その後はいかがですか

テーマ:

目の前に立ちはだかっていた惑いは消え

頭の中で吹き荒れていた風が止んだ

今は怖いくらい静かになった生活に

呆然と足が竦んでいるだけのこと


その後はいかがですか

風邪など引いていませんか

もう届かないみたいなので

せめて歌ってみます


はじめから誰も一人だったのだから仕方ないね

ホームで電車を待っているときでも

橋の上で考え事しているときでも

やっぱり淋しいから今もお揃いを身に付けている


それまで何の遠慮もなく寄りかかっていた

右側の温もりを失っただけで安心して眠れないんだね


心配していて。なんて

自分勝手なことは言いたくないので

同じように少し落ち込んでるだけの君を

何とはなく歌ってみます


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いかがでしょうか。

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安心の中/KOKIA

テーマ:
ねぇ時間が戻るなら
あなたの全てを心に焼き付けられるでしょうか
あなたのその腕、その髪、その顔、その声、全てが当たり前だった
一分一秒大事に噛み締めて生きていくことはできないのでしょうか
安心の中で失ったものを取り戻したいのです


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何度聴いても泣ける曲って凄いな
私の場合、もちろん‘あなた’がいるからっているのもあるのだろうけど
その腕、その髪、その顔、その声、と思い浮かべるだけで涙が出る
当たり前だった‘あなた’の温もりも、永遠にあるかのようにも思えた時間も
本当にたくさんのものを失った
それくらいに愛してた
残ったのは歌だけ
後悔は、してない
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煙草と香水

テーマ:
Image008.jpg
あなたの部屋に忘れていった髪飾りを
あなたの傷にしてね。
その傷が癒えるまでは
あのジッポや香水を使い続けて
その痛みを記憶に刻んでね。

あたしより髪の長い人を
好きにならないでね。
あたしより背の低い人を
好きにならないでね。
あたしより頭が良くて性格のいい人を
好きになってね。
あたしより心の強い人を
好きになってね。
あたしより他の誰かを
好きに、ならないで、ね。

こんな戯言
聞かなかったことにしてね。
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恋の匂い

テーマ:
甘ったるい匂いがする石鹸を買ってしまった。
ピンク色の泡とともに湧き立つその匂いは
苺みたいに美味しそうで
乙女を恋する気持ちにさせる。

目を閉じて、思い浮かべる愛しい人
その声も匂いも、髪も、指先も、鎖骨も、腕も呼吸も寝顔も口癖も、まばたきも、眼差しも、歩く速度も、奏でる音も、優しい言葉も、優しくない言葉も
あたしにあずけて欲しかった全部全部
今からあたしは失うのに、その全部を

甘酸っぱい記憶に連れて行かれる
涙で洗い流してしまう、あわい恋の色

あたしはブルーの吐息を吐くのに
ピンク色の匂いが、切なくてどうしようもない

あなたが二度と知ることのない
新しいあたしの匂いを纏ってしまう

やさしくないこと。

テーマ:
雨の音はない。音楽もない。
端正に刻まれる時計の音だけ。
震えながら落ちていく呼吸。

心が壊れるまで、好きでいる私だから
そう、壊れたらそれが最後だよ。もう直らないよ。
腕なんか、切らないよ。

ただざわつく胸の奧に言い聞かせるの。
今だけはじっと堪えていて。

ありがとう、きっときらいになってみせるから。
あなたの、ずっと忘れられない人に、私はなりたいよ。

なりたかった。

引越し

テーマ:

きれいなシロツメクサを選って
じょうずに花冠を編んで
小指に指輪を結んで
あたしをお姫様にして


ふわり舞った
スカートに花びら


クローバーの甘い蜂蜜を舐めた
思えば身体はいつも素直で
鼻の奥がつんとするその瞬間
緩んでしまいそう声を摘んで
一緒に溶かしてしまってよ


蓮華の続く道の向こうに
眠りの国の小さなお城
まんまる空に白い三日月
もうあたし帰れないのかな


ちぎれ雲を
追いかけて夕闇


鮮やかに濡れる緑の世界で
眠れる身体はいつも素直で
厚い硝子で守られてる白い
憧れがいつか空を突き破り
空色の液体流れてく


いつだって空には
咲き乱れる憧れ白い花
四つ葉のクローバー ねえ
幸せになれるってほんとう?


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これは歌詞としてむりやり書いたもので

ネタ的にはけっこう気に入っているので、こっちに残しておきます。

いい加減に、削除できないサイトだけど(余計惨めなのにな・・・・)

何かあって消されてもおかしくないからね。

クリニック

テーマ:

優しいお母さんのような目だった。眼鏡と、緩く束ねた黒髪。

桜井先生は50代くらいの、まさにお母さんのような風貌だった。

先生の後ろには、窓があって、常緑樹が見える。そこからこの診察室にやわらかな光が与えられていた。

その、やわらかな光のように静かに、うん、そう、と頷いてくれる。

私が言葉に詰まって、俯いて喋れなくなっても、待っていてくれた。少し首を傾げ、プレッシャーを感じさせない優しい目で。それでも黙っていると、静かに話を切り出す。

左手には本棚があって、ユングの本がたくさん置いてあった。絵本や、「わかりやすい心理学」と書かれた本もあった。

この方は、この優しい目で、これらの本すべてに目を通してきたのか。そんなことをぼーっと考えたりする。

とにかく、静かな空間だった。駅前の複合ビルの一角にある心療内科だったけれど、ビル内も静かだったし、待合室も、診察室も、薬局も。

帰り道は穏やかな気持ちでいられることが多かった。冬の晴れた日には、冷たくて眩しい白い陽射しを感じながら、雨上がりの日には、足元の水溜りを傘の先で引っかきながら。

家に帰ったら、とりあえず何か食べて、ゆっくり休もう。糸がプツリと切れて、もう一度結び直すのも諦めてしまった感覚。


ねぇ、先生。

突然、診察に行かなくなってしまってごめんなさい。

でも、先生のおかげで少し楽になったから。

行かなくていいや、って思えてしまったから。

ただ、連絡するのも億劫だったから。

でも、今でも時々先生の目を思い出す。

恐らく人が聞いても耳を塞ぎたくなるような話を、私は先生にしかできなかった。

こんな話、誰も聞いてくれないよね、って思うことが今もあって、先生ならやっぱりあの優しい目で頷いてくれただろうなって。


また、木々を揺らす、秋風が吹く。



      お父さんが、だめなんです。

      なんかもう、嫌いとかで片付けられるレベルじゃなくって、生理的にだめなんです。

      その血を半分受け継いでるのに。

      その血を半分も受け継いでしまっている自分に愕然としてしまうんです。お父さんと思いたくない。赤の他人になりたいんです。

      お父さんの脱いだ服や、食べた食器の跡、話し声だけじゃなくって咳払いやくしゃみも、他人のは平気なのに、お父さんだけは。

      一緒の洗濯機で下着を洗っていることや、便器や風呂を共有していることも。

      同じ部屋にいるのも落ち着かないし、本当はお父さんのものが目につくのも嫌。

      何より、お父さんが食事しているところが嫌で嫌で堪らない。

      何を考えているかもよく分からない人だし、同じ人間として考えられない。同時にそんな自分がひどいように思えて、お父さんをかわいそうに思う気持ちもあって、

      でも、お母さんがお父さんに対して、自分以上にひどい対応をしているのを見るのもつらくて。

      かわいそうだと思う気持ちはあっても、そのひどい対応を取るお母さんの気持ちも分かるから。

      目の前から消え去って欲しいと思う気持ち。息が詰まる。

      自分が独立したら、夫婦はどうするんだろう。

      もう会話をすることもしないのに。

      お母さんがお父さんを見捨てたら、お父さんが野垂れ死ぬのは目に見えて分かる。

      お母さんにはこれ以上お父さんのことで嫌な思いしたり、苦労したりして欲しくない気持ち。

      お父さんのことで悩んでいる自分の姿を見ていると、お母さんは自責の念に駆られていることが分かる。それがまたつらくて。

      自分にはどうにもできないもどかしさ。向き合いたくない。でも、このままじゃ、いられない。

      お兄ちゃんも、そばに、いなて・・・。                                         」


先生は、頷く。

私の絡まった言葉を解いていく。

大丈夫なのよ、と言って、

そして最後、カルテに何かを書き込む。

暗い部屋でうたううた

テーマ:

おやすみ、と言って切る、短い電話。

淋しがっても意味がないのだと、ようやく諦めがついたみたい。

だって、顔が見えないのだから。触れられないのだから。どうしようもなく、それでも明日はやって来るものだし。

本当は分かってたけど。例えば今、目の前にいて、手を伸ばせば触れられる距離にいて、抱き合っても淋しいものは淋しい。伝わらないから。

それでも今日も、おやすみを聞く。穏やかな声に、やっぱり安堵するのだ。

同じように電話越しに、悲しい声を聞いて、あのつらい時間を乗り越えてきて、良かったのかも知れないと思う。

いつも思い出すのは、泥臭い夏の陽射しの中。いらいらしてしまうのはその所為だと思うことにしていた。

できるだけ、陽に当たらない道を選んで、頼りない9センチのヒールでふらふらと歩いていた。一歩歩くことすらつらいのに、それでも気がつけば駅まで辿り着いている。うんざりするのだ、この繰り返しに。

マンションの一階のエレベーターホール。レモンティーの入ったコンビニの袋を引っ提げて、立ち尽くして。本当に帰っちゃうんだ。

部屋の前まで来ても呼び鈴を鳴らせなかった。ギターの音を聞きながら、うずくまっていた。

全部あたしの所為なんだ、全部あたしがだめにしたんだ、みんな音楽が好きなのに。だめになっちゃうんだ。

行き先が見えなくて不安で、いらいらしていて焦っていて、早くこんな人生が終わってしまえばいいのに、って思っていた。

今は少し楽になった。多分、相手が見えないからだろう。

どうせ辞めるつもりで頑張ってみるなんて馬鹿げてると思った。でも何も言う気がしなかった。あたしはもうそこにはいない人間だ。

冴えない毎日だね。安価な労働力となって、消費される時間。食っても食われても行き着く先は同じだ。最後は死ぬだけだ。

そんな中でも鳴り続ける、音楽は鮮やかな陽の色で、風の音で、淋しさの温度を知っているただ唯一の存在のようで。

だから何とかしてやっていくんだよね。これから幸せになるのも惨めになるのも、全部まるで他人事のように感じる。他人事だと思うからこそ、楽しみにしていられるんだろう。

泣いても笑っても眠っても、君がいてもいなくても、ずっと歌っている気がする。

だから、あと一本の、煙草に火を点けて。そいつが燃え尽きるまでは、淋しさに気付かないで、本気で愛してるふりをしていて欲しい。