拝啓、青空

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四月のよく晴れた日
教室の窓際の席で頬杖をつきながら
虚ろなその目にさす光は
誰かが悪戯に映した空

悲しい影を落とした睫毛を縁取る萌黄
かたく結ばれた唇に新しい桜色
そのバックグラウンドに
切り取って貼付けるよ、空色

電車に乗って、遠くの街まで
あなたの知らない街まで
もう一人になる準備はできたかな
顔をあげれば、窓の向こう側は

拝啓、あの青空
あなたも見ていますか
もう確かめる術はないけれど
きっと笑っていられるように

やわらかな風が
まぶたを優しく撫でて
奪った熱をあなたに届けて
元気にやってるよと、この手紙を
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情けない

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記憶の中でのあたしは
いつも彼の服の裾を掴んで
行かないで、って涙ぐんで見つめていた
彼は少し困ったような表情で
でも最後には微笑んで
あたしの頭を撫でてくれていたよね
そうやって小さくて情けないあたしを
笑って許してくれていた
しょうがない奴だなって言いながら
抱きしめてくれていた

だけど今はもう思い出せないよ
彼が誰だったのかすら

ただ今も、何度でも求めてしまう
抱きしめてくれた強い腕の温度を思い出そうとする

だけどわかってしまうんだ
どうせ離れていっちゃうんでしょう
あなたは優しいから
あたしの泣き顔が苦手なんだね

また思わず手を伸ばそうとするけど
さすがに躊躇ってしまうよ

ねぇだから、どうか気付いて
あたしの淋しさに
振り向いてくれることを期待しながら
もう何も言えないよ

本当は躊躇いがちなこの手を取って
笑って応えて欲しいよ、もう一度だけ

こんなあたしを笑って
好きだと言って欲しいよ
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不知火

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最初から最後まで中途半端なくせに
来年のクリスマスの話なんかしてしまったから
たったそれだけのことで切なくなるのをどうせ知らないから
今、どうしているのかな、なんて、考えたり伝えようとしたりするのは
君がするべきことじゃないんだ
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覚えの日常

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急にコーラが飲みたくなったと君が言うから
雨の中、傘もささずに
近所のコインパーキングにある自販機まで
一緒に走った

それだけでただなんか笑えてたんだ

湿った煙草の先

久しぶりの強い口当たり
朝まで残った、気の抜けたコーラ

僕はまだ傘のひとつすら持たずに
この部屋で一人生活を続けてるよ

君の靴下はベランダにほったらかされて今も雨に濡れている
君のピンクの歯ブラシは水気を失って黄ばんできている

せめていなくなるのなら
思い出も一緒に引き取ってはくれないか
好きだよ、という言葉も過去形にするなりして撤回してくれないか
何も言わずにいなくなるなんて、君はいつもずるい

雨に濡らされた黒いアスファルトを辿り
風が生まれる場所にやがて続く
今日もここで呼ぶのを躊躇って
バイクのエンジン音なんかに、いちいち振り向くよ

君がいつ帰ってきてもいいように
郵便ポストに鍵を隠したままで

僕は今も


だけど雨がまた上がれば
容赦なく春が近づいてくるみたいで

それなのに、僕は今も

恋人ごっこ。

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会いにきて。そう言ってねだるのはもうやめよう。
連絡がくるのを待っているのにも疲れたら
きっとそのうち、忘れられるはず。
でも、今夜この淋しさを抱えたまま一人で眠れない。

たとえ私にとってあなたがかけがえのない存在だとしても
あなたにとって私はたくさんあるうちのたったひとつだから。

もうどうしたらいいのかわからないよ。
後には退けないし、前にも進めない。

頭の中を駆け巡る、遠い過去の悲しいことも
つい昨日あった悲しいことも
かつて信じていた幸せも、期待も
何が嘘で何が本当か、わからない。わかりたくない。

あなたの傍で、たくさん笑った私
たくさん泣いた私
怒った私、すねたり甘えたりした私
もう全部ただの夢か何かだと思って

大好きだったんだよ、本当に
そう言って去ってくれれば、いいよ。

春の嵐

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春の息づき
雨の混じった強い風がさっと吹いて
熱も涙も消し去ってくれる
喉元と胸を行き来する
この声ももう忘れられたんだ
張り裂けるように泣くんだね、春は
そうして待ち人との記憶を霞ませているのでしょ
薄桃色の靄が晴れた頃には
笑っているのかな、二人、それぞれ別の日常で
そんな悲しい話すら、思い出すことなく

スイーツと乙女

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宝石みたいにきらきら輝く赤い果実
刻一刻ととろけていくチョコレート
香ばしい香りのバターもカラメルも
今だけはあたしを置いてきぼりにして
なだれ落ちる髪がどうしようもなく悲しくさせるんだ

色とりどりの光の反射
眩しい水色、紫、赤、みどり
そして透明の見えない涙の通り道に
白い頬を人知れず帰っていく
こんなところでは泣くわけにはいかないから
ウォータープルーフで塗りたくったドールアイ
憂鬱そうなまばたきのたびに零れそうになる
誰にも聞かせられないこの弱音が本音だよ

窓のないここから空は見えない
今、雨が降っているのか、陽射しはあるのか
もう夜はすぐそこまで来ているのか
星空はどこに、真昼の次は東に西に

全て愛おしさの中で眠れない夜に見る記憶のように
粉々に砕けてもなお光り、その存在を主張する

どこまでも透明な瞳の奥
甘くささやく記憶と憂鬱な光
もうすぐ春がやってくるなんて
まるでお伽話みたいに、現実味がないよ

ちょっと弱音

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自分のことが嫌いになってしまう、そんな瞬間が多過ぎる… これでもかってくらいに。
それでもこんな毎日、続けるしかないのかぁ…。疲れた。

氾濫

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この冷たい雨のように
言葉が絶えず降ってきて
溢れ出す、氾濫する


孤独、不安、恐怖、焦燥、
淋しさ、愛おしさ、
戸惑い、嘘、
記憶、
夢、幻想、
光、幸せ、
現実は辛いことばかりで、…
目眩、まどろみ、落ちる、落ちる、堕ちる…

手を伸ばす、そこには何もないのに

…?

移り気な雨

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携帯電話握り締めたって
思い出を温め合ったって
何度も好きだって確かめたって
繋がっちゃいないさ、最初から
当たり前のことだって分かってる
その当たり前が今更こんなにも痛いこと
淋しがりなあたしの頭を笑って撫でる
あなたなんて最初からいなかった

冷たい雨が
もうじき春を連れてくるよ
いずれ別れが来るのも知っているから
今日は相合傘をして出かけよう