「復活の地」小川一水 / 都市復興を描く、新感覚SF
テーマ:SF小説・スペースオペラ明確な哲学や経済観念のもと、効率的に機能する組織を構築して共同体を運営する。
というとなにやら企業論のようだが、これは国家経営に通ずる命題でもある。
いやしくも政治経済に関心のある者なら、国権の側に立って大鉈を振るい、自らの手でよりよい社会制度なり社会資本を整備してみたいという願望を抱いたことがあるだろう。
もっと計画的に、もっとスピーディーに!
阪神大震災に代表される災害時に、その思いを強くした人間は多かったはずだ。僕なども、政府や行政による愚かにも非効率な対応に歯噛みし、そろわぬ足並みに天を仰いだものだ。
国家規模の非常時においては、無軌道に散逸する国権を一本化し、それを強力に律して事に当たる指導者の出現を、人は切望する。
だが、現実にはそれは不可能に近いだろう。なぜなら極端な全体主義を敷く国家以外では、そのような統制は平時において解体に向かうからだ。
この絵空事を異世界において実現させたのが、本書「復活の地」である。
ざっと、あらすじを紹介してみよう。
現代の我々とさほど違わない科学力を有し、惑星レンカに存在する大陸諸国家を統一したばかりのレンカ帝国。辺境太陽系の主として、いよいよこれから星間国家の仲間入りを果たそうとする矢先に、その事件は起きる。
未曾有の大地震によって首都が壊滅的な打撃を受けてしまったのだ。
死者55万人を数えるほどの震災で一瞬のうちに政府高官や議員は死滅してしまい、わずかに残された役人の権限ではとうてい事態を打開できるはずもなく、国家機能はたちまち麻痺状態に陥る。
街は燃え人々はバタバタと倒れていき、暴動まで巻き起こる混乱のなか、緊急避難的に強権を与えられ復興業務を任されることになった若き文官ランカベリーは、瓦礫と化した首都でほとんど超人的な働きをみせ、ほぼ独力で国家機能を立て直していく。
右往左往する各省庁を強引に掌握し、復興院総裁の名のもとに強権を発動してどんどん復興作業を推し進めていく彼はしかし、その先鋭的な哲学に裏打ちされた大胆な施策と、既存秩序の破壊を厭わない都市計画ゆえに次第に孤立していくこととなる。
そこに軍部と結託した生き残り議員の野心や、虎視眈々と惑星レンカを狙う星間国家群の政治的思惑、微妙な帝政問題がからまってついにランカベリーは罷免され、状況はますます混迷化していくのだった――――。
わが国の歴史的災害、関東大震災と阪神大震災で噴出したさまざまな事象を取り入れ、かつ星間国家群という大きな装置を導入して編まれた、緻密にして気宇壮大な物語。
すごい、の一言だ。文句のつけようがない。
と、いいたいところだが。
風呂敷を広げすぎて人物描写が類型的になってしまったのが致命的。もちろんメインとなるキャラクターたちには色々な艱難辛苦が用意されていて、それに伴った成長や和解などのドラマチックな仕掛けも施されているんだけれど、いずれも予定調和に終わってしまうのが残念。
これだけの叙事篇を書ききってしまおうとすれば、それもまあ無理もない話ではあるが。
個人的には星外の演者をすっぱり切り捨てて、単純に国家再建の物語に圧縮してもよかったんじゃないか、と思わなくもない。
が、それはそれとして、ここまでの多層構造を小説に盛り込んだ作者の気概には心底感服する。
今後の創作活動に大いに期待したい。
オススメ度★★★★
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1 ■ありがとうございます。
おお、読んでいただけたのですね。ありがとうございます。
>風呂敷を広げすぎて人物描写が類型的になってしまったのが致命的。
いや、これ違うのですよ。風呂敷を広げたためで、ではなくて、そもそもこの人は類型的にしか人物が描けないんです(汗)。ある程度、入り口の敷居を低くするために確信犯的におこなっている節はありますが、そもそもSF書きには、人間を描けない人が多く、その類型の一つなのではないか、と僕は思っています。過去にアマゾンでいくつかの評を書いたときも、全ての作品で人物描写が予定調和で、青臭すぎると批判していたのですが、、、でも、逆に言うと、そのライトな読み口が読みやすさにつながっているので、なかなか評価した害です。もともとジャンプのライトノベル大賞か何かで出てきた人なので、そのへんは、これから期待する感じです。
でも、それでも、大地震や組織論の切り口はなかなかに、良くないですか?。わかりやすいし。僕はこの本で、後藤新平が気になって、読むようになりました。そういう喚起力があるのは、なかなかに素晴らしいと思うのです。