あでゅ

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少し軽めのコートを着た日
春一番が吹いた日
君のため息がこぽこぽと空を昇って
雨を降らせた日

手をはなした瞬間は
何も考えてなどいなかった

執行猶予が間もないから、と言って
君は颯爽とバイクに乗って走り去った
大事にしてた地図とコンパスを捨てて
僕の足元に残った壊れ物は思い出くらいのもの

人ごみの中を歩けば汚れるのは簡単さ
街中から聞こえてくるラヴソングも何てことはない
五月雨を集めて今や濁った川の水
僕の耳元に木霊すのは君の、結果的に最後となった、言葉

僕の声など
いらないのだ

散々馬鹿やって夜を明かした日
始発に乗って帰る途中
この川沿いの街の朝焼けは
まるで君のついた嘘みたいに、綺麗で

死刑台に咲く花くらいに

まぁいいや、もう
ただ、それだけ
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ひそかなる追い打ち

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雨の日、耳元で鳴り響くクラクション
絡まるイヤフォンのコード
伸びた髪が重たくなって、視界を遮る
ポケットの中、確かにあるはずのキーを探り当てられない

良いことも悪いことも、巡り巡って自分に返ってくるのなら
ひとに優しく、触れられるそのひとに優しくと思う
いつもいっつも、そんな日にばかりひどい仕打ちを受けるもの
巡り巡って自分に返ってくるのなら…

アメちゃん舐めて元気出して、じゃあ
アメちゃんもっともっとちょうだい
ひとに優しくするのも、元気を出すのも、やりたいことやるにも
そう、なんだかもっとスタミナが要るみたい

巡り巡って落ちてくる不幸と雨
次は晴れるはずなんだ
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夢のまた夢で会いましょう

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寝ても覚めてもまだ迷っているの
わたしとわたしの夢の為に、あなたの為に
あなたのそばにいるべきなのか
ただただ純粋な眼差しで宙を見つめる
その瞳はどちらにも傾かないようで
戸惑いの中にさまよう

わたしにはあなたの心をうばうなんてできない
あなたは純粋だから、とても勿体なくて
ただ、時々でいいから、その眠りの中に
わたしを描いて
もしもこれから死ぬまで一緒にいるのだというのなら
わたしはあなたに優しく、優しくいて、生きるから
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再起動

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朝が墜落する前の静けさに
私とあなたは手を繋いで
狭いベッドにぶら下がっていた
午前五時、東京という街


徹夜明けで、熱のひかない目蓋
ピンク色の境界線がぼやけている、口唇
珈琲を淹れて、これを飲み干したら
そろそろスイッチを切り替えないと、いけないね


四六時中つけっぱなしのパソコンの画面に
浮かんでは消える文字
人と人のあいだにある言葉が
こんなにも尊い理由なんかは、今更になって気づいたこと


点滅する主電源のランプと、いつもより緩いまばたき
そろそろこの部屋にも朝の光が突き立てられて
空気のように肌に馴染んでいた、振動音が
無闇矢鱈に、存在感を主張し始めるから


再起動のオプションを選んで
Enter、Enter
行こう、朝の通勤電車の波にもまれて
あなたの息衝きなど忘れたような、街に繰り出す

君が、苦手だったんだ

テーマ:


君が、苦手だったんだ


もう三年経ったんだ
私の二十歳ももう終わる始末なんだ
今この揺れる季節の狭間で
吹き荒ぶ桜の花びらに埋もれて
告白することがある

蜃気楼に燃ゆ
あの黒髪の少女は
君が好きだと言った
かつての私


あんなにもわざとらしく
“深く愛す”と口をすべらせ
そのくせ簡単に見えなくなってしまう
君が、苦手だったんだ

白くてちっぽけで
痛々しい旗を掲げていた
割れそうな声を愛していた
それも耳障りになった

はっきりとした言葉で
言わないでくれ
君の熱は今に
季節を前に冷まされていくのだから

あたしに必要な言葉

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憂鬱が襲ってくると自然と言葉を選び出すのはなんでだろう
つまりそれがあたしの生き方なのか
特に意味は無いのに、毎日毎日後悔する
ちゃんと布団で眠ればよかった、と

欲しいものを全部買っちゃえばそれで幸せになれるのか、とか
一人で生きれれば強くなれるのか、とか
愛されたら満たされるのか、とか
幸せに必要な愛、愛に必要なお金、そんなもの

今日も重たい首をもたげて、考えるの
それで疲れてやめて、眠ってみたりするんだよ

よく頑張ったね、おいで
よしよし、いい子だね、一緒に寝よう
何もいらないから、ただそれだけ
あたしは結局それだけで泣いてしまう

それが何より欲しい言葉なんだ
その言葉に一番飢えて、その言葉だけで恋に落ちれる
もう二度と、相手本位の恋愛なんかしたくない
彼がいなくなれば自分が崩れてしまうなんてことないように

乾いた風、薄桃色、やわらかい陽射しと
もうすぐ来る、21回目のバースデーは幸福な思い出とともに
ただそれだけをともに
あったかな布団で眠ろう

嫌い

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世界の果ては
生ぬるい夕暮れ
蒼白い光の玉が虚ろに彷徨う
帰り道、妄想

どろどろに溶け腐ってもなくならない、あたしの心
視線が追う先は、いつも幸せそうに笑うひとだった

ねぇ、あたしには?
あったかい大きな掌を頭に置いて
幸せな笑顔を見せてよ
足りないの、いつもあたしだけ

自分が嫌われている、なんて妄想するのは
相手に失礼だからしない
だから、ひょっとしてって思う瞬間は
フィクションではない、恐らく事実でしょう

きれいだった
自分以外の世界は
ドラマチックでどうしようもなかった
濁っているのはこの頭の中なのか

ねぇ、あたしには?

あたしにもちょうだよ

飛び切りの笑顔
“嫌い”とは真反対にある気持ち
今あたしの中で
発酵してどろどろになっていく気持ち

きれいだった
自分以外の世界は

簡単なロマンス

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なんならあなたの心は
わたしが読んであげる
どうせくだらない煩悩
どっちを選んでも大差はないさ

折れ曲がった杖が支え
安っぽいネクタイを乱暴につかんで
問い詰めた、答えは要らない
愛なんて注文、応えない

あともう少しだけなら傷ついても平気だから
ぎりぎりの電池残量で、背水の陣で
あなたに最後の賭けをする
好きです、その後は

答えは要らない、けど
理由は分からない、けど
簡単なロマンスを求めてるうちは
恋になんて落ちたりしないもの

手をつないだら
そのままどこかに飛んでいけるの
そんな妄信、期待するのは勝手
愛の仕組みは案外単純なのに

あともう少しだけなら嘘でも信じれるから
ぎりぎりの制限時間で、偏った頭で
あなたに最後の賭けをする
好きです、その後は

答えは要らない、けど
確信はない、けど
簡単なロマンスを求めてるうちは
恋になんて落ちたりしないもの