大不況の到来に備えよ!
前回に引き続き日本経済の今後の推移を予想してみたい。新型コロナウイルスの猖獗で日本は勿論世界が怯え動揺し、その結果経済活動は低迷している。日本経済についても同様で明るい展望は見えてこない。昨年、10月ほとんどの経済動向指数が下降している中で消費税の増税を安倍内閣は強行した。合理的に考えれば、この時期やるべきことは消費税の減税による景気浮揚であった。これと真反対の増税などは狂気の沙汰というべきであった。この増税の結果、10ー12月のGDP統計は前期比で年率マイナス6.3%、一年で約35兆円GDPが減少するという悲惨な状態になっているようだ。
消費税に関しては情報が色々あり本当のことが分かりにくい。6月には食品等にかけられている8%の軽減税率が撤廃され本来の10%になるらしい。これは実質的には増税となる。8月にはオリンピックがあるので、外国人の来訪も増え外貨の流入があり、多少救われるがオリンピックが終わった後が大変心配である。前回の第18回東京オリンピックではオリンピック終了後大不況が到来し企業倒産が3倍に増えたという記憶がある。今回は新型コロナウイルスもあり前回以上の厳しい環境といえよう。これを避けるため今から十分な対策を講じておかねばならぬが、現実には何の対策も立てられていないようだ。景気対策として考えられるのは十分な規模の財政出動であるが、現在政府が進めているプライマリーバランス達成と相反するもので、このままでは大規模の財政出動実現の可能性はないようだ。無策のまま推移すれば今年の年末には大不況が到来し、日本は残念ながら先進国から脱落し発展途上国に転落することが避けられないといえば言い過ぎであろうか。
先進国と発展途上国の違いは
いろいろ定義の仕方はあるが、先進国とは「自国の需要を、外国に頼らず自国の供給力で賄うことができる国」、発展途上国とは「自国の需要を自国の供給力で賄えず外国に依存する国」と定義できる。日本は少子高齢化で働き手が不足している。そこで安易に外国人に頼り移民を入れれば、先の定義から先進国から脱落することとなる。これを避けるためには投資(設備・技術・人材教育投資等)を行い生産性を上げる必要がある。人手不足はこれで解消される。
オリンピックから年末まで先進国にとどまるため十分な投資を行わねばならない。現在の深刻なデフレの状態では民間企業・個人が投資に踏み込む可能性は極めて小さい。頼れるのは政府しかない。この肝心な政府がプライマリバランスを2025年まで達成する目標に縛られていれば巨額の財政出動など望むべくもない。財政出動以外に景気浮揚を実現する方策はあるのだろうか?
6月の軽減税率廃止という実質的増税により、個人消費は一段と冷え込むことは避けられまい。7~8月にかけてのオリンピックで外国人の来日が増え、多少救われるがオリンピックが終了した時どうなるか想像するだけで暗澹とした気分になる。
巨額の財政赤字で財政が破綻するという大嘘
政府が財政出動を渋る理由は財政破綻の恐怖のようである。最近、アメリカからMMT理論が入ってきたが、この理論で政府が財政出動を恐れる理由が全く根拠のないことが明らかにされた。この理論によれば債務と債権は裏表の関係で政府の債務は国民の債権であるという。政府の債務が増えれば増えるほど国民が豊かになるということらしい。政府が赤字を減らせば反対側で国民が貧乏になるということである。国債発行残(政府の債務)が一時一千兆円をこしたと大騒ぎをしていたが、現在これを騒ぐ者はいない。金融緩和のため日銀が市場から国債を買い通貨を発行し、現在国債が不足気味であるらしい。そのため国債の価格が上がり(国債価格が上がると反対に金利は低下)その結果マイナス金利が出現した。現在、国債約400兆円を日銀が買い入れている。日銀が国債を買い取ることをマネタイゼーション(国債の通貨化)と言う。政府と日銀は親子関係(連結決算の対象)で日銀が政府発行の国債を買い取れば国債は実質的に貨幣と同じとなる(日銀は政府に既発国債の買い取りや金利の支払いを求めないから)
財政破綻の幻影が消えれば、必要な財政出動は何の問題もなく可能となる筈。日本が先進国から転落せぬよう必要な財政出動を遅滞なく実行してもらいたいと切に願うものである。 R2-2-22記