2007年11月30日(金)

12月7日

テーマ:私生活的ブログ

 その日はサエキさんにとって、エポックメイキングになるだろう。

 インターネットが開通するのだ。

 

 PC譲渡に先だって私は、サエキさんからの悲痛なメールを受け取っていた。

 「日帰り手術をしたのですが、4日連続のタクシー通院でお金が持ちません。何か家で出来る仕事を探してもらえないでしょうか」

 

 サエキさんは糖尿病で足の先が腐ってきてしまうので、腐ってきたところを手術切除したり、新たに皮膚を移植したり、そんなことを延々繰り返しているのだ。

 

 生活保護だっていくらなんでも通院の交通費は出るだろうと思った私は、その旨返信した。

 帰ってきた答えはこうだった。

 「交通費は出ないんじゃないの?」

 

 とりあえず私が調べたところ、ネット上にはこうあった。


 生活保護受給者は自家用車の所有が認められていないため、通院の際にタクシーを使用した際は、定額の生活扶助費とは別に交通費が全額支給されている。実際には、タクシー会社が代金を一時的に立て替え、後日、タクシー会社が自治体に料金を請求している。

 

 なんと恐ろしいことに、彼は4月に退院してから今までの分のタクシー代を含めた交通費と、包帯・ガーゼなどの治療材料費を請求せずに、自腹で支払っていたというのだ。

 福祉事務所でも、交通費について何1つとして教えてくれなかったらしい。

 

 「できますよ」と返信すると、彼は「福祉事務所に連絡する」と書いてきた。

 その後聞いたところによれば、領収書を捨ててしまったりもともと貰っていなかった分を除いては、無事支払われたようだ。

 

 請求忘れの「特別支給の厚生年金」がいい例だが、知らないと損をすることがある。

 損をするだけならまだましで、場合によっては命に関わることもある。

 「何かについて知る」ということについて、インターネットは有効な手段の1つだ。

 

 「自立」ということは、経済的な自立だけではないと思う。

 「誰かに聞かずに何かを正確できる」ということも、ある意味での自立だろう。

 サエキさんの肩越しに、あの場所での「男」の姿を見ている私は、ある程度まではサエキさんの手助けをするだろうがさすがに彼の手足や親兄弟の代わりにはなれない。

 また本当の親兄弟にしても、親が生きているうちはまだしも兄弟には自分の生活があるし、彼に関わってばかりもいられないだろう。

 だからいずれにしても、時期の早晩はあれ、彼は情報的に自立する必要があるのだ。

 

 田舎の木造アパートの6畳間からネットに接続できたからといって、それですべてが解決するとは思わない。

 ただ、いま彼に必要なことの1つは外部につながる ということでもあると思う。

 

 たぶん彼は全角と半角の区別もつかないし、かな入力とローマ字入力の違いもわからないだろうし、AltもTabもCtrlも知らないだろう。

 そういう意味で最初から苦労の連続だろうが、ワードやエクセルも含めてとりあえずパソコンを使えるようになれば、また別の道が開けてくるのではないか。

 障害者の法定雇用率というのがあるから、身体障害者手帳を持っている彼は、私よりよっぽどいいところに就職できる可能性すらあるのだ。

 

 開通したら知らせてくれるだろう。

 私はそれを楽しみにしている。

 

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2007年11月19日(月)

PCリサイクル

テーマ:私生活的ブログ

 サエキさん とは時々メールのやりとりをしている。

 なんだか彼はあまり素性のよさそうな人間ではなかったから、保護観察中の我が身としては関わりを持つことに慎重だったが、実際の彼は私にとって、まったく無害の存在になっている。

 なにせまだ歩けないのだし、目も悪いし、腎臓が悪くて救急車でたびたび病院に担ぎ込まれていたりするようだから、「害」になりようはずがない。

 

 実はまだ、向こうが4月の末に大学病院を退院してからというもの、1度も会っていない。

 先日互いの都合が合って、ようやく会おうかという話になったが、雨が降って流れてしまった。

 まだ杖なしでは歩けないから、雨が降ると傘を差して杖をつくのでは、危なすぎて歩けないのだということだった。

 

 実際には会っていないが、宅配便で、私はサエキさんに使っていないノートパソコンをあげた。

 始めは「ネットをやるにはNTTの電話を引かなきゃならないし、大変だからいらない」と言っていたのだが、私が「NTTの回線を引く必要はないし、字も大きくできる」と言うと、もらう気になったようだ。

 

 私がサエキさんにパソコンをあげようと思ったのは、それがおそらく自立のためには最短の道だからだ。

 歩けないし目が見えなくて内臓が悪いという人間が就業できるのは、軽作業しかない。軽作業のうちでも、授産施設のようなところでの作業ではなく、まだ若い人間がある程度の金銭を手にするためには、「デスクワーク」につくのが、おそらく最良だ。 

 ところが彼にはパソコンのスキルがまるっきりなく、しかも生活保護の受給中で、親族とは縁遠く、このままでは自分のパソコンを手にできる環境には、「一生」ない。

 パソコンのスキルを身につける機会がないということは、ある意味で今のような最低限の生活が一生続くことを意味しているわけで、それでパソコンをあげようと思ったわけだ。

 

 あげたのは2001年の冬モデルという今となってはオンボロで、液晶は色あせていて暗く、「P」のキーがなくなっている古いものだが、Pentium3の1GHzだし、OSもXPだしで、いちおうは使える。

 そういえばこれは警察に押収されたもので、留置場まで一緒に旅をした相棒でもある。

 愛着はあるが、無駄に手元に置いておくよりは、私としてももう一花咲かせてほしいところだ。

 

 (つづく)

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