ウズベク暴動 『カスピ海3国』さざ波
テーマ:ブログウズベキスタンで起きた反政府暴動は、カリモフ政権のみならず、同じ強権支配に立つカスピ海沿岸の近隣3カ国をも揺さぶっている。4カ国はともにイスラム国家。指導者はいずれも旧ソ連共産党の流れをくむ。独裁体制に民衆の不満がうっ積していることでも共通しており、暴動の飛び火が懸念されている。 (モスクワ・常盤伸、外報部・稲熊均)
「世襲」「個人崇拝」「院政」「憲兵」-。
順に、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、カザフスタンのカスピ海沿岸三カ国、そしてウズベキスタンの強権体質を表すキーワードだ。
■「政略婚」まで
アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領(43)は一昨年十月、健康悪化の父に代わり大統領選に出馬し当選、世襲を果たした。
その二カ月後に死去する父ヘイダル氏は、ソ連時代、共産党中枢の政治局員にまで上り詰めた人物。党大会の演説で、十五分間に十三回、ブレジネフ書記長(当時)の名を挙げ賛辞した“伝説”も残す。ペレストロイカで一時失脚するが、故郷アゼルバイジャン共和国共産党第一書記として復活。ソ連崩壊による独立後も政敵を粛正し、イルハム氏を首相に抜てきするなど生前から禅譲の道を開いてきた。
トルクメニスタンのニヤゾフ大統領(65)は別名「トルクメンバシ(トルクメンの父)」。国中いたる所に肖像が掲げられ、自著「ルフナマ(精神世界)」は“現代のコーラン”とされ、学習を義務化している。自身は旧ソ連諸国で唯一の「終身大統領」となり、後継には息子が確実視される。
カザフスタンのナザルバエフ大統領(64)は「終身」でこそないが、「初代大統領法」で退任後も同氏の提案は「国家機関が審議しなければならない」と政治的権限の継続を規定。「院政」への保証を手にしている。さらには一族を国内の財界、メディアの要職に配置。三女は南隣キルギスのアカエフ元大統領の長男に嫁がせた。アカエフ政権崩壊で「政略婚」のもくろみは外れたが、今もカザフの後継者には、ほかの娘の名が挙がっている。
■原油利権絡む
こうした封建時代さながらの独裁体制には、カスピ海周辺のエネルギー資源による利権が絡む。アゼルバイジャン、カザフ、トルクメンを合わせた原油の推定埋蔵量はサウジアラビアの確認埋蔵量を超え、欧米や日本からの巨額投資が各政権の財政基盤を支えている。
一方、米国、ロシアなどが、四カ国の強権体制を容認する上で重要なのが、イスラム急進主義拡大に対する「防波堤」としての役割だ。各国内のイスラム過激派を封じ込めると同時に、イランやアフガニスタンの原理主義の北上を食い止める前線になってきた。
特にウズベクは旧ソ連域内で最もイスラム抵抗運動の激しいフェルガナ盆地を抱える。同国内で反政府イスラム勢力が伸張すれば、他のイスラム国家に抵抗運動が飛び火する。徹底弾圧でこの連鎖を阻止してきたカリモフ政権は「中央アジアの憲兵」と位置づけられてきた。カリモフ政権が揺らぐ事態になれば、「防波堤」はドミノのように崩壊しかねない状況だ。
三月のキルギス政変ももともとは、カリモフ政権の圧政から逃れたキルギス南部のウズベク系住民らの反乱が発端。今回のウズベク暴動は、いわば「憲兵隊の本陣」にやいばを突きつけられた形で力の支配が限界にきた表れともみられている。
■カリモフ政権すでに死に体 ロシア戦略研究センターピオントコフスキー所長
数百人の非武装の市民を殺害したカリモフ大統領は政治的には既に死に体だ。体制の崩壊は徐々に近づいている。
カリモフ氏は「私を支援しないとイスラム原理主義者が政権を奪取する」と強弁するが、欧米のウズベクに対する姿勢は変化してきた。米国はカリモフ支持の立場から離れつつある。
一方ロシアは、相変わらずの反テロでのカリモフ支持だが、最悪の選択肢だ。旧ソ連諸国での民主化を求める革命の原因は政権が非建設的かつ非効率的な運営をしていることにある。イスラム急進主義は汚職と貧困がはびこる場所で勝利するのだ。困ったことに、ロシアは変化する世界に柔軟に対応できないのだ。
おそらく次の危機はカザフで起こり、それはキルギス型のシナリオに近いものになろう。民主的な要素が少ないほど流血の事態となることは今回のウズベク暴動の事態が証明している。 (談)
(東京新聞)






