桂小五郎との出会い3

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もっとも竜馬の方は

この桂小五郎の名には多少の記憶がある。

長州藩家老益田越中が

「桂さえおれば」

と漏らしたのを耳の底にとどめていたからである。

なるほど越中がたのむとおり、桂は、位は桃井、技は千葉、力は斎藤といわれる

斎藤弥九郎の神道無念流道場の免許皆伝であり、塾頭であった。


桂がおれば、竜馬はああやすやすと勝ち抜きは出来なかっただろう。

竜馬は黙って2,3歩さがった。


桂は両こぶしを軽くにぎったまま  「申されよ」と言った。

名と藩名をである。

尋問の口調であった。

竜馬にとってこんな無礼な態度に応じられるはずがない。

しかし、桂にとってはむりもなかった。


長州本営から横須賀に抜けるこの間の道を旅装のまま

しかも単身で歩いている武士があるとすれば、まず諜者と考えていい。

幕府は相州沿岸の警備を徴収に命じたとき、行政権まで委任している。

しかも今は臨戦態勢である。

うろんの者がおれば斬り捨てても構わない。





引用著書
「竜馬がゆく」
司馬遼太郎


 
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