「どうしたのだ? 人鳥よ――」


 顔を上げると、傍らに鳳凰が立っていた。


「いえ――。少し、昔のことを――」


 人鳥は、立ち上がって、答えた。
 鳳凰は、そのままでいい、という風に頷いた。


「そうか、あの日の事を思い出していたか」


 人鳥は、頷いた。


「はい――。僕にとって、大切な日ですから――」


 眼下に、小さな村が広がっている。
 自分と同じくらいの年頃の子供が、元気よく駆け回っているのが見える。


「あの日、鳳凰さまが声をかけてくださったから、僕は今、ここにいます」


 鳳凰は、フッ、と笑った。


「遅かれ早かれ、そなたは頭領になっていたであろうよ。そなたには、それだけの才能がある」
「僕のこの能力は――、天から授かったものに、すぎません。でも、だからこそ――。僕は、里のために――、みんなのために、この能力を使いたい――」


 そうだな、と、鳳凰は言った。


「そのためにも、我等は、今のこの任務を、何としても成功させなければならぬ」
「はい――。四季崎記紀(しきざき きき)の完成形変体刀十二本――。それさえあれば、里を救うことができる――のですよね」
「そうだ。十二本揃えて、然るべき所へ売り渡す。その金さえあれば、里は救われる。必ずや、里の未来は安泰となるであろう」


 真庭の里は、今、危機に瀕している。
 それを救うには、莫大な資金が必要だ。
 一本で国ひとつ買えるともいわれる四季崎記紀の完成形変体刀――。
 奇策士よりも、否定姫よりも、誰よりも――。
 誰よりも先に十二本を蒐集する――。
 それが今の、彼らに与えられた任務。
 里を救うための、起死回生、一か八かの大任務――。
 既に何人もの頭領が落命し、もはや後戻りのできないところまで来ていた。
 この先、どんな運命が待ち構えているか、分からない。
 次は、自分の番かもしれない。
 だけど――。


「さて、そろそろ立つか」


 人鳥は、はい、と頷いた。
 立ち止まらない。
 迷いはしない。
 たとえ、この身を捧げることになろうとも――。
 進み続ける。
 後戻りはしない。
 大好きな里――。

 戦うことを好まざるとも――。
 かけがえない、大好きなものを、この手で守るために。
 人鳥は、立ち上がった。
 その小さな身体で地を踏みしめて――。
 人鳥は行く。
 真庭の忍として。
 真庭の頭領として。
 真庭の民として。
 過酷過ぎる運命に、身を投じていく――。



<了>


☆あとがき☆

というわけで、いかがでしたでしょうか。

こんな感じで、大きな決意があったんじゃないかなあ、的な感じで読んでいただければ幸いです。

で、実は結構間違いというか、勘違いによる設定ミスが混ざってます。

例えば――。


頭領の引継ぎ … 頭領の名前が固定されてるわけではない、ってのを後で知ったり。(爆

            こりゃちょっと、どうしようもないですね、ハイ。^^;

名前とか … 上と関連しますけど、名前は最初からあの名前っぽい。

         おそらくは、元服した時にあの名前が与えられるのか、忍者として実戦に組み込まれた時に与えられるのか――。

         まあ、とりあえずあれは幼名、ってことでお願いしまs(ry

鳳凰の呼び方 … 単純な記憶違いです。“そなた”はとがめで、鳳凰は“おぬし”でしたね。^^;

人鳥のこと … 第十一話『毒刀・鍍』を未読未視聴だったので、最後に『戦いたくなんかなかった』発言をしてることに後で気づいたという大失態。(爆

          書くなら、そこ読んでから書け、的なことですよね、ハイ。><

          とりあえず、微妙に修正はしてありますけd(ry


まあ、そんな感じでミスだらけですが、そのあたりはご容赦を。^^;

また、二次創作作りたいですね~。

ということで、また次回作(があれば)でお会いしませう☆


ではでは☆ノシ