旧・日常&読んだ本log

流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

以降の更新は、http://tsuna11.blog70.fc2.com/で。


テーマ:
朱川 湊人
いっぺんさん (いっぺんさん)

花まんま 」以来の朱川さんです。

舞台は「花まんま」とは違って大阪の下町ではないけれど、やはり「東京」が遠い地方都市を舞台にしているように思います。そして、ノスタルジックで、少し、こわい。

目次
いっぺんさん
コドモノクニ
小さなふしぎ
逆井水(さからいみず)
蛇霊憑き
山から来るもの
磯幽霊
八十八姫(やそやひめ)


たとえば、子供の頃の思い出を語るようなお話においては、重松清さんが描くような世界になってもおかしくはない。そこをぐぐぐ、と怪異の側に舵を切るのが朱川さん。「怪異」の味付けには、濃淡があるようにも思うけれど…。

■「いっぺんさん」
どんな願い事も一回だけ叶えてくれるという「いっぺんさん」。友達のしーちゃんの願いとは…。
働かず、暴力をふるう父、父の代わりに生計を支える母、そして幼い弟妹たち。追い討ちをかけるように、しーちゃんは病に侵される。「いっぺんさん」ははたして、しーちゃんの願いを、私の願いを叶えてくれたのか?

■「コドモノクニ」
冬『ゆきおんな』、夏『くらげのおつかい』、春『いっすんぼうし』、秋『かぐやひめ』の四篇からなる子供のお話。ソシテ、コドモタチハ……。

■「小さなふしぎ」

昭和四十年代初めのお話。父が大病を患ったため、貧しい暮らしを強いられていた私たち家族。貧乏は辛くはなかったけれど、幼い弟たちに駄菓子すら買ってやれないことが辛かった…。私は「鳥使い」の中山さんの手伝いをして、小遣いを稼ぐことになる。
自由を奪われ、小鳥の御神籤なる芸をする鳥のチュンスケと、戦争で片腕を失った中山さん。彼らが不幸だと誰が決めた? そうなった以上、自分のやり方で生きていくしかないではないか。そして、チュンスケの死後に現れた怪異。中山さんの取った行動とは…。

■「逆井水」
この一篇だけは、ちょっと毛色が違って、ユーモラスでもあるのかも。
世界を見てやろうと、中古のバイクを手に入れ、旅に出た三十歳、無職となった俺。
旅先で知り合った美女と、首尾よくベッドイン。さらに、その女が言うには、播菩山という山を回り込んだところにある小さな村には、若い女しかいないのだという。男の人がいない村。若さとタフさを見込まれた俺は、女の妹がいるというその村へ行ってみてはどうかと勧められる。どんなに居心地が良くとも、村にいるのは二日まで。それだけを忘れるな、というのが女との約束だったのだが…。

■蛇霊憑き
どうして、こんなことになってしまったのでしょう…。姉が語る、妹アケミの物語。
怪談に良くあるパターンと言えばそうなんだけれど、ぞーっとします。


■山から来るもの

母に恋人との時間をプレゼントするつもりで、年末に山間の田舎町にある母の実家へと帰った阿佐美。山の方へは近付かないように、と祖母に注意を受けるのだが…。山の近くで阿佐美が見てしまったもの。それは年に一度、山の奥の神社からこの世に降りてくる餓鬼。それを見た者には不幸が訪れるのだという。
「何があってもあーちゃんの味方」と言っていた、祖母の豹変ぶりが痛い。

■磯幽霊

北陸の親戚の家へと向かった小説家の私。私が海岸で出会ったのは、イヤリングを探す女の幽霊。危うく幽霊に海へと引っ張り込まれそうになった私。そんな私の元に、子供のころ、その幽霊となった女に誘拐されたことがあるという、奇妙な男がやって来る。

■八十八姫

僕が育った山間の小さな村では、姫さまが八十八年に一度交代する、「姫うつり」の儀式が執り行われていた。けれどその瞬間まで、まさか本当に村の女性の中から後継者を選ぶだなんて、僕は思ってもいなかったのだ。
淡い恋心を抱いていた君、羽純に届いた姫さまの「お知らせ」。
あれから三十年がたち、あの村は既に地図から消えてしまった。でも、僕の心の一部は、あの日、確実に動きを止めてしまったのだ。

ノスタルジックな朱川ワールド。すべてが後味の良い終わり方を迎えるわけではないのだけれど、この世界を堪能しました。
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テーマ:
北森 鴻
親不孝通りラプソディー

前作、「親不孝通りディテクティブ 」のラストから鑑みて、こりゃ、このシリーズの続きが書かれることはないのかしら、と思っていたのだけれど、そうか、この手があったのか!の時間遡り手法により、続編が可能に。

ってことで、本作はあの博多の親不孝通りを駆け回っていた、根岸球太(キュータ)と鴨志田鉄樹(テッキ)のかもねぎコンビの高校生時代のお話なのです。

高校生ということで、キュータのお調子者ぶりは前作を凌ぐもの。
前作のノリが合わなかった方にはお勧めしないけど、前作を楽しまれた方は是非是非♪

高校生にして美人局に引っ掛かり、進退極まったキュータは、彼なりの悪知恵を働かせ、打開策を考え出した。それは、「あってはならない金」を奪うこと。裏世界との繋がりの深い豊濱信用金庫から、非合法のお金をちょいと頂きましょうというわけ。かつ、キュータの手元には、警察の射撃訓練場から盗み出した弾丸があった。これをもってすれば、裏の組織からも表の警察からも追われることなく、首尾よくお金が手に入るはずだったのだが…。

誘ったテッキに振られた事からケチが付き始め(ま、普通はそうよね)、同じく金を必要としていた「狂犬キョウジ」を相棒としたあたりから、事態はキュータの手に負えるものではなくなっていく。おまけに「ちょいと三千万」という目算が狂い、彼らが手にしたお金はなんと一億二千万円!

恋するテッキも、キュータの危機を受けて立ち上がる内に、なぜだかずっぽりこの事件にはまり込む羽目に…(これは、高校生の頃から、二十代の後半に至るまで、全く変わってないのね…)。キュータの父、根岸建設社長の選挙、根岸建設最古参のセンジイのキュータへの手助け、射撃場の弾丸の線条痕の持ち主、数年前に起こった現役警察官による現金強奪事件、山沢組の内部抗争、北朝鮮の工作員、もろもろを巻き込んで、健全な高校生活とはかけ離れた、二人の青春(というか、青春に大きな傷を残した事件?)が描かれる。ま、そりゃ、こんだけ大きな体験をしたら、それは二人の腐れ縁にも納得がいくというわけですよ。それが友達、と言われればそうだけど、これだけの体験をして、キュータを見捨てないテッキもすごいけど。勿論、キュータの存在はある意味、テッキの癒しになっていたわけだけれど、それにしたって借りの方が絶対多いってば、キュータ。

前の時にこんなに強かったっけ~?、とそこはあまり記憶になかったのだけれど、テッキ、滅茶苦茶強いです。何でも、中学生のころに別れた父に、三歳の頃から叩き込まれた技があるのだとか。テッキのお母さん、美枝子さんもなかなかいいキャラでして、テッキはちょっとマザコンなのかもしれません(ああ、でも、親のそんなシーンは見たくないぜ)。

とりあえず、博多の夜は、まだまだ熱そうですよ?

時々イラっとくるけど、なんだか憎めないキュータのさまには、裏京都ミステリー のバカミス作家、ムンちゃんを思い出す。そういえば、あれも、どちらかといえば硬派なアリマジロと、お調子者のムンちゃん、もしくは折原けいとのコンビだったな。

(以下、若干のネタバレ)
・屋台の権利を買ったお金の出所が分かる。
・ラストにはスニーカーの踵を踏みつぶし、ぺたぺた音を立てて歩くあの懐かしい足音が!

目次
プロローグ
第一章 ねぎ①
第二章 かも①
第三章 ねぎ②
第四章 かも②
第五章 ねぎ&かも
第六章 四つのカップ
第七章 転々
最終章 グッド・バイ!?
エピローグ
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テーマ:
森福 都
狐弟子

ズルかったり、せこかったり、愚かだと分かっていても色香にくらくらしたり、はたまた愛しい相手に憎まれ口をきいてみたり、実際に生きている人間なんてそんなもの。でも、そんな中にも、純な心や思いやりが時に隠れていたりもする。それは、老若男女を問わぬものであるし、場合によっては人ならぬ身のものでさえも・・・。

現代にあっては、それらの人間の特徴は、鼻白むものでもあるかもしれねども、舞台は中国唐代の長安や洛陽。怪異、怪奇が程よく混じって、魅力的な奇譚集となった。

目次
鳩胸(きゅうきょう)
雲鬢(うんびん)
股肉(こにく)
狐弟子(きつねでし)
石榴缶(せきりゅうかん)
碧眼視鬼(へきがんしき)
鏡像趙美人(きょうぞうちょうびじん)

「雲鬢」
髪結いにして盗賊である丹桂が初めて想った女、芸妓の季玉が、前途洋々たる新進士様、思安に嫁ぐのだという。芸妓が科挙に合格した進士に嫁ぐなど、例にないことではあるが、思安は道を踏み外した彼を支え、正道に戻した季玉の恩を、彼女を娶る事で報いようというのだ。
さて、思安の昔の悪い仲間たちの話から、偶然、季玉の危機を知った丹桂は、彼女を救い出すが、巻毛であったはず季玉の長い髪は、清水のように真っ直ぐな髪に変わっていた。「あんた、いったい何者だ」。
でも、ここから更に一ひねり! 最後を読んでうーん、となる。

「狐弟子」
洛陽城中の敦化坊は全真寺なる破れ寺に、狐の化身と名高い毛潜と名乗る老人が住み着いていた。境内にある楡の大木の虚は狐の村に通じていて、その村の一等地には毛潜の豪邸があるとの専らの噂。
さて、毛老人の元に、孝児と名乗る痩せこけた少年が、狐になりたいと弟子入りを志願する。毛老人はいいように孝児をこき使うのであるが・・・。
狐になりたいと真摯に願う孝児に、柄にもなく同情する毛老人とは反比例するように、逞しくなっていく孝児がいいんだ。毛老人もいうように、孝児は既に、なかなかどうして立派な子狐ではありませぬか。

「石榴缶」
幽鬼を腹の中に取り込んだという、蘭圭少年。彼は見目の良い姉、瑞芳と組んでの卜占を生業としていた。零落寸前の医家の息子、恒之は、偶然にこの姉弟と知り合い、成り行きで武后の実母、栄国夫人の元に、頭痛を治す名医として父を送り出す事になる。
実を言えば、蘭圭に取り付いた幽鬼は、彼が恒之に話したような非力なものではなかった(なんてったって、彼自身が幽鬼だったのだから!)。そしてまた、卜占によって幽鬼が手を出しても出さなくても、人の運命の大きな流れは変わらない。それはもう決まっていることなのだから。しかしながら、端から眺めただけの運命の浮沈に、当人が感じる幸福の度合いは必ずしも左右されない。幽鬼は人間に、長い時の中の極点ではなく、須臾の間に幾度でも幸福を感じる才を請い願う。
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テーマ:
 
北森 鴻
親不孝通りディテクティブ  

目次
セヴンス・ヘヴン
地下街のロビンソン
夏のおでかけ
ハードラック・ナイト
親不孝通りディテクティブ
センチメンタル・ドライバー

最近、民族学を絡めた蓮丈那智シリーズ や、旗師・冬狐堂シリーズ から、微妙に北森鴻氏にはまっているワタクシ。今回は、図書館にあったのでこちらの本を。

しかし、北森さんってすっごい多作な方なんですね。amazon見に行っても、たっくさーんの著作が出てくるですよ。

さて、これは蓮丈那智シリーズや、冬狐堂シリーズとは異なり、民族学、美術品も出てこないし、主たる登場人物だって、大人の女性ではなく、博多っ子の若い男性。多作でもあり、守備範囲もイロイロなのねと、ちと感心。


「親不孝通りディテクティブ」までは、何というか池袋の街にはマコトが!、博多は天神、親不孝通りにはテッキとキュータのコンビがいる!、という感じでバサバサと地元で起こった事件を解決していくスタイル。マコトの方が若いけれども、ストリート探偵モノといった趣き。基本的にはお金にならない仕事だし、厄介ごとを持ち込まれて、それを解決していく感じ。謎解きというよりも、街の雰囲気や、登場人物の会話、行動なんかを楽しむ所も、IWGPシリーズと似た印象を受ける。

「俺」ことテッキは若い頃は東京にいたけれど、何かをやらかして博多に舞い戻ってきたらしい、哲学科くずれのちょっと一家言ありそうな、二十代も後半の屋台のオヤジ。屋台といってもおでんにラーメンに、カクテルが出てくる所等、少々洒落てもいるのかも(とはいえ、不評のカクテルも多いんだけど)。

二十代後半にしては少々落ち着きすぎたテッキとコンビを組むのは、お調子者で愛に生きる結婚相談所の調査員、こちらはおそらくずっと地元っ子、バリバリの博多弁を操るキュータ。

高校時代からの腐れ縁、テッキとキュータは、持ち込まれた厄介事をそれぞれのやり方で解決していく。「俺(テッキ)」と「オレ(キュータ)」の一人称が、章毎に交互に続くスタイル。脇を固めるのは、二人の高校時代の恩師であり、今はキュータの勤める結婚相談所の代表である、「オフクロ」こと華岡妙子。一癖も二癖もありそうな、博多署の悪徳刑事、ライブハウス《セブン》の経営者にしてシンガー《歌姫》などなど。

(以下、ネタバレ)
これ、なかなか顔ぶれも面白いし、シリーズ化も出来ちゃうんじゃないの?、とも思うんだけれど、「センチメンタル・ドライバー」に至って、テッキは後戻りできない事をしてしまうんだなー。そして、彼は博多の街から姿を消してしまう。IWGPシリーズで、マコトにも似たような事はあったと思うんだけれど(Ⅱの「水のなかの目」ね)、彼の場合はあくまで直接手を下したわけではないからなー。ま、こういったスタイルの物語では、探偵が当事者になってしまうのは、なかなかにむつかしいもの

最後の章まではいい調子で読んでいたんだけれど、最後がかなーり苦かったです。もっと他の方法はなかったんかい、とちょっと切ない・・・。ま、やせ我慢でハードボイルドチックな、テッキらしくはあるんだけれどさ。などと考えてしまう辺り、またしてもそれなりにはまったのかもしれませんが。

最後苦いし、力いっぱい面白かった!、とは言えないんだけれど、途中までは博多弁も、福岡の街の雰囲気も、ちょっとした裏の雰囲気も楽しく読んだ。あの終わり方は何だか勿体無いよ、と私は思う。
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