一年目

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今はまだ一人にはなれない
事あるごとに口にするあなたの「好き」が痛い
視線は引っ掛かる事なく、するりと、床に落とされる
浮かんだ点が滲んで、曖昧な疑問符になる

また一枚、薄水色が剥がれた冬の空は
一年前とは、きっと何か違うのだろう
僅かに、でも決定的に

誤魔化すように二人してめいいっぱいはしゃいだ週末は
なんだか搾り滓のような疲れが残る

これを抱えたままで、まだもう少し
もう少し歩いていこうと思う
情けないあなたと狡猾な私
頼りない二人
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かなう青

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ソーダの味がする抗不安剤
まだ、あと少しだけ甘えていたい

時間は止まったり進んだりして
気がつけばもうこんな時間
お腹はすかない
空っぽのはずの内臓が重たくて

甘くて、少しほろ苦い
そんな恋がしたかった
そんな一方的な伝え方で
猫のように可愛がられたかった

自分が安っぽくて、薄っぺらな女だという事は
一度忘れたふりをして
溺れていたかったのに
いたかったのに

夢の中とは裏腹
冷たいあなたが好きだった
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同じように

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亀裂の入った心を、半分
割り捨てたら
生きられた
悲しみも半分、幸せも半分
だけど、生きられた

傷は治るものなのだと
痛いのは今だけだと
ずっと言い聞かせてきた
それでも、一度割れたものは
些細なことですぐにまた崩れる

そうだったね、

陽は沈み、また昇るけれど
雨は止み、地は育つけれど
花は枯れ、種を生むけれど

季節が巡り、実を結び
私はまた同じように笑うけれど
根が張り、息は苦しくなる
また同じように眠るけれど

また同じように
生きることはどうしてこれ程に難しくて
生きることはどうしてこれ程に何もない

何もないのに
また同じように、同じように
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天気予報

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以前は
空を見上げることなんてしなかった。
その日の天気すらろくに知らなかった。
雨が降り出すその時までは気にも止めなかった。

今現在
気分がどうしようもなく落ち込んで
何もかもが億劫で
生きることへの希望が見出せなくなったら
出来るだけ太陽の光を浴びること、
まるでお母さんのような優しい目をした人の言葉を
思い出す。思い出すのだけど
光すら、見たいと思えない時だってある。

カーテンの隙間から漏れる
あたたかな陽射しは
私の中の闇を照らし出すようで
怖かった。

いつもより少しだけ早起きしよう。
あたたかいスープを飲もう。
ささやかな朝食はささやかな幸せの始まり。
涙の匂いが染み付いた布団を干して
今日はどこかに出かけよう。

ねぇ、もう曇り空は見たくないよ。

満月旅行

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いつか満ち足りる日が訪れるのでしょうか
そして二人でロケットに飛び乗り、旅立つ

音のひとつもこぼれないのだから
時間の流れだって忘れられるはず

かすかに太陽の光が
未来を指し示す
この地が影そのものになるのなら
過去は永遠に続くでしょう

今夜も二人で寄り添い
憧れの地を描く
夢を見る
この広い宇宙から何処へでも

満月を見上げれば
過去が未来へと繋がる

いつかきっと、そんな二人が
地球からだって見える

漸進する夏

テーマ:
それでもこの毎日に
Zippoに油をさす
明日を超えればと
あなたが微笑う

そのうちに忘れる事も出来るだろう
この夏もいつしか過ぎ去る
思い出を引きちぎり
一年が経つ

どうしてここに立っているのだろう
どうやってここまで辿り着いたのだろう
あなたを手繰り寄せて
その息づきの中で

こうして愛を手に入れたんだな

あなたが微笑う

忘れてしまわないように
この季節に
ようやく辿り着いた毎日に
明日を超えればと願い

油の匂いが絡みつく、夏の午後

エレウテリア

テーマ:


永遠に枯れないと思われていた花の
枯れゆく姿を愛でていた
彼に纏わる記憶の波を辿り
やがて淋しさは消えてなくなり

いつまでもこうして眺めているさ
この庭には何でもあるから

悲しくなるのは抱かれていたあの瞬間だけ
目を閉じれば日常は記憶に溶ける
痛みは雫になる
それを誰かが嘘だと言う

目覚めた窓際には白い陽射しと
散った花弁と朝露と
鼻の先で笑った戯曲と
然して変わりのない日々

いつまでもこうして眺めているさ
嬉しくとも悲しくとも
決して枯れない花の
かつて呼ばれた名の、エレウテリア

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GRAPEVINE「エレウテリア」より
忘れていたいつかの記憶

私たち

テーマ:
身体で身体を支配しようとした
あなたの匂いがついて離れない
散々ひっついて甘えた日の一人の帰り道
人ごみの中で、身体は半分にちぎれたように感じた

元々はひとつだったんだから、私たち
けれど一度切り離されたら最後
もう別物なんだよ
当たり前だよ

あの頃信じていたアダムとイヴの話は
多分もうどうでもいいのだろう、あなたには
原罪の意識から解き放たれた私たちは
どこまでも自由ばかりを愛していくのだろう

大丈夫だ、誰かが言っていた通り
淋しいくらいがちょうどいいんだ、私たち

ハイウェイ(めも)

テーマ:
雨のハイウェイは心地良い沈黙
ちょうど運転席と助手席との間くらいの
もどかしい距離感を埋める
懐かしい曲ばかりかかる深夜のFM

雨粒が無数に貼り付いた窓から覗ける
街は人工的なネオンの光でいっぱいで
まるで季節外れのクリスマスツリー
綺麗、ひとり言みたいに言うけれど

このまま二人で何処まで行こうか
残りわずかなガソリンで
あなたとなら夜の果てまで
こっそりと願っていたんだよ

このまま二人は何処に向かうのか
残りわずかな猶予の中
あなたとなら次の季節も
あなたもそう願っているなら

延々とこの道が続けば、続けばと
次のページを繰るように、ゆっくりと

雪と汗

テーマ:
雪が降り積もるだけで
街中から静けさが聞こえてくるのはどうして

昨日通り過ぎた雨が
夜明け前にはすっかり凍りついて
ただ触れている胸の中心だけが溶けて
そこに雫を落とした

ふやけた皮膚が剥がれてしまう
言葉にして表せない
居心地の悪さを覚えて
切り落とした断面がどうしようもなく寒い

今夜も噛み締めるように
何度でもなぞるあなたとの思い出
止め処なく流れ出す体温が
首筋の汗が鬱陶しかった

次の朝目覚めた時には何もない
閉じた目蓋を縁取る睫毛もあの温もりも
雪が溶けて水になるように
すべて幻に思えるだろう

身体の中を流れる雫に
この冬に決着をつける時が来た
この雨が上がる頃には
春が目覚めるのだから