桂小五郎との出会い

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試合はあっけなく終わった。

先鋒の竜馬が、林音吉をもろ手突きで三間も向こうに突き倒した後、

長州方はかたくなったのか竜馬1人の剣でバタバタと倒され、

大将の佐久間卯吉もつづけざまに面を撃たれて敗退し、

土州方九人はついに竹刀をとられずじまいだった。


このあと、10組の模範試合があり、長州、土州ともそれぞれ勝敗があった。


しかし最初の勝ち抜き試合では土州の圧倒的勝利であり、

竜馬の剣名が他藩まで聞こえたのはこの時である。


その日は一泊し、翌朝一行は宮田村の長州本営をあとにした。


竜馬は家老の山田八右衛門に命ぜられた視察のことがあるために、

途中で一行と分かれて山越えで横須賀に出ようとした。

竜馬はふと足を止めた。

武士がいる。



木の根に編み笠をかぶって一人腰を下ろしていた。

旅姿である。

小柄で動きがよさそうな体を道、衣服はいかにも清潔そうである。

しかし編み笠を上げてちらりと竜馬を見た目が鋭く、どことなく油断がならぬ感じがした。

しかもこの男は右手を挙げてすばやく編みがさのひもを解いたのである。

いざ争闘のばあいいつでも脱げる用意なのだろう。









引用著書
「竜馬がゆく」
司馬遼太郎


 
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