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2017-06-11 10:22:23

家族はつらいよ2

テーマ:cinema

新宿ピカデリー、スクリーン8入口脇に表示されたポスター。
監督:山田洋次 / 脚本:山田洋次、平松恵美子 / 製作:大角正 / プロデューサー:深澤宏、三好英明 / 製作総指揮:迫本淳一 / 撮影:近森眞史(J.S.C.) / 美術:倉田智子、小林久之 / 照明:渡邊孝一 / 編集:石井巌 / 録音:岸田和美 / 衣装:松田和夫 / 装飾:湯澤幸夫 / 音楽:久石譲 / タイトルデザイン:横尾忠則 / 出演:橋爪功、吉行和子、西村まさ彦(西村雅彦)、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、中村鷹之資、丸山歩夢、小林稔侍、風吹ジュン、劇団ひとり、笑福亭鶴瓶 / 配給:松竹
2017年日本作品 / 上映時間:1時間53分
2017年5月27日日本公開
公式サイト : http://kazoku-tsuraiyo.jp/
新宿ピカデリーにて初見(2017/6/9)

[粗筋]
 熟年離婚の危機を辛うじて乗り越えた平田家に、ふたたび嵐が起きようとしていた。
 家長・周造(橋爪功)と同居する長男・幸之助(西村まさ彦)と史枝(夏川結衣)の悩みの種は、周造の運転技術だ。未だにゴルフだ釣りだ、と頻繁に自家用車を乗り回す周造だが、近ごろ愛車はすっかり傷だらけになっている。最悪の事故を起こしてしまう前に免許証を返上させたい、と考えはじめた幸之助夫婦だが、頑固な父にはなかなか持ちかけづらい。
 そこで幸之助夫妻は周造の長女・成子(中嶋朋子)に下駄を預けるが、娘ならなおさらに侮るだろう、と考えた成子は更に次男・庄太(妻夫木聡)に連絡する。庄太ではなく、以前の経緯から周造がいまいちばん気を許している庄太の新妻・憲子(蒼井優)に説得させよう、という魂胆だった。
 しかし、こういうときばかりはやたらと勘の冴える周造は、却って意固地になってしまった。とはいえ、父のためにもことを看過するわけにはいかない。幸之助達は改めて説得の気を探ることにした。
 そんな矢先、ちょっとした事件が起きる。周造は妻の富子(吉行和子)が文芸サークルの催しで北欧に旅立ったのをいいことに、短い独身生活をエンジョイしようと、かねてから懇意にしている小料理屋の女将・かよ(風吹ジュン)を誘ってドライブに出かけるが、その道中、意外な人物と遭遇したのだ。
 それは先だっての同窓会でも話題に上っていた、周造の同級生であり、借金を背負って以降30年も行方知れずだった、丸田吟平(小林稔侍)であった――。

[感想]
 小津安二郎監督の傑作『東京物語』にオマージュを捧げた『東京家族』を、家族構成はそのままに、コメディとして昇華させた『家族はつらいよ』の続篇である。
 ここまで行くともはやオマージュとは呼びがたいが、そもそも前作自体がそうだったように、本篇も『東京物語』を観ておく必要はない。それどころか、恐らく前作を知らなくとも楽しめるはずだ。それほどにこの作品は平易で親しみやすい作りになっている。
 だがそれも、作り手が現代の家族を巡る問題についてしっかり下調べをし、咀嚼したうえで表現しているからだ。前作のテーマは“熟年離婚”だったが、今回は高齢者の事故多発を背景として広がる免許返納の問題を軸に、多くのひとびとが孤立する“無縁社会”について言及している。いずれも、観客の多くにとって他人事ではないだけに伝わりやすいが、その伝わりやすさは、登場人物たちの設定に応じたリサーチが行き届いているからだ。免許返納もそうだが、高齢者の事故問題に配慮して作られた高齢者講習の制度も話に組み込まれているし、返納を勧められる高齢者側の目線からも物語を構築していて親近感が持てる。確かに、当事者にしてみれば、まだ矍鑠としているつもりなのだから、免許を返上しろ、と諭されても納得がいかない。しかし家族の側にしてみれば、当人の運転技術の衰えは明白なのだから、大事に至る前に取り上げてしまいたい、と考えるのも道理だ。どちらの心情も理解しやすいから、そこから発展するユーモアがきちんと活きる。
 免許返納の話と“無縁社会”というテーマについて、本篇の扱い方では厳密にはリンクはしていない。しかし、そこを話の中ではスムーズに繋げていく手管は巧みだ。物語の中心である平田家の家長・周造と、劇中ではいちばん振る舞いが善良な次男の庄太とその妻・憲子の目線を用いて、高齢者が孤立していく現実を繊細に織り込んでいる。庄太夫妻の優しい視点と、周造の生々しい実感とが、“無縁社会”の過酷な現実を柔らかく、そして程よいユーモアを添えて描くことに寄与しているのだ。
 言うまでもないことだが、本篇の中心である平田家は、色々とトラブルを抱えているようでも、世間一般から見ればかなり幸せな一家だ。ちゃんと家があり、家長は孫まで二世帯で同居している。それぞれに独立した子供たちも連絡は密であり、何かあれば集まって家族会議を催すこともある。本来湿っぽさが先に立つ終盤の展開も、こういう家族の姿があるからこそ、どこか暖かい。
 現代の過酷な世相を織り込みながらも、観終わっての余韻はとても快い。細かにちりばめられた笑いがきちんと効果を上げていることもさりながら、本篇はこの家族構成であればこそ、世知辛さと向き合いながらもいい気分で鑑賞出来るのだ。ぽつぽつとちりばめられた毒も効いている、上質のコメディ映画である。
 なお、冒頭で記した通り、下敷きにした『東京物語』や前作『家族はつらいよ』どちらも観ていなかったとしても問題なく楽しめる仕上がりだが、それでも両作を観ておくと更に味わい深く鑑賞出来ることは間違いない。本篇を劇場で鑑賞したあとでも構わないので、もし本篇の世界観、ムードを快く感じたのなら、是非ともこれらの作品にも触れていただきたい。

関連作品:
家族はつらいよ
砂の器』/『幸福の黄色いハンカチ』/『たそがれ清兵衛』/『隠し剣 鬼の爪』/『武士の一分
かぐや姫の物語』/『思い出のマーニー』/『風立ちぬ』/『ゲド戦記』/『グスコーブドリの伝記』/『STAND BY ME ドラえもん』/『春を背負って』/『この子の七つのお祝いに』/『コクリコ坂から』/『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE2 サイキック・ラブ』/『内村さまぁ~ず THE MOVIE エンジェル
東京物語』/『秋刀魚の味』/『この世界の片隅に』/『サバイバルファミリー
 

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