桂小五郎との出会い2

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「ごめん」

と竜馬は軽く一礼して通り過ぎようとした。

背を向けた途端相手は

「しばらく」

といって立ち上がり、

「卒爾ながら伺いたい。

この相州の地は長州藩士の地でござる。

みだりに他藩士の立ち入り、視察することを大公儀の名によって禁ぜられている。

お見受けするところ貴殿は長州藩士ではない」



「それがどうしたかな」

竜馬も編み笠越しに油断なく相手を見た。

この男はおそらく長州藩士で竜馬を他藩の探索者だと思ったのだろう。

「お名前、御目的をうかがいたい」

と相手は言った。



坂本竜馬が長州藩士桂小五郎にあったのはこの時が最初である。

しかし、はじめ、どちらもそれとは気づかない。

いやたとえ気づいたところで、どちらも無名の青年に過ぎなかった。

名を聞いたところで互いに驚くほどの相手ではなかった。



引用著書
「竜馬がゆく」
司馬遼太郎


 
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