宮崎県で猛威をふるっている豚や牛の伝染病、口蹄(こうてい)疫。宮崎県から子牛が出荷できず、子牛を育てられないことから各地のブランド牛にまで大きな影響が及ぶことが必至の情勢となってきた。「ひとごとではない」。口蹄疫問題で揺れるブランド牛の飼育現場からは不安の声も漏れる。東京都あきる野市でブランド牛「秋川牛」を育てる牧場を訪ねてみた。(高橋裕子)

 JR小作(おざく)駅=東京都羽村市=からバスに揺られて10分。都内とは思えないのどかな田園風景が広がる中に「秋川牛」を育てる肥育農家、竹内孝司さん(69)の牧場はある。

 畜舎には体長170センチはあろうかという牛が、さくで区切られたスペース内で8頭ずつゆったりと横たわっていた。畜舎独特のにおいはせず、ひのき風呂のような木の香りがする。床に敷かれたおがくずの香りだ。

 「床が汚れると牛は立ちっぱなしですが、清潔だから横になれる。おがくずには消臭効果もあります」。竹内さんの長男、孝英さん(40)は説明する。

 買ってまもなくの若い牛は広い畜舎にまとめられるが、出荷前にはさくで区切られた1頭分の“個室”に転居。「区切られていない畜舎のほうが掃除も楽ですが、出荷前には余計な消耗をさせずに体内に脂を蓄えさせて仕上げる」(孝英さん)のだそうだ。

 ◆平均6万円上昇

 竹内牧場は、子牛を買って独自ブランド「秋川牛」に育てる肥育農家だ。この牧場で育ち、日本食肉格付協会の格付けで、上から2番目のA4等級以上を獲得した肉を秋川牛としている。口の中でさらっと溶ける脂が持ち味だ。

 常時約300頭を20カ月ほど肥育し、年間約180頭を出荷。餌は栃木県産の稲わらが唯一の国産で、台湾産のサトウキビの搾りかすなどを与える。

 宮崎県から遠く離れているが、口蹄疫は「ひとごとではない」と竹内さん。「離れていても感染するかもしれず、戦々恐々です」。定期的な出荷には常に新しい子牛が必要だが、子牛の名産地である宮崎県のほか九州地区の競りがストップし、ほかの子牛市場が高騰することへの懸念もある。

 竹内さんは年10回程度、岩手県の岩手中央家畜市場の競りに参加し、1回20~24頭の子牛を購入する。5月19日から3日間の競りでは、「見たことのない人が大勢いた。1頭当たり5万円ぐらい高かったが、数をそろえたいので、いつもよりランクの低い牛を調達せざるを得なかった」。

 農畜産業振興機構によると、この競りの平均価格は前年同時期の1・18倍で約6万円上昇。同機構が20日までにまとめた5月の全国の子牛1頭当たりの平均価格は、前年比8・6%高い約39万円で、全国取引頭数も前年の2割に満たない。

 ◆不況も追い打ち

 ただでさえ、日本の畜産はコスト高だ。豚や鶏なども含めた日本の飼料の自給率は29%と低く、飼料を自国で調達できる米豪などに比べコストがかかる。

 長引く不況も追い打ちをかける。竹内牧場ではおがくずを富山県の木工業者から購入するが、不況で住宅など木工の需要が冷え込み、おがくずの量が減って価格も上昇したためだ。

 金をかけて育てても、出荷の際に高級肉でも高値がつかない。竹内さんの場合、子牛を35万~50万円で買って肥育し、100万円以上で出荷するのが目標だが、最近は85万円程度で売れるのがやっとだという。

 「よほど動物好きで、金勘定ができない人しかやっていけないよ」と竹内さんは苦笑いする。安い外国産牛肉に対抗するには、日本の畜産の飼育コストを下げることが肝要だが、口蹄疫の発生で実現はさらに遠のいたといえそうだ。

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