失礼な人間だと思う
過剰:送り手をきもちの悪い人間だと思う
ⅱ.親疎関係の観点
不十分:送り手をなれなれしいと思う
過剰:送り手をよそよそしく窮屈に感じる
ⅲ.状況の公式性の観点
不十分:送り手を礼儀知らずだと思う
過剰:送り手に窮屈な印象をもつ
ⅳ.話題となることがらの重大性の観点
不十分:送り手を配慮に欠けた人間だと感じる
過剰:送り手をことごとしい人間だと感じる


1-4.複雑な言語コミュニケーション
人生のすべては、人間の思想、感情を相互に伝達する媒体たる、言語活動の問題に帰着する (ヘンリー・ジェイムズ)
=人間の直面している問題の全てが言葉の問題である
人間関係を育む ⇔  人間関係を断ち切る
文明・文化を築く ⇔  傷つけあう
お互いに協力する ⇔  命を失う
⇒・言葉1つで大変な問題が起こる
・言語は非常に複雑
・実際のコミュニケーション場面や生きた人間との関係の中だと複雑さは増す


2.モバイルコミュニケーション
2-1.携帯電話史
a.主な携帯電話史
1970年  携帯電話登場(日本万国博覧会にて)
1987年  携帯可能なサービスの開始
1990年  i-mode・EZウェブ・J-スカイ開始
      →電子メールの利用が急増
2000年代 スマートフォン登場


b.普及率の推移
1989年(携帯可能なサービスが開始された当初):0.2%
→2011年:93.3%


2-2.携帯電話の性質
a.自己の一部性
a-1.パーソナライズ:何かを個人用にカスタマイズする(ex.待受画面や着信音をかえる等)
常に持ち運ぶため人目に触れる→ファッションの一部
⇒自己の延長

a-2.外部記憶装置 
ⅰ.57.4%の人が携帯のメモ機能を利用
ⅱ常に持ち運ぶ→いつでもどこでもメモをとれる
⇒人間の記憶力を補完するツール
a-3.私的情報の程度
ⅰ.携帯は私的情報が満載
ⅱ.33.9%の人が携帯内の情報を見せたくないと報告
⇒自分の心をのぞき見されるような気分に近い
⇒記憶機能を持つ外的なIT機器
  ↓
自分の身体の一部又は身体と一体となった内的記憶


b.ユビキタス性:「いつでも」「どこでも」
b-1.携帯電話を持ち歩く
→「いつでも」「どこでも」離れた相手とコミュニケーションを行う可能性がある(両者とも持っている場合)
b-2.突然の電話
(固定電話)日常の生活空間とは切り離された別の親密な空間をつくる
(携帯電話)日常の生活空間との関わりの中で組み立てられる


2-3.携帯電話普及による影響
2-3-1.対人関係への影響
a.家族との結束強化
65.1%の人が家族との結束が強くなったと報告
a-1.カエルコール(1985年NTTのCM)
「今から帰ります」という家族への電話
⇒家族をやきもきさせることの減少
a-2.円滑で安心な生活のサポート
所在確認が容易に行えるようになった(ex.小田急あんしんグーパス)
⇔「プチ家出」や「出歩き」の増加


b.友人との結束強化
87.3%の人が友人との結束が強くなったと報告
b-1.年齢別にみると右肩下がりの傾向
  10-20代は友人との結びつきにおける携帯の役割を高く評価
⇒若者が友人と頻繁にメールをするなかで、携帯のインパクトを日常的に感じている


c.特殊な友人関係
c-1.メル友:メールを媒介とした友人関係
「ペンフレンド」や「ベル友」に相当
c-2.メル友がいる人の全体の割合:15.6%
  ⇒少ないながらも、メル友という特殊な友人関係が存在することの証明になっている
⇒携帯を媒介にして新しいタイプの人間関係が誕生


2-3-2.言語能力による変化
2-3-2-1.言語能力の測定(2005年実施)
調査参加者:12歳から76歳までの1,041人
a.漢字単語の読み能力テスト
制限時間10分以内に漢字単語100語の読みを仮名で回答
b.語彙数推定テスト
50項目の単語リストを提示しそれらが分かるか回答


2-3-2-2.結果
漢字単語の読み能力テストの得点や推定語彙数が高い:点数が高い
a.公共空間でのマナー遵守
a-1. 点数が高い:・公共交通機関の中で通話する頻度が低い
・メールや通話の着信音を鳴らさない
・公共交通機関内ではメールを用いる
a-2.「家のなか」という私的空間でのみ許される行動
(ex.化粧、地べたのすわりこみ)
 「家のそと」で行われている
  ⇒公共空間と私的空間との区別がほぼない人の増加


b.情緒的メッセージ交換
b-1.点数が高い:携帯の利用は通話が主でない
(=音声よりも文字のコミュニケーションを行う)
b-2.文字によるコミュニケーション
→感情的・情報的メッセージが伝わりにくい
  送り手:受け手がどのような感情を引き起こすか予測を誤りやすい
  受け手:送り手の意図を誤解しやすい
・音声によるコミュニケーションを行う傾向
  ⇒情緒的メッセージの交換を行う傾向と捉え直す
b-3.絵文字:感情の表出や表現の側面が強い
  ⇒私的で情緒的なメッセージを伝える傾向が強い
⇒点数が高い:・情緒的メッセージを行う傾向が少ない
       (=絵文字をあまり使わない)


c.仲間との結びつき
点数が低い:携帯が常時接続可能状態・メールが来るとすぐに返答する・メールが来ないと不安を感じる・不安感が生じるまでの時間が短い・メールで知り合った友人数が多い


d.携帯のパーソナライズ
d-1.点数が高い:
アドレス帳の登録数が多い・交流範囲が広い・メールによるストレス感が強い
d-2.アドレス帳:
個人が誰と関係をもっているのかという個人情報
⇒個人情報を携帯に登録すること:「パーソナライズ」
d-3.携帯を自分の身体の一部と感じることの裏付け
持ち主の意志とは無関係にメール受信や着信をする
←体の一部が意のままにならないとストレスを感じる


e.携帯の使いこなし
点数が高い:インターネットやメール等をする


f.携帯に対する肯定感
携帯で常につながる→時間と労力が必要
f-1.点数が低い:仲間と常につながるための時間と労力は苦にならない
(メールによるストレスが少ないため)
f-2.「3-3-1.対人関係への影響」より知ることができる
⇒点数が低い:携帯に対する肯定感が高い
f-3.携帯の使いこなし:点数が高い方が多くの機能を使いこなしている
⇔携帯に対する肯定感は低い
⇒自己をとりまくコミュニケーション環境に満足していない
点数が低い:メールや通話など限られた機能を使う
⇒それによるコミュニケーション環境に満足している


2-3-2-3.まとめ
a.言語能力によって携帯の使用様態が異なる
b.携帯の捉え方にも違いがある


2-3-3.孤独に対する恐怖(2001年調査)
孤独感:社会的関係の達成水準と願望水準の差があるときに生ずる不快感
a.孤独感とメール利用頻度
メール頻度が高い:孤独感が低い
⇒社会的関係の水準が高い
ex1.メール利用頻度と友人との活動(食事・遊び)頻度
⇒メール利用の高い群:活動頻度が多い
ex2.メールの利用頻度と友人数
⇒メール利用の高い群:友人の数が多い
⇒メールの利用頻度が多い:
孤独感が低い・外交的・対面関係が活発・友人が多い


b.メールと孤独恐怖
b-1.孤独恐怖に対する4つの因子
  ・孤独耐性欠如(ex.寂しがりや)
・疎外恐怖(ex.まわりに合わせる)
・深い交際志向(ex.友達ほど大事なものはない)
・広い交際志向(ex.友達は多ければ多いほどいい)
b-2.メールの利用頻度との関係(pp)
ⅰ.メールの利用頻度が高い:
孤独耐性欠如の傾向が高い・孤独感が低い・友人が多い
⇒孤立を恐れる心理がメールの利用頻度を増大させる
ⅱ.友人との交遊頻度が多い・友人が多い:孤独感が低い
⇒孤独恐怖との関連性がある
メール利用頻度が高い:孤独感が低い傾向
⇒それほどの影響はない
⇒孤独感の低減:対面的接触が重要(=NVCが必要)
        メールだけでは効果的でない

c.まとめ
携帯電話を頻繁に使う:
・孤独を過度に恐れている
・人間関係の空白を埋めるため 
・活発な対人関係を取り結ぶ
⇒孤独を回避


2-3-4.子どもへの影響
子どもの携帯保有率(2011):携帯が身近にある状況
小学生:30.6%  中学生:47.8%  高校生:92.3%

a.学校裏サイト:
小中高生たちが自分の学校名で開設した、インターネット上の情報交換の場
a-1.ネット攻撃(2009年調査)
・28.2%が掲示板の書き込みを不愉快だと思っている
・76.1%が誰からの攻撃なのか見当がついている
a-2.傷ついた経験とそのトラウマ
・48.0%が攻撃されて傷ついている
・13.9%がそれにより自信を失くしている
a-3.不登校傾向
・不登校傾向にある子の17.2%が攻撃されたことがある
・不登校傾向にある子の25.7%がそれにより自信を失くしている
⇒・不登校傾向にある子は他の子に比べて裏サイトの攻撃によって自信をなくしている
 ・不登校傾向はネット攻撃が原因で発生したケースもありうる


b.ネットいじめ
特徴:手段がインターネット・発信の広がり・場所が不特定・記録性がある・加害者の特定が困難
Ex.神戸市高3男子自殺事件
男子生徒は07年7月に自殺。生徒の名前を冠したサイトが勝手に作られ、住所や電話番号が書き込まれた上に、裸の写真まで掲載されていた。加害生徒は「うそ1回につき罰金1万円」というルールを作り、再三メールで現金を要求していた。要求額は計50万円近くに上り、被害生徒は学校に隠れてアルバイトをしていた。ネットいじめは本人が知らないところで中傷されるのが特徴で、学校側が把握しにくい。このケースで学校は発覚直後の会見で「登下校も一緒で仲良しに見えた」と説明した。
(2008年毎日新聞 北海道朝刊 28貢より一部抜粋)


b-1.行為の記録:
いじめ写真やいじめ動画を撮影し、それをサイトに掲載したりメールでやりとりするという手法
←携帯に写真や動画の撮影機能が搭載されたことが要因
b-2.晒し:
個人情報をネット上に本人の許可なく掲載すること
加害者の情報も晒されネット上で攻撃される
b-3.数の暴力
どこの誰が書いたかわからない情報と向き合い、特定の者からの大量の嫌がらせを受けることになる
⇒携帯に関わる深刻な事件が増えている


4.まとめ・今後の展望
 携帯電話の登場は私たちの生活を変えたと確実に言える。良いところもあるが、問題点の方がかなり多い。携帯の使い方について指導している学校が多いが、それだけでなく、コミュニケーションの方法を見直すことも必要だと改めて実感した。 今回は携帯電話による影響しか研究することができなかったので、インターネットによる影響を調べるとともに、デジタルネイティブのコミュニケーションについて研究していく予定。


<参考文献・URL>
日本コミュニケーション学会 橋本満弘 石井敏 編著 1993「コミュニケーション論入門」桐原書店
深田博己 1998「インターパーソナルコミュニケーション」北大路書房
A.Mehrabian著 西田司・津田幸男・岡村輝人・山口常夫 共訳 1986「非言語コミュニケーション」聖文社
山崎敬一2006「モバイルコミュニケーション」大修館書店
渡辺久義 1978「ヘンリー・ジェイムズの言説」北星堂書店
小林哲夫・天野成昭・正高信男 2007「モバイル社会の現状と行方 ―利用実態にもとづく光と影」NTT出版
辻大介 2006「つながりの不安と携帯メール」関西大学社会学部紀要 37巻2号pp43-52
中村功 2003「携帯メールと孤独」松山大学論集 14巻6号pp85-100
深谷昌志・深谷和子・高旗正人 2010「ユビキタス社会の中での子どもの成長―ケータイ時代を生きる子どもたち」ハーベスト社
2008 毎日新聞北海道朝刊 28貢
携帯電話の普及率推移をグラフ化してみる(2012年版)
http://www.garbagenews.net/archives/1927460.html
携帯電話の歴史/年代流行
http://nendai-ryuukou.com/keitai/
懐かしCM NTTカエルコール―YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=E3MObx7-1J4
携帯電話の利用の実態 携帯電話の所有率 ―子供のICT利用実態調査
http://benesse.jp/berd/center/open/report/ict_riyou/hon/hon1_1.html
(最終閲覧日 2012.11.13)

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