■オール県産、やさしい味

 ◆その名は「完熟」

 みそといえば、タケヤ、マルコメ、ハナマルキ…。大手メーカー品しか知らない舌には鮮烈な味だった。

 「六甲みそ」。教えてくれたのは知り合いの大学の先生。「おいしいから一度食べてみて」。銘柄名は「完熟みそ」。指ですくってなめてみた。赤みその芳醇(ほうじゆん)な香りが口の中に広がり、鼻にすーっと抜ける。みそってこんな深い味わいがするんや…。感動した。

 兵庫県芦屋市の国道2号沿いにある「六甲味噌製造所」を訪ねた。

 「社長の私も含め従業員14人の小さい会社ですが」。長谷川憲司社長(59)が笑顔で迎えてくれた。事務所では数人の従業員が電話応対に追われている。工場へ案内してもらうと、むせかえるような糀(こうじ)のにおいが。

 「入手しにくい原料が多くて、大量生産ができないんですよ」。かなりこだわりをもっているようだ。

 ◆やめるなコール

 たとえば冒頭の「完熟みそ」は米、大豆、塩など原料のすべてが兵庫県産。最も重要な糀は養父市八鹿町産の「蛇紋岩米(じゃもんがんまい)」(コシヒカリ)でつくる。「語感だけだと、まずそうに思えるでしょ? これがなかなかの優れものなんです」

 実は、一昨年までは長野県産の米を使っていたが、仕入れ先の農家が別の米をつくるようになり、生産をやめようと思ったという。すると、根強いファンの間から「なんでやめるんや」と“やめるなコール”が。

 「ありがたい話です。それなら、原料を変えて続けよう、どうせなら県産のものを使って…と思って米を探していたら、たまたま知り合いの業者から、この蛇紋岩を手に入れまして」

 同じ県産のある銘柄も候補に挙がっていたが、ご飯を炊いて食べ比べてみたところ、「炊きたては、どちらも甲乙つけがたかったんですが、冷やご飯を食べたら全然違いました。蛇紋岩は、冷めてもしっかりと米の味がしたんですよ」。

 米が定まったところで次は大豆。県北部の香住の農家に残っていた「サチユタカ」をこれまた偶然手に入れ、試しに使ってみたら、蛇紋岩と相性がぴったりだった。残る塩も「ここまできたらオール県産で」と赤穂塩を使うことになった。

 ◆洋食とコラボも

 エアコンによる温度調節を一切せず5月ごろから約4カ月間熟成させる。「加温醸造でつくられたみそは、火にかけると成分が壊れやすいんですが、『完熟みそ』は鍋にしても味がヘタりません。天然醸造だから体にもやさしいんです」と長谷川社長は胸を張る。

 同社のみそは和食系はもちろん、多くの西洋料理店でも使われており、「クリームチーズと合わせて、野菜スティックやクラッカーに載せて食べてもおいしいですよ」。ロールケーキの生クリームに混ぜるなど洋菓子とのコラボレーションの話も進んでいるという。

 「みそは日本の食文化を代表する調味料の一つ。海外でも徐々に使われつつありますが、しょうゆと比べるとまだまだです。いろんな食べ方を提案し、世界に発信していきたいですね」

 こんな会社が、身近にあることがうれしい。

 文・古野英明

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 【六甲味噌製造所】兵庫県芦屋市楠町11の16。「完熟みそ」(1キロ・税込み2205円)のほか、酒米として有名な山田錦など兵庫県産の原料を使った「酒米仕込み」(400グラム・同945円)▽丹波産黒大豆を使った赤みそ「黒大豆味噌」(300グラム・同662円)▽白、赤だしなど6種類ある「芦屋醸造」シリーズ(300グラム・同441~536円)▽フリーズドライみそ汁(10個入り・同1470円)など、こだわりのみそを多数種生産している。本社工場や兵庫県内のスーパーなどで販売しているほか、取り寄せも可能(フリーダイヤル0120・658・308)。

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 ■田楽、みそ煮、汁もの 口に香りと余韻が…

 清酒「福寿」の醸造元、神戸酒心館が運営する「さかばやし」で、六甲味噌製造所のみそを使った料理を味わった。

 まずはタケノコ、とうふ、アユの田楽三種。田楽みそは、ヨモギ入りの白みそベース、赤みそベースの2種類あり、酒、みりん、卵黄などを加え、みその香りはそのままに、まろやかな味に。しゃきしゃきとしたタケノコ、やわらかいとうふ、独特の香りのある川魚のいずれにも、驚くほどよく合う。

 定番のサバのみそ煮は、サバの濃厚な味と、腰の強いみそがけんかせず見事に調和している。仕上げにタイの頭入りみそ汁。いい香りが鼻孔をくすぐり、一口すすると昔懐かしい味が。口の中にいつまでも余韻が残る。これだけでご飯を何杯も食べられそうだ。

 同店の姫井隆之料理長(56)は「みその味が安定している。工場を見学させてもらったことがあるが、こんなに一生懸命つくっておられるのかと感銘を受けた。作り手の顔が見え、安心感もある」と話した。

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 さかばやし 神戸市東灘区御影塚町1の8の17▽TEL078・841・2612▽営業時間 11時半~14時半、17時半~22時、年中無休▽お昼は、自家製とうふとおばんざい、煮物、湯葉刺し、せいろ蕎麦、デザートがセットになった「そば膳」(1890円)や数量限定の「寿」(1360円)など。夜のメニューも多種。

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 この連載では、広く知られてはいないが味や品質は一級品、という関西産の食材、食品を取り上げる。 

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