旧・日常&読んだ本log

流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

以降の更新は、http://tsuna11.blog70.fc2.com/で。


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桜庭一樹
桜庭一樹読書日記―少年になり、本を買うのだ。

現在も、東京創元社の
こちら で連載されている、Webの読書日記の2006年2月~2007年1月分の書籍化です。

この本のいいところは、本文は上段にあるんだけど、下段に書影と、桜庭さんご自身や、編集のK島氏による簡単な本の紹介が載せられているところ! 何せこの「読書日記」には本がざばざばと贅沢に出てくるので、本の洪水に溺れないためにも、この構成は実にいいねえ。

桜庭さんにとっては、呼吸すること=本を読むことなんじゃないかというくらいに、とにかく、日々、本を読んでおられる。面白い本を読んでは、面白いっ!と叫ぶこの感性、この密度の読書の中で保っておられるのが凄いよなぁ。

桜庭さんが本を読んでないのは、直木賞受賞作でもある「私の男」を書くために音楽漬けになっている時くらい。意識的に本を読まず、自分を追い詰めているこの時期には、桜庭さんはどんどん痩せていってしまうのです(ま、これは「読んでない」せいだけではないとは思うけど)。

以下、本読みとしての心意気に、こちらも感動だった箇所。そうだよねえ、「やさしい」本ばっかり読んでると、自分がどんどん偏っていく気がするのだ。

 
わたしは普段、本や映画を選ぶときに、人が薦めるものをなるべく入れるようにしている。自分の選択だけだとどうしてもかたよって、その場所がせばまっていってしまう。せばまり続けるとちいさくなって完結して、そうなったら、死ぬ。
二〇〇六年八月のp144より引用)

 
帰宅して、なにを読もうかなぁと積み本を眺めていたら、なにか急に、怖くなる。東京に戻ってきたので新刊がいくらでも手に入るのだが、いや、自分の本も出たときは新刊なのだが、新たに出る注目の本ばかり追いかけると、まるで流行りのJ-POPを消費する若者のような心持ちで読んでしまう気がして、手が止まる。
 こういうことを繰り返したら、作家も読書も聞き分けがよくに通った、のっぺりした顔になってしまうんじゃないか。みんなで、笑顔でうなずきあいながら、ゆっくりと滅びてしまうんじゃないか。駄目だッ。散らばれッ!もっと孤独になれッ!頑固で狭心で偏屈な横顔を保て!それこそが本を読む人の顔面というものではないか?
(中略)
みんな、足並みなんか、そろえちゃ、だーめーだー……。古い本を!古い本を!むかしの小説を!読まないと死ぬゾ。
二〇〇六年十一月のp211-212より引用)

死ぬ死ぬ出てきちゃいますが(笑)、この切迫感も桜庭さん独特なのかなぁ。ご自身の小説は、私は「
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 」しか読んだことがないんだけど(そして、あまりの救いのなさに大ダメージを受けた)、桜庭さんの尖りや切迫感が少し理解出来たように思いました。

そして、本読みとしての目は実に確か! 自分が読んだ本については、うんうんとうなずきながら読んじゃうし、凄い本を凄いスピードで読んでるところには驚愕してしまうなぁ。普通、こんな濃い密度で読めないよ~。凄い本を探すのに、この本はオススメです。

■とりあえず、ざっくり気になったところのメモ■
愛についてのデッサン―佐古啓介の旅 (大人の本棚)
キャロル・オコンネル
淑やかな悪夢―英米女流怪談集

目次
二〇〇六年二月 読書にまつわるすごいこと(たぶん)を発見する。
二〇〇六年三月 町中に”なぞの女”がいる、気がする。
二〇〇六年四月 ジョン・ランプリエールが辞書になる!
二〇〇六年五月 夏木マリと、カー談義する。
二〇〇六年六月 直毛なのに、アフロである。
二〇〇六年七月 バナナの皮で、世界が滅亡する。
二〇〇六年八月 傑作の前を、歌って通りすぎている。
二〇〇六年九月 百匹の蠅が死に、百人の老人がやってくる。夏が、終わったのだ!
二〇〇六年十月 片手に二十世紀梨、片手に豆腐竹輪の夜である。
二〇〇六年十一月 「ビバビバ都会!野戦病院!」である。
二〇〇六年十二月 少年になり、花を買うのだ。
二〇〇七年一月 書店はタイムマッシーンである。
あとがき

*脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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近藤 史恵

タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)

目次
*Table des matieres*
タルト・タタンの夢
Un reve de Tarte Tatin
ロニョン・ド・ヴォーの決意
Une decision grace aux rognons de veau
ガレット・デ・ロワの秘密
le secret de galette des Rois
オッソ・イラティをめぐる不和
Une brouille autour d'un Ossau-Iraty
理不尽な酔っぱらい
Un misterieux ivrogne
ぬけがらのカスレ
Un cassoulet special pour elle
割り切れないチョコレート
Chocolats indibisibles
 初出一覧
 sources


メニューになぞらえた目次も実に楽しい!!

レストランとミステリと言えば、北森さんの香菜里屋シリーズ(最新刊の感想 )があるけれど、こちらもまた楽しく美味しい一冊でした♪

舞台は気取らないフランス料理を食べさせる店、ビストロ<パ・マル(悪くない)>。無口で武骨な料理長、三舟忍(表紙絵の人物ですね)に、にこやかでそつのない料理人の志村洋二、ソムリエの金子ゆき、ホール係の「ぼく」こと高築智行の四人でまわす小さなお店。接待や特別な日に使うというよりも、普段着の本当にフランス料理が好きな人間が集う店。

ほぼ新人(「タルト・タタンの夢」では、勤め始めて二か月、とある)の「ぼく」こと高築智行の視点で描かれるのがまたいいんだなー、きっと。フランス料理の説明なども、実に嫌みなく差し挟まれる。前述の香菜里屋のような凝った創作料理ではなく、フランスの家庭料理に近いものが出てくるんだけど、これがまたどーんとボリュームがありそうで、とっても美味しそう! きれいなテリーヌなどにしない、餅焼き網で焙った、分厚く切ったフォアグラ(同じく網で焼いたバゲット添え)など、いいなー、いいなー。餅焼き網が出てきたけど、料理長の三舟氏は道具に拘りのないタイプらしく、蒸籠なんかが出て来るところも面白い。

ホームズ役はこの料理長の三舟氏なんだけど、柔軟な頭を持つ人物であることが、こういったエピソードからも分かるよね。

レストランに持ち込まれる謎は、すべてお客さんが持ち込むんだけど、私はちょっと甘いかもしれないけど、恋人同士のある日の特別なメニューを描いた「ぬけがらのカスレ」と、家族の情景を描いた「割り切れないチョコレート」が好きでした。これ、シリーズ化されたりするのでしょうか。また続きも読みたいな♪
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ダイアナ・ウィン・ジョーンズ, 浅羽 莢子

グリフィンの年 上 (sogen bookland)

グリフィンの年 下 (sogen bookland)

ダークホルムの闇の君 」の続編です。続編があることは知っていたものの、でも図書館にはないしなぁ、と忘れかけていた頃に図書館で発見しました。

最初にこれを読んだ時は、グリフィンに両親の細胞が入っていて、だから子供達とグリフィンは兄弟なんだ、というあたりにクラクラしたもんですが、もう、今ではきっとこういうのを読んでも大丈夫。笑 「ダークホルムの闇の君」から舞台は八年後、今度はグリフィンのエルダが中心となります。あの悪名高き実業家、チェズニー氏によりテーマパーク化されていたこちらの世界も、何とか落着きを取り戻したところ。でも、エルダが入学した魔術師大学には、その頃の悪癖がイロイロと残されてしまっていて…。

表紙扉から引きます。

今年の新入生は問題児ぞろい。
北の国の王子に、南の皇帝の妹、魔術師の娘のグリフィンに、
革命家のドワーフ、首長国からきた青年に、出身を明かさない金持ちの娘。
いつのまにか仲良くなった6人だが、
じつはそれぞれに困った問題をかかえこんでいた。
一方、大学は、刺客がキャンパスに入りこむわ、
外套掛けは女子学生につきまとうわ、海賊は学食に乱入するわの大混乱。
グリフィンのエルダと友人たちは、この危機をどう切り抜ける?

解説=荻原規子


というわけで、これは魔術師大学の新入生たちのキャンパスライフを描いたものであり、ちょっと変形の学園ものと読むことも出来る。個性的な友人たち、個性的な先生たち(こちらの個性はあまり嬉しくないけれど)。楽しいよ!

魔術師大学は、チェズニー氏のあの時代に、魔法の研究を忘れ、「実際的な」魔術師たちを送り出すことに汲々としていた。ケリーダが引退して、若い魔術師たちが教授となり、自分で考えさせる事もなく、大見出しを写させる、大学ではそんな授業が続いてしまっていた。学生たちのことよりも、月に行くことで頭も予算もいっぱいな大学運営委員長コーコランを始め、教授たちは誰も彼もあまり頼りにならない。

そこに入学したのがエルダや、訳ありの新入生たち。
教授たちの授業に見切りをつけ、自分たちで本から魔法を学び、力を合わせて実際に刺客に立ち向かうための罠を掛けたりするところが良かったな~。

想像力も魔法も、自分たちが持っている可能性も、ここで終りと決めてしまったら、そこで終わってしまうけれど、ほんとはどこまでも羽ばたけるものなんだよね。そんなワクワクするような希望と未来を感じる物語。後半に向けて、物語は綺麗に大団円へ(「グリフィンの年」というタイトルの意味もわかります)。 これぞまさにハッピー・エンドでしょう。

 ← 文庫も
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大崎 梢
晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編>

配達あかずきん 」の続編、今度は出張だ!スペシャル。

いつものように成風堂で働く杏子のもとに、届いたのは一通の手紙。それは故郷に戻り、地元の老舗書店・「まるう堂」で働く、元同僚の美保からのもの。手紙が知らせるのは、「まるう堂」に持ち上がった幽霊騒動。杏子が常日頃から多恵の推理力を自慢していたために、是非探偵としてお越し頂きたい、との要請。

駅ビルの休館日、成風堂恒例の八月の休みに合わせ、老舗書店の見学も兼ねて、しぶしぶながら、杏子は多恵と二人、信州の高原へと赴くことになる。そこで待ち受けていたのは、四半世紀前の殺人事件の謎。老作家が殺され、弟子が逮捕されたこの事件、「まるう堂」に出る幽霊は、この弟子だとのまことしやかな噂。なぜ、こんな噂が流れるのか、真犯人は別にいたのか??

成風堂、出張編。前作は短編だったけれど、今回はこれ一本で読ませます。終盤付近で描かれる、弟子、小松秋郎の事情はあまりに陰惨なので、うわ、これ、そんな筋じゃなくても良かったのでは、とは思うのだけれど、あとは割といい感じなのではないでしょうか。ま、「歓迎 成風堂書店 名探偵ご一同さま ようこそ まるう堂へ」の横断幕には、杏子でなくともびっくりだけれど。

しかし、この人の本を読むと、自分も本屋が好きだとは思っていたのだけれど、自分なんかはまだまだなのだな、と思います。結局、本にかかわる仕事に就くこともなかったしねえ。この本の中、「まるう堂」こと、「宇都木堂書店」の店内や棚の様子の描写には、ほんとに愛が溢れてます。お店は店主の小宇宙なんだよね。ネット書店や図書館もいいけれど、時には地元の頑張ってる本屋さんで、買い物しなきゃなぁ。
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大崎 梢
配達あかずきん

駅ビルの六階にある書店、成風堂。働くは、店員の杏子、バイトの多絵(いや、勿論、その他にも働いておりますが)。

この成風堂を舞台とする、様々な謎。時に、病気の老人への本の差し入れから、事件の匂いを嗅ぎ取り(「パンダは囁く」:パンダといえば、あのYonda?よね)、時に老婦人の失踪から、彼女の亡くなった息子の秘密を読み解く(「標野にて 君が袖振る」)。時に、まるで赤頭巾のように配達先から帰らないバイトの「ヒロちゃん」の危機を救い(「配達あかずきん」)、時に、入院中の女性に本を選んでくれた「書店員」を探し出す(「六冊目のメッセージ」)。「ディスプレイ・リプレイ」では、まさしくこの成風堂が舞台となる。出版社の販促活動の一種、ディスプレイコンテストに、成風堂は人気コミック『トロピカル』のディスプレイで挑むのであるが…。

謎のボリュームも程良く、楽しくさくさく読めちゃう本です。しっかり者の店員の杏子がホームズ役かと思いきや、実際の謎解き役は勘の良い大学生の多絵。

杏子がお客のアヤフヤな情報を頼りに、目的の本を探し出すところが最初のシーンなんだけど、そこからノックアウトですよ。うわー、こういうの楽しそう! ぴたりと当てれば快感だろうけど、でも、毎日だとちょっと辛いかなぁ。ほんとにこういうお客さん多いんですかね?

やっぱり本絡みでいえば、「六冊目のメッセージ」もほのぼのと良いお話。成風堂では、五冊コンプリートした者はおらず、三冊読んでいた杏子が最高だったのだけれど、私もこの中では「ダヤン」しか読んでません。長谷川 哲雄さんも、浅田さんも違う本なら読んでるんだけど。

・林完次 「宙の旅」
・河合 雅雄、長谷川 哲雄 「散策ひと里の花」
・池田あきこ 「ダヤンのスケッチ教室」
・浅田次郎 「民子」
・ハインライン 「夏への扉」

そして、ここで彼と彼女が選んだ「六冊目」は、どんな本だったのだろう。最近とみに売行きを伸ばしている女性作家の、初エッセイ集、「特製ポストカードつき」。本文中にはタイトルなかったよねえ、モデルがあるのかしらん。

二作目も既に予約済み♪ 楽しみです。

目次
パンダは囁く
標野にて 君が袖振る
配達あかずきん
六冊目のメッセージ
ディスプレイ・リプレイ

書店のことは書店人に聞け
 青野由里 鶴岡寛子 伊藤久美子 飯窪由希子 戸川安宣
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米澤 穂信
犬はどこだ

何とか持ちこたえようとしたものの、力及ばず、糸がぷつりと切れたように、退職した「私」こと紺屋。東京のアパートを引き払って地元に戻り、約半年間のほぼ引きこもり生活を終え、彼が起したのは犬専門の調査会社。<紺屋S&R(サーチ&レスキュー)>。

ところが、地元の友人、町役場に勤める大南が気を利かせたお陰で、図らずも町の老人たちの間に「探偵さん」として宣伝されてしまったよう。持ち込まれたのは若い女性の失踪事件に、神社に伝わる古文書の解読。さらには、探偵に憧れる、高校時代の後輩、ハンペーこと半田平吉までもが、雇ってくれと<紺屋S&R>に現れて・・・。犬を探すはずだったのに・・・。犬はどこだ??

失踪人、佐久良桐子の足跡を辿るのは紺屋、愛車ドゥカティM400を駆って、古文書の由来を調査するのは、ハンペー。彼らはそれぞれのやり方で、担当した事件に迫る。

理知的で自らを頼むところが強かった桐子は、なぜ失踪したのか? 浮かび上がって来た彼女の姿に、紺屋は心ならずも退職せざるを得なかった、自らの姿を重ねるようになる。ハンペーにはやる気がないと評され、身体は疲れやすく、また仕事としての興味しか持てなかった桐子の失踪について、紺屋は血の通った人間としての興味を持ち始める。

さて、桐子を追うのは、紺屋一人ではなかった。彼女をネット上で追い詰めた、ストーカーの姿が紺屋にもくっきりと見えるようになる。そして、その間、ハンペーは何をしていたかというと、図書館や地元の老人を訪ね、ちゃらんぽらんな見かけによらず、きっちりと古文書の由来に迫っていた。両方の進捗を読んでいる読者には直ぐに分かるけれど、彼ら二人は最後までそれぞれが追うものの関連に気付かない。

ハンペーが追う古文書によれば、中世、戦国の世の人々は、ただ略取されるだけの存在ではなかった。時と場合によっては武器を取り、傭兵を雇い入れる「自力次第」の世界。民衆が常に弱く、虐げられる存在であると誰が決めた? それはまた、紺屋が追う桐子についてもいえる事。
そして、実に鮮やかな反転

最後はちょっとビターな味わい(探偵は警察ではないので、こういう物語もたまにはあるけど)。

春期限定いちごタルト事件 」、「夏期限定トロピカルパフェ事件 」などのほのぼのミステリから、米澤さんに入ったので、このビターなラストはちょっと意外だったけど、概ね楽しく読みました。
私立探偵紺屋、「最初の」事件ってことは、続編も出ると期待してもいいのだよね。

ハンペーのキャラもいいし、妹夫婦が営む喫茶店、<D&G(ドリッパー&グリッパー)>、彼らのキャラもいい感じ。未だ顔の見えないチャット相手の友人、<GEN>(紺屋のHNは<白袴>!)についても、追々明かされたりするのかな。
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北森 鴻
狂乱廿四孝
(画像は文庫より引きましたが、私が読んだのは単行本です)

一枚の幽霊画に隠された謎。

脱疽におかされ、両足両手を切断してなお舞台に立ち続けた、明治始めの名立女形・沢村田之助。彼の周辺で殺人や放火が相次ぐが、これには一枚の幽霊画が関係しているようで・・・。芝居町を守るため、守田座を守るため、そして田之助を守るため、座付き作者河竹新七のもとに弟子入り中の、ヒロインお峰は立ち上がるのだった。第六回鮎川哲也賞受賞作

沢村田之助はじめ、大道具方・長谷川勘兵衛、問題となる幽霊画を描いた狂画師・河鍋狂斎、守田座の座付き作者・河竹新七(のち、河竹黙阿弥)など、実在の人物を上手く絡めたミステリー。

話としては面白いし、女形・沢村田之助の凄惨とも言える芝居への思いには心打たれるんだけど、解説にもちらりとあったように、時代色が綺麗についているとは言い難い。ヒロインお峰ちゃんも実に愛らしいけど、この時代のこの場所に、こんな風に存在し得たとは思えないしね。

実はこの「幽霊画の謎」については、早々に投げ出してしまって、田之助やその周囲の人々、歌舞伎の世界を楽しんでしまった。田之助の色っぽさ、また芝居もの達の熱気がむんむん迫ってくるような物語だったよ。

ところで、ネットをウロウロさまよっていたら、皆川博子さんが同じ題材で書いておられると思われる本を見つけました。うーむ、こちらも読んでみたいなぁ。皆川さんの芝居の世界、「花櫓 」でも面白かったし。

皆川 博子
花闇

☆澤村田之助について (Wikipediaにリンク
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アン マキャフリー, Anne McCaffrey, 赤尾 秀子
だれも猫には気づかない

時は中世。エスファニア公国の名摂政、マンガン・ティーゲは、まだ若き領主、ジェイマス五世を残して、亡くなった。しかしかねてより、自分の魂が肉体から離れる時を悟っていたマンガンは、彼が死を迎える前に、様々な策を弄していた。例えばジェイマス五世が自分の死後困ることのないよう、分別のある助言者や、重臣たちを自らの目で選んでおく等。

さらに、そんなマンガンは、最後にとっておきの護衛を遺していた。その正体はなんと、ニフィという猫!黒煙色のニフィは、立派な狩人で華麗な銀色の縞猫、ミランダから生まれ、まだ幼い子猫の頃にマンガンの背によじ登って、自ら摂政マンガンを選んだのだ。マンガンの行く所には、いつもニフィの姿があり、ニフィはマンガンが多くの職務をこなす間、必ず傍にいた。

「猫というのは賢くて、人間にたよることなく、自分のことは自分でめんどうをみることができるのです。犬はつねに人がかまってやらなくてはいけません。でも猫は、友に値すると思ったら、その人間を受けいれてくれます。いったんそうなると、とても忠実で、かわいそうな人間が、猫にしか求められない友情を必要としているかどうか、敏感に感じとってくれるのです。」

実はこの賢き摂政マンガンが亡くなったのは、エスファニア公国が国境線の微妙な問題でもめている時期。血気盛んでまだまだ若輩である、ジェイマス五世がこの難局に当たらねばならない。南の隣国モーリティアには、自称エグドリル王、通称エグドリル熱心王と、その怖い怖い二人目の妻がいて・・・。

「熱心王」の名の所以は、あちらこちらの土地を「熱心に侵略し、占領した」ことによる。エスファニア公国の方が領地も広く、皇帝からさずけられた伝統ある公国だけれど、うかうかしていると、勿論熱心王に「熱心に」どうにかされてしまうというわけ。ジェイマス五世は、エグドリル熱心王から彼の姪三名を紹介され、その中の一人、レディ・ウィローと恋に落ちる。ウィローはジェイムス五世と思いを通じ合わせたものの、なぜか怯えた様子を見せる。

実は彼女の父親や、モーリティアの主たる人物は、熱心王の恐るべき王妃により、みな殺害されていたのだ。つまり王妃は、王の姪のうち誰かとジェイマス五世を結婚させた後に、ジェイマス五世を暗殺することで、エスファニアを自分のものにすることを狙っていたというわけ。ジェイマス五世の身に危機が迫る!ウィローやジェイマス、周囲の者たち(勿論、ニフィが大活躍!)の協力により、ジェイマスの身は何とか無事であったが、隣国モーリティアでは王妃による更に恐ろしい企みが進行していた。いつまでも王妃の影に怯えて暮らしているわけにはいかない!ジェイマス達一行は隣国へ出発する。

最後は勿論目出度し、目出度し。エスファニアの彼らも、モーリティアの人々も、これからは王妃の影に怯えることなく、きっと幸せに暮らしたことでしょう。

とまあ、話の筋はこのようなものなのだけれど、これはもうニフィ・キャットを楽しむための本。こわ~い王妃が類型的であろうと、ジェイマスとウィローが直ぐに恋に落ちようと、そんなことはどうでもいい「ゆたかな毛をもつ、ひとつの人格である」彼女、緑の瞳で微笑み返す彼女、のどをならす彼女、肩に飛び乗って頬にすりよる彼女、読み終わる頃には、きっと誰もがすばらしい(マグニフイセント)猫、ニフィの虜になっていることでしょう。ミイ!

短毛でふかふかなのもいいけれど、長い毛を梳く楽しみもありますよね~。もしもニフィを見かけたならば、私も是非とも撫でさせて貰いたいもの。アーモンド形の目で、こっちを見て「ミイ!」と鳴いてくれないものかしらん。
しかし、ハードの装丁の方が、深い緑がニフィに良く合って好きなのだけれど、ハードも文庫も、ニフィの毛があまり「ゆたか」に見えないのは気のせい?

 ← 文庫もあるようです


*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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宮部みゆき「心とろかすような」

探偵事務所を舞台としているけれど、主人公は人間ではない。ちょっと変形の探偵物語。主人公は、蓮見探偵事務所の用心犬、元警察犬であるジャーマン・シェパードの老犬・マサ。 「パーフェクト・ブルー」の番外編にあたるものだけれど、事件としてはあまり好みではないので、こちらをあげたい(ただし、タイトルの響きと登場人物は好き)。

心とろかすような
てのひらの森の下で
白い騎士は歌う
マサ、留守番する
マサの弁明

以上、五つの事件がマサの目線から語られる。主たる登場人物は、蓮見探偵事務所の所長・蓮見浩一郎、浩一郎の長女で短大卒業後、父親の許で女性調査員として働き始めた加代子(加代ちゃん)、次女の高校生糸子(糸ちゃん)、パーフェクト・ブルー」で蓮見一家と親しくなった、諸岡進也。

■心とろかすような
俺はそんなに頭の固い方じゃない。少なくとも若者を理解しようと努めてはいる。しかし、ことが蓮見姉妹にかかわるとなると、俺は断然感情的になってしまうのである。
ことわっておくが、糸ちゃんは十七歳である。
乙女である。
俺は頭にくる。
諸岡進也の野郎は、俺の糸ちゃんと、こともあろうに朝帰りをやらかしやがったのだ。

糸ちゃんと、進也が巻き込まれた事件とは?「心とろかすような」笑顔が恐ろしいお話。

■てのひらの森の下で
俺がちゃんと散歩する犬であり、加代ちゃんが時間に几帳面であるばっかりに巻き込まれた事件の話だ。

散歩の途中見つけた死体が消えてしまった。死体はどこに?

本筋とは離れるけれど、ここの部分も好き。
彼女がいつもきちんと束ねている長い髪を、俺は「加代ちゃんのしっぽ」と呼んでいる。とてもきれいなしっぽだ。彼女はデビューしたばかりの若いサラブレッドに似ている。そのひたむきさも、目の輝きも、活動しているときにもっとも美しく見えるところも。

■白い騎士は歌う
俺はしっぽで床をぽんと打った。加代ちゃんがにっこりした。
「マサが『引き受けた』と申しました。わたしのパートナーなんですよ」
友恵さんが見おろしたので、俺は耳をピンと立てた。

依頼は、指名手配中の弟を探して欲しいというもの。彼が残した「白い騎士」という言葉の意味とは?

■マサ、留守番する
「ペットホテルを―」
加代ちゃんが言いかけ、俺がうううと唸るのを聞きつけて、「―探してみようか」という言葉を呑み込んだ。察しのいい女性である。俺は何が嫌だってあんなところに泊まるのは絶対に嫌だ。あんなところに預けられるくらいなら、野良になってワイルドな生き方をしてやる。

マサが留守番中の蓮見探偵事務所に、五羽のウサギが捨てられた。時同じくして、近所の水上公園では、ひったくりやカツあげが頻発し、ついには変死体が発見される。慰安旅行中なので、いつもの蓮見家のメンバーの出番はほとんどなく、今回マサに協力するのは地域の動物たち。可哀相なハラショウ、ちょっとイカれた話し方のカラスのアインシュタインなどが印象深い。

■マサの弁明
ここには宮部さんご本人が登場する(ただし、あくまでもこれは創作)。

最近、すっかり猫に心を奪われているけれど、犬もいいよね、と思う本です。

 ←私が持っているのはこちら
宮部 みゆき
心とろかすような―マサの事件簿
 ←こちらは文庫。でもハードの表紙の方が好きだなぁ

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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懐かしい本が続いたので、少し新しい本を。

伊坂 幸太郎「アヒルと鴨のコインロッカー」

感想を書くのが難しいけれど、面白い本でした。
二つの話が同時進行していき、最後に収束していく所など、村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を思い出しました「世界の~」は私が唯一読了した村上春樹の本(村上なら龍派です)。
またしても「世界の~」が手元にないので、本当に印象のみなのだけれど、内容に関わりなく、何となしに全編に流れている明るい感じなどに、似た雰囲気を感じました。

輪廻転生を信じるブータン人、いろいろなピースがぴたりとはまる所。上手いなあ、と思いました。この作者の他の本も読んでみよう。3人の物語はまだ続いていくのだろうか。そして遅れて参加することになった彼の物語は、別の次元で続いていくのだろうか。

何かぐるぐると、余韻が残った。

珍しく短い感想になりました。つい最近読んだからでしょうか。本は自分の中に置いておく期間が長ければ長いほど、自分の中の何かとどんどん結合していくのかもしれません。この本は、今後私のどの記憶と結合していくのだろうか。今の所「世界の~」の印象と結合しているくらい。

著者: 伊坂 幸太郎
タイトル: アヒルと鴨のコインロッカー

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○ローマ法王死去
私はプロテスタントからカトリックに転んだ人間なので、実はあまり「法皇様」という存在に対して、特に思い入れがあるわけではない。しかし、周りの信者の方々は法王を「パパさま」と呼び、親しんでおられた。一つの宗教に対する賛否は色々とあると思うのですが、世界各国を訪問し平和のために尽力されたのは事実だと思います。長期間に及ぶ任期、お疲れ様でした。

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