02 解放区

03 真昼の秘密



心臓の鼓動、次々と流れ出る涙、乱れる息。


私は、いつものライブのように、音楽にノルということができていなかった。

1曲目からいきなりずっと泣いてる私。


『真昼の秘密』のちさこ嬢は、マイクスタンドをひっくり返しながら切迫した声で歌いあげ、サオリさんが以前言っていたように、体中から刃が出てるように、確かに見えた。


一瞬、曲が止まる瞬間のところで、訪れる静寂。


「くっそ・・・」


何をそんなにイラついているのか。



04 プラスチックルームと雨の庭


途中、ちさこ嬢が初めてサオリさんのほうに振り返り、サオリさんと呼応する。

この曲も、また聴けるとは思わなかった。



05 夜とあさのすきまに


この曲は、彼女の曲の中でも、かなりの率でわたしの心を支配している曲。

CDを聴いてても、なんともいえない気持ちになって、やっぱり涙が出てくる。

轟音のようなサウンドが心をどうしようもなく、えぐる。

なんであんな音が出せるんだろう。



『真昼の秘密』→『プラスチックルームと雨の庭』→『夜とあさのすきまに』


fra-foaのファーストアルバム、『宙の淵』のオープニングと全く同じ曲順。

私はこの、組曲のような3曲の流れが、本当に好き。


サオリさんはためらうことなく、ゆらめきながらどこまでも色をはこびらせる。

キャンバスをはみ出し、ライブハウスごと、描いてるみたい。


ただひたすら、2人を交互に直視することで精いっぱいで、お客さんも、いつものライブのようにノッてる人は少なかったと思う。この時点では。




06 青白い月


なんといえばいいのか。


儚くて、強い。


サオリさんが、樹を描いていたと思ったら、いつの間にか中央に真っ白い円を描いていた。

あの華奢な腕で、ゆっくりと、バスケットボールくらい?の大きさの弧を。


あぁ、月だ・・・。


白い弧の周りに青い弧を描き始め、からだいっぱい使って同心円状にどんどん大きくなり、やがてその大きな弧は、大樹を飲み込む。

ぽっかりと浮かぶ、青白い月。




07 crystal life


言葉にできない感情の渦が、ライブハウス中に充満して、窒息しそうだったときに、この曲が、そのすべてを受け容れたんだ。







08 バカで結構


この曲から、全体の雰囲気が変わった。

独特のグルーヴに、自然と体が揺れて、私は、ちさこ嬢とサオリさんが同じ表情をしていることに気がついた。

どこかニヤリとしたような、うっすらとした笑み。



09 daisy chainsow

10 4am


いつものライブのよなノリに!

ちさこ嬢が、「もっと音を楽しもうぜぇぇぇーーーー!!!今しかないぞ!」と叫ぶ。

私も腕を振り上げてノリノリに!



11 Hole


なんかデジタル音が流れてきたので、『わたしはあなたの宇宙』の中の曲がくるとわかった。

Hole!!!来たっ!


彼女がこっちに、来た。


途中の溜めのところ


爆発する前のところで


ちさこ嬢が私の目の前でしゃがみこんで、


じっと私の目を睨みながら、じりじりと、うたった。


私も、目を逸らさなかった。


たぶん、2mくらいの距離で。


ドキドキした、というよりは


やっぱなんか、すごく魅きつけられて、炎の中にいるみたいだった。


さっきまであった、青白い”月”は、深くて暗い、濃紺の”穴”に変わっていた。




12 月と砂漠



妖艶で怪しい、うねりの轟音。


既に原曲と大きくちがうアレンジのこの曲。


Aメロの歌い出しも、歌詞なんてうたわない。


メロディすらない。


ひたすら、デスボイスのような唸り声をあげている、三上ちさこ。


・・・・・・ヤバい。


カッコよすぎる。天才すぎる。なんなんだこのひと!!



サオリさんは、さっきの”穴”から放出される筋のような光のようなものを描いていた。



「終われ!!壊せ!!終われ!!壊せ!!」


と、ひたすらわめきちらす、三上ちさこ。


”穴”から壁に沿ってただれ落ちる、神田サオリ――――。

この日一番の轟音の渦のような曲の終わりに、サオリさんは、岸に打ち上げられた人魚のように、踏み台の上に仰向けになった。



「終われ!!壊せ!!終われ!!壊せ!!」


曲が終わってもそのまま、叫びながら凄い剣幕でステージを降りて行ってしまった。



私は、どうしても彼女たちに触れてみたくて、ステージを降りた彼女たちの道をスッと開けることができなくて、叫びながら降りてくるちさこさんにぶつかってしまった。



例えようのない、苛立ち。


暗雲の雲に恍惚と光る、雷のような青い壁画だけが、残されていた。













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