怖れを乗り越える方法(2)~怖れている事に慣れてみよう~ | 使えるビジネス心理学

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大谷常緑 講師:大谷常緑


先日テレビ番組で、金属が当たる音を聞くと体が反応して震えが止まらないという女性がそれを克服する様子が放映されていました。
その女性は、硬貨同士が擦れ合う音も苦手、家の鍵と鍵穴が当たる音も苦手といった状態で、例えばコンビニで買い物するのも怖い、人が多い商店街の中などもいつ金属の擦れ合う音がするかわからないので怖いという状態でした。
これでは生活に支障をきたすので、何とかしたいと番組に相談し、その克服作戦が行われました。
番組が行った事は、ゲームセンターでコインを使ったゲームを行わせるというものでした。
最初はコインを買うところから始まりました。
その女性は怯えながらも、コインを購入する事ができました。
次に購入したコインを使っておそるおそるゲームにチャレンジしていきました。
そしてゲームで勝ち始めると、いつの間にかコイン同士やコインと金属が擦れ合う音も気にならなくなっていきました。
今まで体が反応して震えが止まらなかった実際の硬貨や鍵でも検証されていましたが、体の震えも無く、金属が当たる音に対する怖れを克服できたのでした。

これは、認知行動療法の中の“暴露療法”と呼ばれる方法です。
心理療法には様々な方法があり、その原因は何かと追及して(気づいてもらって)心に刺さったトゲを抜く方法もありますが、認知行動療法では、原因を探すのではなく、今ある状況を認知(考え方や感じ方)と行動の側面から捉えて改善していく方法です。
この番組の場合は、怖れの対象である金属の擦れ合う音に敢えて触れさせて、徐々に慣れさせ、怖れに着目するのではなく、楽しむ中でその怖れを消去していった成功例かと思います。

一般的な暴露療法は、ハードルの低い部分から徐々にハードルを上げていく方法をとります。
例えば、高所恐怖症の人に対しては、1m、3m・・・というように徐々にハードルを上げる事によって慣れを段階的に作っていくのですね。

怖れの本質は、イメージです。
「あんな事が起きるのではないか」「こんな事になるのではないか」とイメージを膨らませてしまって、足がすくんで取り組めない状態になるのですね。
一方、勇気をもって取り組んだとしても、平常心でない度合だけ何か歯車が噛みあわず、結果的にうまくいかなくて「やっぱり思った通りになった」という結末に至る事もあります。
しかしながら、ここで大切なことは“あきらめない”事です。
怖れはイメージが作り上げているものですから、逃げれば逃げるほど更に大きく膨らんでいきます。
向き合って、その怖れを克服する取組みをハードルが低いレベルから徐々に行っていく事こそが大切なのです。
人間は、慣れていくものです。