長編大作のはなし

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みんなきらい。

今は形のないものだけ辛うじて許せる
音楽、時間の流れ、温もり
死んでしまったラブストーリーをまた眺めて
割れた心の破片がきらきら輝く縁に
流れていく現在が彩る

限りない
途方もない

あたしはあなたがきらい
あなたみたいな人間にはなりたくない

思い出はただの思い出しかなくて
手を伸ばすのが億劫になるような恋だった

魔法が解けたならどこに行きたい?
理解のできなかったあなたの優しさに
理解されなかったあたしの弱さに
飽きもせず結び直す情熱の最中に、連れていって
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おやすみのキス

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きっとまだ誰のこころにも触れていないから
幸福を抱いて眠る、今夜

たった一度でも私にキスをくれた
ありがとう
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day life

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パニックから立ち直るのも早くなった。
けど、冷静になって、こうして人間として生まれたことをまた後悔している。
食事という習慣すら欠如した生活。
睡眠と、音楽と言葉、インターネット。
更新される日付。無感覚の中。
財布の中の、少しのお金。
それでも伸びていく、爪や髪の毛が鬱陶しい。

ACOはきっとこんな世界観の中でも
曲を書いて
起き上がって歌を録ったのか。
それでも生きていくのか。

死んでいい人間なんていないと、朦朧とした意識の中で言われた。
あなたは結局私から離れていったけど
今は元気にしているでしょうか。
私は。

私はやっぱり言葉を綴っています。
やっぱり大切な人がいます。

煙草を一本。ミルクティーを一口。
シャワーを浴びて、何か食べようか。
これでもまだ正常に機能している、ここが現実界だから。
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愛しき生活

テーマ:


朝、目が覚めたらカーテンを開けて陽の光を浴びること
雨降りの日にはベランダに出て、物干し竿から垂れ落ちる雫を数えること
春には苺、初夏には桃、真夏に西瓜、秋には梨や柿、季節の果実を食べること
薄桃色の花が咲く木の下で、月を眺めること

愛しき生活にはそれぞれのささやかな愉しみがあって
僕はその一滴、一滴を大切にして書き留めていく

昨日は星が十、見えました
赤い一等星、あれは僕の情熱のようで
蒼い二等星、あれは僕の安穏のようで
僕にはその輝きの一つ一つが誰かへの気持ちに似ているように思えました

元気にしていますでしょうか
たくさんの、もう届けられない手紙が
今年も堆く積み重なり
膨大な過去を燃やせば、未来が少し見えたような、そんな気がしたのでした

もうすぐに、冬が来るでしょう
オレンジ色の淋しげな光が揺れて
僕は浅い眠りの中、いつか巡り会う君へ
届けられる、いくつかの大切なことを

安穏

テーマ:



まだ少し
言葉を交わすくらいの気力が残っているみたいだ
それなら上等だ
もう一度そっと寄り添ってみても
いいだろうか

恋の魔法を使わずに
触れる方法を考えて
温もりを求めてみても
いいだろうか

疲れているみたいだ
私はあなたが望まない人間になった
もうあの頃とは違う季節の風を感じながら
一人ぼっちになった
ベランダで
思い出していた

私には理解できなかった
いろいろな話
「祝婚歌」の言葉を
反芻していた

完璧なことは不自然なことだと嘯いている方がいい、だって


狭い個室
ユングの本
たくさんの優しい
愛の言葉

だめな私に効く、唯一の薬

無人の朝

テーマ:
気がつけばまた自分とは無関係な物語を願っています
夜が明けることに無感覚でいる毎日です
なにも不自由なことはないはずなのに
虚ろな目でその先にあるものを追っています


心の中にずっとあった誰かの影も立ち去って
それでもこの存在が人の思いを掻き乱しているのなら、と
無意味な妄想を抱いて今日も
今日も太陽とともに眠りに就きます


目が覚めてしまうのが恐怖だから
一人ぼっちを思い知るのが恐怖だから
はじめから一人ぼっちだったのだということに
無意識になるのです


それを揺らすオレンジ色の灯
あなたが安心感です
あなたが帰る場所です
あなたが淋しさなのです

白日

テーマ:


失った視力はもう取り戻せない
そのことにまだ気付いていない僕ら
不必要なわけではないけれど
そう必要でもなかった

それだから失った
矛盾は何もないはず
ふと理由もなく失望する日は
誰かが歌にしたような白日

ふたつ光を重ねてとらえた景色
そこに揺らめく影は見覚えのある
懐かしい人、僕に手を振る
痛みの光景はもう不確か

膨らませた肺に取り込んだ
使いまわしの酸素とドライ
忘れたはずの匂いが呼び起こす
抱きしめられたかったんだ

信じられるものはまだ機能している五感
息をして匂いを感じる、とらえた景色を焼き付ける
もう手放したくはないよ
忘れる前に思い出にならないで

それだから失った
矛盾は何もないはず
ふと理由もなく失望する日は
誰かが歌にしたような白日

珈琲の味

テーマ:
今日仕事中、久しぶりに泣きたくなってしまった。
涙腺のねじを緩めたきっかけは、些細でくだらない事だった。

「珈琲にミルクを入れますか?」
何千何万回と吐いてきた台詞。客は私に目もくれず「あ、いらない」と答える。
何をやっているんだろう。なんでこんなことしてるんだろう。
つまらない事やっているなぁと思いながら、黒い液体に2,3滴落とした白濁を眺めていたら、本当に涙がじんわり滲んできてしまったのだった。
必死にこらえながら、目頭を拭うと化粧が滲んでしまうから・・・。
でも、なんで泣いてはいけないんだろう。何の為に、我慢しているんだろう。

配膳を始めたのは18歳になりたての5月だった。
周りは年上の大学生ばっかりで、しばらくは誰とも付き合いがなかった。
雇ってくれるのなら何だって良かったのだ。大事なのは時給と、シフトに融通が利くかどうかだけだった。
気が付いたらもう21歳。ついこの間まで、自分が一番若かったのに・・・と思う事が増えた。
わき目も振らず走り続けた3年と5ヶ月。今まで付き合ってきたどんな彼氏よりも長い。
思えば、若かった私を支え続けてきたのは「悔しさ」や「誰かに認めてもらいたい」という気持ちだけだった。
「楽しい」と確かに実感した事はほとんど無かったように思う。
人は配膳の仕事を「厳しい」とか「下品」だとか言う。でもそんな事どうでも良かった。
「よく3年も続くね」と言われると、「好きじゃないからこそ続けられるって事もあるんだよ」と笑って言ってやった。
でも、なんで好きじゃないのに続けているんだろう。

配膳人っていうのは頑固者や変わり者、高慢でプライドの高い奴ばっかりだと思う。
給料だけは一丁前につくから、金銭感覚のおかしい奴や、午後出勤の日にはビールを飲んでからくる、いわゆるダメな大人の標本みたいな奴もいる。
頭にくる事ばっかりで、疲れる事ばっかりで、誰だってそうで、自分もそうだ。だから疲れるんだ。

嫌な事は飲んで寝て忘れるんだと言われる。言われるがままグラスに口をつけ、気がつけば空いたグラスの溶けた氷を眺めている。
近所の居酒屋の店員に目もくれずにおかわりを頼む。
嫌な事は飲んで寝て忘れるんだと、自分で自分に言い聞かせながら。

そして朝目が覚めたら、本当に忘れてしまっていた。
今日の客の顔も、台詞もルールも。喜びも悲しみもお金も、そこには残ってない。
今日も疲れた身体を掬い取って、電車に揺られて、気が付いたら走っている。
結局誰を見返したかったのか、誰に自分の何を認められたかったのか分からなくなって、本当の「好きな事」をぼんやり諦めかけているのかも知れない。

泣きたくなった理由はきっとこういう事だ。
流せなかった涙を乾かす暇なんて、私にあるのだろうか。
苦い現実に2,3滴落とした白濁。丁度いい甘さになるまで、こうしていたいのかな。

風向き予報

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風見鶏がないけれど
木の葉が揺れて知らせてくれる
今は向かい風で
耐えるときなんだって

しなやかな艶を持ってして
あともう少し背が伸びたら
ひとつ大きな呼吸を置いて
打たれただけ強くなれるはず

風見鶏がないけれど
君の髪が揺れて知らせてくれる
今は追い風で
身を預けていいのだって

目を閉じて力を抜いて
あともう少し背が伸びたら
ひとつ大きな呼吸を置いて
一緒に飛んでいく

風が凪いだ
それでも明日が見えたら
傍にいられるように
口笛のメロディを聞く


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思いついたときに書きましょう。反省

台風一過

テーマ:
台風一過、雨上がりの舗道
覗けた青空見過ごして
今は酔い醒ましのような
ゆるい夜風に吹かれている

だめだね、だって呟いて
あともう少しだけ自分を騙していたいんだ
見上げたそこには望んでいた笑顔があると抱いて
うそぶいた言葉がこだまする

またいちからため息を集め直して
気付かないうちに雨を呼んでいるのかも
見上げたそこには何もないただ秋晴れがただ広がっている
まるで澄み切った