記憶の中でのあたしは
いつも彼の服の裾を掴んで
行かないで、って涙ぐんで見つめていた
彼は少し困ったような表情で
でも最後には微笑んで
あたしの頭を撫でてくれていたよね
そうやって小さくて情けないあたしを
笑って許してくれていた
しょうがない奴だなって言いながら
抱きしめてくれていた

だけど今はもう思い出せないよ
彼が誰だったのかすら

ただ今も、何度でも求めてしまう
抱きしめてくれた強い腕の温度を思い出そうとする

だけどわかってしまうんだ
どうせ離れていっちゃうんでしょう
あなたは優しいから
あたしの泣き顔が苦手なんだね

また思わず手を伸ばそうとするけど
さすがに躊躇ってしまうよ

ねぇだから、どうか気付いて
あたしの淋しさに
振り向いてくれることを期待しながら
もう何も言えないよ

本当は躊躇いがちなこの手を取って
笑って応えて欲しいよ、もう一度だけ

こんなあたしを笑って
好きだと言って欲しいよ