皆様、ご機嫌いかがでしょうか。

8月25日(木)に、2018FIFA WORLD CUP RUSSIAアジア地区最終予選のUAE戦、タイ戦に臨む日本代表メンバー24人が発表されました。

本田圭佑、香川真司、岡崎慎司、長谷部誠、清武弘嗣、吉田麻也、宇佐美貴史、原口元気らお馴染みのメンバーに加えて武藤嘉紀、太田宏介といった元FC東京のコンビが代表に復帰してきた中で、現在、明治安田生命J1リーグの2ndステージ及び年間順位で首位に立つ川崎フロンターレからは小林悠と大島僚太が選出されました。


○小林悠は「常連組」からの信頼を勝ち取れるか⁉︎

小林悠は今や代表にコンスタントに選出されるようになってきました。
J1で7試合連続ゴールという、かつて川崎Fのエースとして君臨したジュニーニョの6試合連続ゴールを超える記録を残し、更に自信を深めました。
キリンカップのブルガリア戦で代表初アシストを記録しましたが、今回こそは代表初ゴールを、大事なWCアジア最終予選で挙げたい所です。

但し、小林が主戦場とする右サイドには日本代表の絶対的「王様」本田圭佑がおり、更に左サイドだけでなく右サイド、トップ下、ボランチ、サイドバックと、ドイツでのプレーでサッカーIQを高めた原口元気がいる為、小林の起用の優先順位は下がる事が予想されます。

更に、これまで小林が出場した代表でのゲームで、小林にパスが殆ど回ってきませんでした。

理由としてはまず一つはチームメイトからの「信頼度」が足りない事です。 

本田、香川、岡崎、長谷部、清武ら「常連組」と呼ばれる選手は殆どがヨーロッパのビッグクラブや中堅のクラブに所属しています。

ヨーロッパのクラブでは絶対的な結果、つまり「ゴール」を挙げない限りチームメイトからパスは殆ど回ってきません。彼らはそういう厳しい環境の中で生き残っている選手達です。
それ故、自分達が信頼する選手以外の選手には殆どパスを出しません。

小林はブルガリア戦で代表初アシストこそ記録しましたが、ゴールはまだ挙げておらず、本当の意味で「常連組」からの信頼を得られていません。
彼らの信頼を得る為にはとにかくゴールを挙げる事。どういう形でもゴールを挙げて初めて常連組からの信頼を勝ち取り、本当の意味での「日本代表の一員」と言えるでしょう。

もう一つは他の選手達と「フリーの定義」が違う事です。

一般的な「フリー」の定義は、「相手のマークが付いていない」状況を指します。
但し小林が所属する川崎Fでは相手にマークされていても「受けられる準備」、つまり「相手を外して次のプレーに移行する準備」が出来ていればその時点で「フリー」なのです。

その「フリーの定義」が周りと全く違うので、川崎Fではパスが出てくる筈のタイミングで代表ではパスが回ってこないという現象が起こります。

この「フリーの定義」の違いには2014年のブラジルWCに出場した川崎Fの絶対的エース大久保嘉人も苦しみました。

「マークされてても受けられるからオレにどんどん当てて来い!」

と大久保は周りに要求し続けましたがこれまでの日本代表のサッカーのやり方もあり、チームメイトには最後まで理解して貰えませんでした。

小林も同じ様に周りとの「フリーの定義」の違いに苦しんでいる様に見えます。
周りに自身の「フリーの定義」を如何に共有させるかも、常連組からの信頼度と共に小林が多くパスを受ける上での鍵となってくる筈です。


○五輪で躍動した大島僚太、A代表デビューなるか⁉︎

リオデジャネイロオリンピックに臨んだ23歳以下の日本代表は1勝1敗1分でノックアウトステージ進出を逃し、グループステージで大会を去りました。
その中で大島僚太ただ一人だけ、全ての試合で卓越したボールスキルと広いプレービジョン、そして相手の攻撃を遅らせるボールホルダーへの素早い寄せと的確なポジショニングで、攻守において大きな存在感を見せ、躍動していました。

そんな彼が6月のキリンカップに引き続きA代表に招集されるのは当然の流れだと思います。

大島のプレーでまず注目すべきは「トラップ」です。
以前の記事にも紹介しましたが「トラップ」とはただボールを止める事ではなく、「次のプレーに移行しやすい場所にボールを置く」事を言います。
大島は基本的にトラップを間違えません。
たった一つのトラップで次のプレーの選択肢を何通りでも作れる選手ですし、たった一つのトラップで相手を重心や心理を外す事が出来ます。

次に注目すべきは「パス」です。
元々大島は「パサー」ではありません。
静岡学園時代からむしろ「ドリブラー」として鳴らしてきた選手です。
大島のパスの技術が洗練されたのは川崎Fに加入から3シーズン目、川崎Fの象徴として君臨し続ける日本が誇るパサーの中村憲剛とダブルボランチを組んでからです。

当初は無難なパスや「逃げ」のパスが多かった印象が強かったのですが、相棒である大先輩の中村憲剛やエースの大久保嘉人の激しい要求もあり、次第に攻撃のスピードを上げる縦パス、相手を誘い出す「遊び」の横パスやバックパス、ゴールに直結する決定的なパス等、明確な「意図」を感じさせるパスが増えて来ました。

パス一本で意図を感じさせる選手の代表格と言えば中田英寿、中村俊輔、遠藤保仁、中村憲剛といった名前が挙がりますが、久々にそういう選手が出てきたなという印象です。
大島のパス一本にどのような意図が込められているか、それを感じながら注目して欲しいと思います。

守備面でも、相手ボールになった瞬間に素早く相手に寄せる、若しくは的確なポジショニングで相手の攻撃を遅らせる等、成長を遂げています。
その素早い寄せ方や的確なポジショニングはさながらバルセロナとスペイン代表で中盤のアンカーとして君臨するセルヒオ・ブスケッツを彷彿させるようになってきたなと個人的には感じます。

そして何より「自分がチームを引っ張る」という強い「意志」と「覚悟」が伝わるようにもなってきました。

今シーズンになって多く見られるようになったゴール前への積極的な飛び出し、球際での激しさ、そしてチームを声で鼓舞する姿勢は全て「自分がチームを引っ張る」という強い「意志」と「覚悟」から生まれているものだと感じます。

6月のキリンカップでは言わば「研究生」扱いでしたが、今の大島僚太は間違いなく、ポジション争いのライバルとなるであろう柏木陽介を攻守の能力で遥かに凌駕する存在になってきているのは間違いありません。
柏木が負傷の影響でUAE戦ではスタメン起用が噂されていますが、いずれにせよA代表デビューの瞬間が非常に楽しみです。