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夕暮れの中で、少しずつ二人の影が伸びていく。
永遠にも感じられる時間、喧騒に包まれていたその空間も、今は二人が立つだけだった。

…また、会えるよね…

少女はそう呟いた。
返事は帰ってこない。

大丈夫…また必ず会えるから…だから…泣かないで…

少女はそう呟くと、ゆっくりと膝を折り、目の前の男にその細い身体を委ねた。
まるで人形のような白い肌に、また一つ男の頬をつたって雫が落ちる。

…おやすみ…なさい…

それが、少女がこの世界で発した最後の言葉。
地平線の向こう、日が沈むのと同時に、一つの命が天に還る。
男は少女の命が天に還るのを見送り、その亡骸を抱き上げて、力の限り叫んだ。
その周りには、無数の屍が山を成していた。
彼の咆哮は天を貫き、涙は地を濡らす。
夜の帳が落ち、星が空を埋めても、彼の咆哮と涙が止まる事は無かった。



東の空からとっくに陽は昇っている。
昨夜、カーテンを閉め忘れたのだろうか、直射日光が降り注ぐ部屋の中で、少年は身体を起こしまだ重い瞼を擦る。

「…何だよ、今の夢…」

寝癖が逆立った頭をボリボリと書きながら、彼は呟いた。

「何かやけにリアリティのある夢だったなあ。明晰夢って言うんだっけか?」

大アクビをした後、彼は今しがたまでいた夢の世界の出来事をまだぼけっとする頭の中で反芻する。
彼はその夢の中、夕焼けに包まれながら一人の少女と向かい合っていた。
何か声をかけようとするが、思ったように言葉を発する事が出来ない。
何かを言わなくちゃいけないのに、それはとても大切な事なのに、言葉を発する事が出来ない。
代わりと言ってはなんだが、ただただ涙が溢れてくる。
そんな彼に、向かい合う少女は微笑みながら

…また会えるよね…

と呟いた。
その後、自分に寄り掛かるように倒れた少女は、自分の腕の中で息をひきとった。

「また会えるよね、か。あんな可愛い子にそんな事、マジで言われてみたいもんだねえ…」

思った事を素直に口に出しながら、彼は何と無く上に向かって腕を伸ばす。
その手をゆっくりと目で追う途中、壁にかかった時計が目に入る。

「…んげっ!遅刻だ!」

針は、容赦無く定期的に時を刻んでいく。
時刻は間も無く10時を回ろうとしていた。

「くそっ、一限テストなのに!」

彼は頭に帽子を被り、ひったくるようにカバンを掴むと、ヨレヨレのTシャツにハーフパンツという出で立ちで大慌てで部屋を飛び出した。
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