うらら
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2009年11月14日

クラブ・レボリューション★14

テーマ:クラブ★レボリューション
週明け、僕に辞令が下った。
カザフスタンの出張所に飛ばされることになった。
なんで、小さな下請けの会社に、カザフスタンの出張所があるんだ?多分、ウランの鉱脈を掘らされるんだ。
もちろん、辞めて逃げるつもりだ。

  -終劇-
2009年11月13日

クラブ・レボリューション★13

テーマ:クラブ★レボリューション
《集会》が終わってしばし、解放された社長が、僕を睨みつけて一言、
「文化大革命じゃなくて、部下大革命だな」
と、つまらないダジャレを言った。そして、
「ならば、下放にしてやるから、覚えておけ」
社長はそう言い残して、上着を裏返しに着たまま、フラフラと『五星』を出て行った。

下放?
F君が「下放」について説明してくれた。
「文化大革命の批判による血祭りが頂点に達して、紅衛兵達の派閥が分裂して、収拾がつかなくなった。…」
…その時、毛沢東が若い紅衛兵達に「農民から学べ」と言ったそうだ。
「農民から学べ」と言えば聞こえはいいが、どうやら本音は、有り余る人民のために都市での仕事が足りなくなる、その手立てとして、大勢の若者達地方に送り出した…。というのが本当のところらしい。
そうして、大勢の都会の若者達、その多くは紅衛兵達を、辺ぴな田舎の農村で農作業に従事させた。そういった「下放」の若者達の多くは、農村では役に立たなかったり、貧しい農村の辛い暮らしに絶えられず、逃げ出す者が後を絶たなかったりしたそうだ。

社長が言った「下放にしてやる」とは、つまり僕を僻地の工場にでも異動させようということか。…
2009年11月10日

クラブ・レボリューション★12

テーマ:クラブ★レボリューション
翌週、社長を誘い出すのは楽だった。
F君の言ったとおり、「僕の給料でも行ける〝安くていいキャバクラ、僕、知ってます〟」と、ただそれだけで、事はうまく運んだ。
「今日は、無礼講でいこう。な、よろしく頼むよ」
と、まず一軒目で何杯か引っ掛けて、上機嫌の社長を車に乗せ、僕が運転した。
…向かう先は、キャバクラなんかじゃない。奇妙なメガネっ娘の《江青》は居るけれど。でも、今日は「無礼講」だと、社長自らがそう言ったのだから。
繁華街の細長いテナントビルの一階の喫茶店を抜けて、地下に続く階段を降り、『五星』に着いた。
店には、既にF君が仲間を連れて来ていた。何の説明もせず、「この黒五類コースがいい」と社長に言うと、社長は「それにしてくれ」と言った。
この店のアイドル、メガネっ娘の《江青》が社長の背後に立ち、「こちらです」と、社長をどこか、控え室らしいところに連れて行った。
そしてしばらくして、《集会》が始まった。
お決まりの三角帽子を被った出で立ちの社長の目が、完全に怯えて挙動不振だった。

僕の首を賭けた、これは反逆であり、暴動だ。この日、僕はどれだけ笑い転げただろう。…
2009年11月10日

クラブ・レボリューション★11

テーマ:クラブ★レボリューション
集会が終わって、僕とF君はしばし静かにグラスを傾けた。

「僕も、僕の会社の社長を、『五星』に招待したい。」
と、僕はF君に言った。F君は面白半分に目を見開いて、
「え、そんなことして、大丈夫?会社クビになるよ」
と言う。でも、
「クビならそれはそれでいいさ。どうせ、働き続けても、過労死させられるだけだし。心配してくれて、ありがとう」
と、僕は本気だった。
… 死ぬよりもクビ。どうせ辞めるなら、気持ちをスカっとさせた方がいい。目先の金のためなら、あんなアコギなやり方でピンハネされる、その上、他人の命なんてどうでもいい、あのバカ社長が、今日の黒五類のように、辛そうに「く…」とか「ぎ…」などと悶える姿を妄想すると、僕はワクワクして、いてもたってもいられない。…と、F君に言うと、F君は、
「ずっと君の社長の極悪非道ぶりは聞かされているからな。〝安くていいキャバクラ、僕、知ってます〟、っていうノリで誘い出せばいいんじゃないか。できる協力があればするよ、同志」
と、エールをくれた。
僕とF君は、革命的カクテルでもう一度乾杯した。
2009年11月09日

クラブ・レボリューション★10

テーマ:クラブ★レボリューション
僕は普段、工場の機械のメンテナンスの仕事をしている。下請けの小さな会社だけれど、待遇は正社員だ。けれど、ボーナスを貰ったことがないし、貰えるはずの残業代が、なぜかとても少ない。
この会社に就職するとき、社長が面接で言っていたことと違う。社長は普通に「残業代はきちんと出す」と言った。そのことで僕は社長に問い詰めたら、社長は、「君はよくやってくれているから、役職手当をつけた。扱いが管理職になるから、残業代はつかないんだよ」と言い、ボーナスが出ない理由については、「景気が良くないから、稼いでくれたらボーナスも出すよ」…。
何だか、僕は罠にはまったような気がした。
元請けの大手の社員は、僕と同じ仕事をして、ボーナスの月には、ちゃんとボーナスを貰っている。彼らは新車も買えるし、海外旅行にだって行ける。彼らが海外旅行で遊んでいる間、その穴埋めを、下請けの僕がする。
酷いものだ。何が正社員だ。元請けが僕の仕事に対して支払っている金の大半を、社長がピンハネしているのは、もう、どう見ても明らかだった。
僕が一生懸命仕事をして、元請けからの評価が上がっても、助かるのは元請けの社員で、儲かるのはうちの社長。…そして僕は、今の仕事には何も感じなくなっていた。

そうして僕は、ただ正社員という立場にしがみついて、凍てついて乾ききった僕自身に、気づかないように、自分を欺くようにしてやり過ごしていた。

「革命に罪は無い!打倒!ブルジョア!」

赤い表紙の『毛沢東語録』を振りかざしながら何度も叫んでいると、今まで凍らせておいた僕の怒りが、炎のように赤く力を帯びてきて、本気で、社長や元請けの社員のようなブルジョアが許せないと思った。気がつくと、僕は大粒の涙をポロポロこぼしながら、むちゃくちゃな顔をして叫んでいたと思う。

「革命無罪!造反有里!打倒走資派!」…

「同志!」とF君は、僕とテレパシーで通じ合ったかのように、肩を組んだ。そして次第に、周りの紅五類の客たちとも、手を取り合ったり、肩を抱きあったりして、その場の強い連帯感を僕は感じて、感動していた。
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