2008-02-02 07:00:00

サッカー日本代表対チリ戦とボスニア戦を見た感想 - 接近・継続・展開以外で

テーマ:サッカー日本代表/技術論
1. オシムの時よりも攻撃時における役割がより明確化

オシムのときは人もボールも動くサッカーというように、ポジションにこだわらず流れの中でパスの出し手と受け手は柔軟に変化するのが特徴だった。流れの中での判断力を養う練習の一環が有名な多色ビブスでのパスまわしだったと思う。

2つの試合の先発をみた限りで攻撃をする選手にはゲームを作るパサー(中村 憲剛、遠藤)、ポストプレーヤー(巻)、2列目から飛び出す選手(山岸or大久保)そしてストライカー(高原)としてそれぞれの役割をある程度決めておいて、それぞれの役割をこなすことをプレーのファーストチョイスとしていた印象があった。

オシムのときは組み込むと圧倒的な違和感があった中村俊輔だけど、こちらのほうが中村俊輔を組み込みやすいかもしれない。中村俊輔をパサーとして考えるかストライカーに近い役割にするかは監督の判断次第だと思うが、自分はこのシステムなら中村俊輔を後者のストライカーに近い位置取りで起用するのがいいのではないかと思う。

2. 守備はゾーンorマンツーマン?

オシムのとき、最初は阿部がDFになるかボランチになるかで相手に合わせて3バックか4バックを選択するマンツーマンの守備だったが、アジアカップでは4バックのどちらかというとゾーンディフェンスに移行している。

今回の試合ではおそらくアジアカップのときの守備のやりかたを引き継いだようだが、今後もこのやりかたでいくのだろうか? 自分はマンツーマン型で3バックか4バックに試合ごとに対応するやりかたがいいような気がするのだが、今後どうなっていくか注目したい。

3. 岡田監督はどう変わったのか?

今回の2試合を見て思ったが、やはり今の岡田監督は98年のワールドカップの時ともコンサドーレ札幌の時ともそして横浜Fマリノスの時とも違う。どう違うかはうまく表現できないが明らかに今までのサッカーとは違う。やはり、前回の記事でも書いたが本人はいろいろ考えるところがあったのだろうか。「男子、三日会わずば刮目して見よ」とはよく言うが、岡田監督の変化の詳細についても今後注目したい。

4. 最後に

メディアを見ていると"接近・継続・展開"にこだわりすぎている論調が目立ったが、あまりそこに注目しすぎると逆に視点が狭まるのではないだろうか。過去にもフラット3、黄金の中盤、ポリバレントなどいろいろなキーワードがあったが、昔からそこにだけ注目しすぎる傾向はどうも変わっていない。

メディアももう少し視野を展開したほうがいい。
2008-01-25 23:05:40

岡田武史監督の悩み - 日経サイエンスより

テーマ:サッカー日本代表/技術論
明日、日本代表は岡田監督の初陣である。

前回のエントリーで書いたように、日本代表コーチとして大木武さんが入閣したが、これは岡田監督直々の要望だったらしい。最初自分は岡田監督とスタイルの違う大木さんの招聘に驚きがあった。

前回書いたように、自分が持っている岡田監督のサッカーのイメージは現実主義。相手の弱点を約束事を決めて徹底的に潰してくる。一番自分が印象に残っているのはチャンピオンシップ横浜マリノス対浦和レッズのときで、レッズの3バックの一角に入った内館の身長がなく空中戦に弱いとみた岡田監督は内館へ徹底的にロングボールを放り込む戦術をとった。

そんな理詰めでのサッカーのイメージがある岡田監督だったが、どうも最近自分自身ではそのようなサッカーの指導を悩んでいたようなのだ。

その様子が、たまたま読んだ日経サイエンス (2007年10月号)の脳科学者の茂木健一郎さんとの対談の記事に掲載されていた(注:対談のときはまだ日本代表監督ではない)。

日経サイエンス (2007年10月号)
サッカーで勝てる脳とは より(一部改)


「僕自身はどちらかと言ったら理屈でサッカーをするタイプだったんです。だから監督になってからも、選手に教えていたときは論理で話してました。

例えば「失点の内訳をよく見てみろ。40%はセットプレー、10%はどうしよもないハプニングそして残り50%のうちの1/3はカウンター攻撃だ。このカウンターを半分に抑えれば失点は減らせる。そのためには.....」という具合に、結構細かく言う訳です。もちろん選手が言われたことをやればある程度の結果は出ます。ある意味確率論ですから。」


「だけど、だんだん選手が言われたことしかやらなくなってきたんです。それは、もしかしたら僕は理屈で教え込んでいたから選手が本来持っているアイデアとかを殺していたんじゃないかと思うようになりました。」

中略

「最近 (まだ代表監督ではない2007年10月ごろ)は、日本のサッカーについていろいろ考えるようになりました。マリノスでは連続優勝しましたが、正直言うと、当時はあまり面白くなかったんです。」

「優勝はうれしいけど、これは本当に僕がやろうとしているサッカーなのかなと。やはりブラジルなんかのサッカーと違う。そこがずっと引っかかっていたんです。優勝したときは論理的にあれこれ考えて選手に指示したんだけど、3年目、4年目はなにも言わなかった。選手のひらめきを引き出してみたかったんです。だけど、やっぱり勝てなかった。2年間勝っていたから、ちょっと負けても大丈夫だと思ったんだけど、やっぱり職がなくなっちゃった(笑)。」

そんな悩みがあったからこそ、自分に足りない部分を補うべく大木武さんの招聘を決めたのだろうか。

明日の代表の試合、どのような試合になるか楽しみだ。

2008-01-22 01:10:00

サッカー日本代表よ、世界の異端児たれ - 大木武が考える日本サッカーの日本化

テーマ:サッカー日本代表/技術論
今週の末、サッカー日本代表は岡田監督になって初めての親善試合を行う。

自分が今の日本代表で注目しているのは大木武コーチだ。

自分が大木武さんに持っているイメージ、それは異端児。そして剛胆な発言の中に真実を射抜く鋭さを持っている。

サッカー批評2007年35号より発言を抜粋(一部改)
「日本代表が高度経済成長を成し遂げられた理由は、勤勉さとか言うわけでしょ。組織力がある、俊敏性だってスピードだってある。だったら戦術どうのこうの言うよりさ、そうしたところを生かしていこうよ」

「フィジカルで勝てない黒人選手に1対1でかなわなかったら1対2にすればいい。よく協会の話にコンタクトプレーに弱いって話になるけど、じゃ当てなきゃいいって発想にならないのかな?当たるくらいならパスで逃げろよと、そして逃げてもう一回受けろよと。そうすると簡単に答えがでてきちゃう気がするんだけどな。」

「長い距離を走れなければスモールスペースでやればいい。背が大きくないのでロングボールを蹴られたらやられるというなら、前からプレスをかければいい。簡単だと思うんだけどな、俺だけかな?、そんな単純に考えている奴は」

大木武さんのサッカーは、セリエAで監督を務めていたズデネク・ゼーマンの影響が大きいことで有名だ。ゼーマンはあの守備重視のイタリアの中で4-3-3の超攻撃サッカーを掲げた異端児で、常に攻撃的に振る舞う高い理想を持ったサッカー哲学はゼーマニズムとも呼ばれていた(attacking phaseより)。

大木武さんが指揮を執ったヴァンフォーレ甲府での4-3-3の攻撃的布陣、「クローズ」と呼ばれるサイドに密集を作り細かいパスで局面を打開するサッカーはこのゼーマニズムを彷彿させる。この大木武さんの考えが、今後どの程度日本代表に取り入れられるのかは興味深い。

ただ、大木武さんの標榜しているゼーマニズムは例えるならとてつもなく濃いエスプレッソだ、日本代表がこれを原液のままでは飲みこむことはできないだろう。これをどの程度薄めて、そしてどのような味付けをして日本代表に飲み込ませるかが、今後の岡田監督の課題だと考えている。もしそれができたならサッカー日本代表は、世界の異端児として独自のスタイルができあがるのではないかと思う。

日本で最も理想主義サッカーの思想を持つ大木武と、日本で最も現実主義サッカーの思想を持つ岡田武史、この2人がいかなる化学反応を起こすか楽しみだ。