■島田裕巳さん「仏教のあり方、大きな曲がり角に」

 人生の最期を迎えた人を送る葬式。だが、別れを惜しむ間もなく手配に追われ、葬儀費用やお布施にと予想以上に支払いがかさんでしまった、という人は多い。そんな不明朗な葬儀費用を透明化しようと、流通大手のイオンが葬儀ビジネスに参入。宗教学者の島田裕巳さんも著書『葬式は、要らない』『戒名は、自分で決める』で現在の葬儀のあり方に一石を投じ、いずれも大きな反響を呼んでいる。(太田浩信)

 この3、4年、近親者だけで遺体を直接火葬場へ運んで見送る「直葬」が急増。家族だけの「家族葬」も定着し、葬儀の簡略化が進む。地方から都市に出てきたことで寺との関係が切れ、高齢化で知人や友人が先に亡くなるなどして参列者の数が減ってきたためだという。

 こうした中、イオンは昨年9月、独自の品質基準に合格した全国410の葬儀社と提携し、葬儀サービス事業に参入した。棺、骨つぼ、位牌(いはい)の代金や祭壇設営費などの単価をすべて明らかにし、29万8千~148万円まで6段階のプランを用意。人数で変わる返礼品や飲食代なども含めて葬儀全体にかかる金額を見積もり段階から明示し、費用を透明化した。今月10日からは菩提寺(ぼだいじ)を持たない人へ僧侶紹介サービスも開始した。

 ◆お坊さんを知らない

 新サービスのきっかけは、利用者からお布施の金額への質問が相次いだことだった。「檀家(だんか)関係があれば相場も分かるが、都内だと6割以上の利用者がお坊さんを知らない。『お坊さんを紹介して』『お布施はいくら?』との要望、問い合わせに応えたかった」と、イオンリテールの広原章隆イオンライフ事業部長。

 主要8宗派の代表寺院と連携し、約600の寺を紹介。通夜や葬儀などの読経と戒名のセットでのお布施は「信士信女」の普通戒名は25万円。「居士大姉」は40万円、「院号居士大姉」のつく戒名では55万円のお布施を提示する。普通戒名による直葬の場合は10万円のお布施となる。

 ◆心の問題にもかかわり

 一方、島田さんは現在の葬儀のあり方に疑問を投げかける。

 例えば香典は霊前に供えるもので、「香典返しはごく最近できた習俗で、業者がもうかるだけの非合理な方向に向かっている」と指摘。「墓や葬式、戒名が要るのか考えてみると、何となく要るものだとされてきた。よく考えると、なくてもいいかなと、みんなが思い始めている。墓を作らなくてよいならすごく楽になる」と話す。戒名についても「日本にしかない、寺を維持するためにできたシステム。寺と檀家関係がなければ戒名料を支払う必要はない」と言い切る。

 島田さんはまた、葬式のときだけにしか接する機会のない仏教と普通の人との関係はいっそう希薄化していくと指摘し、「現在の仏教のあり方は大きな曲がり角に来ている」とみる。そのうえで、「人は誰もが死や死後に対する不安を抱えており、心の問題に仏教界が果たすべき役割は大きい。(葬式だけでなく)そういうところに積極的にかかわっていくべきだ」と提言する。

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 ■葬式費用、全国平均231万円

 ◆事前見積もりの葬儀社も増加

 厚生労働省の平成21年人口動態統計(推計)によると、昨年1年間の死亡者数は約114万4千人。前年より約2千人増え、高齢化の進展で死亡者数は今後も増加が見込まれる。

 葬式にかかる費用は、平成19年に日本消費者協会が行った第8回葬儀についてのアンケート調査によると、全国平均で約231万円。インターネットのホームページで葬儀費用の事前見積もりが可能な葬儀社が増えている。戒名授与にかかる費用も、東京近郊で僧侶派遣を行う「おぼうさんどっとこむ」などのように金額の明示を行っているところもある。

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