旧・日常&読んだ本log

流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

以降の更新は、http://tsuna11.blog70.fc2.com/で。


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ジェイムズ・P・ホーガン, 池 央耿
星を継ぐもの (創元SF文庫)

超有名SFですよね。なんとなく、最近、SFも怖くない!、と思えてきたので、読んでみました~。しかし、これ、実は四部作だったのですねえ、続きもぜひ読まなくては。

あらすじを引きます。

 
月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行われた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず、五万年以上も前に死んでいたのだ。謎は謎を呼び、一つの疑問が解決すると、何倍もの疑問が生まれてくる。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見されたが……。ハードSFの新星ジェイムズ・P・ホーガンの話題の出世作。

30代の半ばにして核物理学の権威であり、会社に自分専用のポストを作らせる程に優秀なヴィクター・ハント博士は、ある日、理不尽とも言える指示を受け、自身が設計した画期的な機械と共に、国連宇宙軍(UNSA)が居を構えるヒューストンへと駆り出される。彼を待っていたのは、UNSAの航空通信局(ナヴコム)本部長のグレッグ・コールドウェルと、月面で発見された五万年以上前の死体。

各分野から集められた専門家たちが、この謎に挑むのだが…。

主たる登場人物は、このハントと、コールドウェルに、生物学者のダンチェッカーですかね。あ、あと、”チャーリー”と名付けられた月面の死体。所属していた会社で、ハントとコンビを組んでいた、ロブ・グレイは途中からフェード・アウト。

その全貌は明らかにされないけれど、一本釣りのような手法でハントを駆り出したコールドウェルという人物も気になるなぁ。

二十年以上もの長きにわたって彼は熾烈な闘争を勝ち抜き、宇宙軍最大の機関の長にのし上がったのだ。白兵戦にかけては、彼は百戦錬磨の古強者である。しかも、その間彼は自らの血を一滴たりとも流していない。以前のナヴコムなら、あるいは今回のようなプロジェクトは与り知らぬことだったかもしれない。これはナヴコムの手に余ることかもしれない。その意味では土台UNSAにとって荷が勝ちすぎる仕事かもしれないのだ。それはともかく、現実にコールドウェルは責任者の立場にある。プロジェクトの方からナヴコムの膝元に転げ込んで来たのだ。コールドウェルは自分の手で仕事をし遂げる決心だった。協力の申し出があれば、それは拒まない。しかし、プロジェクトはあくまでもナヴコムの名において推し進めなくてはならない。それが気に食わないと言うなら、この仕事を横取りしてみるがいい。そう、やれるものならやってみろ―。
(P41、42より引用)

実際に謎を追うのは、研究者たちであり、ダンチェッカーであり、ハントであるのだけれど、後ろで糸を引くのはあくまでコールドウェルなんだよね。何故に、彼はこんなタフさを身につけたのでしょう? というか、リーダーってこういうものなのかもしれないけど。まさに適材適所に、ぴたぴたと人を嵌めていく手腕が見事。

最初はどうしようもない堅物に見えたダンチェッカーは、ラストにやってくれます。いいねえ、かっこいいねえ。途中から、ファーストネームのクリスで呼ばれるようになるし、ただの堅物ではありませんでした。

ハントに関しては、ただただ先へ、未知の世界へと突き進んでいく、その生きざまが興味深い。以下は、有毒ガスがたちこめる、荒涼とした木星の衛星、ガニメデでの彼の独白です。

彼は生涯、一度も立ち止まることなく歩み続けて来た。そして、彼は常にそれ以前の自分から未知の自分へ変貌する過程を生きていた。新しい世界に立つと、必ずその向うからさらに別の世界が彼を差し招いた。どこへ行っても周囲は知らない顔だらけだった。見知らぬ顔は、ちょうど前方の靄の中から浮かび上がってくる岩の影のように、彼の傍を流れて消えて行った。岩と同じように、人々は一瞬、紛れもなくそこにいるかに見えながら、やがて幻のように背後の闇に吸いこまれた。
(p257より引用)

そうして、彼らが辿り着いた真実とは…。タイトル「星を継ぐもの」の意味とは…。とっても大胆な説なんだけど、ぐっときちゃうな。特にダンチェッカーが語る、”ルナリアン”(月世界人)たちの最後の様子や、”人類”というものの希望には。

しかし、実際、これ一冊を読んでも、プロローグにおける謎や、ガニメアンと名付けられた”巨人”の謎は解けないんですねー。今後、どういう風に謎を解いてくれるのか、楽しみです。


■四部作の残り■

ジェイムズ・P・ホーガン, 池 央耿
ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)

ジェイムズ・P・ホーガン, 池 央耿
巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))


ジェイムズ・P. ホーガン, James P. Hogan, 池 央耿
内なる宇宙〈上〉 (創元SF文庫)
内なる宇宙〈下〉 (創元SF文庫)

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

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アン・マキャフリー, 酒匂 真理子

歌う船 (1984年) (創元推理文庫)  
(新版なのか、私が読んだものと表紙は違います。古い方は、佐藤弘之氏描くところの、感受性の強そうな少女が、こちらをじっと見つめている絵が実に良いのですが)


だれも猫には気づかない 」以来のアン・マキャフリー。設定はとってもSFしているのですが、これは滅茶苦茶良かった~。

高橋しんの「最終兵器彼女」では、ドジなふつうの女の子、ちせが人間の形はそのままに、でもそれが変体するようにして「兵器」となってしまいましたが、こちらのヘルヴァは頭脳明晰のエリート。

しかしながら、<殻人(シェル・ピープル)>と呼ばれるヘルヴァたちは、ふつうの人間の姿をとってはいない。この世に生れ落ちた彼ら彼女らに残されていたのは、二つの道のみだった。それは安楽死か、カプセルに入れられた”脳”に、つまり管理機械として生きる道。手足を動かす代わりに車輪を動かし、伸縮腕を巧みに操り、何回かの脳下垂体手術を乗り越え、沢山の機械装置との結合を経て、ヘルヴァたちは成長した。

<中央諸世界>に貢献すべく、クラスメートたちと<中央実験学校>で様々な科目を学んだヘルヴァは、十六歳で卒業し、独立した<頭脳船(ブレインシップ)>となった。チタニウムの柱の奥に、自身を慎み深く隠して…。

頭脳船は<脳>の手足となる<筋肉(ブローン)>たる人間を相棒として、主に偵察任務にあたる。そうして、ヘルヴァも卒業後、宇宙へと旅立つのだが…。

とにかく、このヘルヴァの性格が秀逸で! ユーモアを忘れず、鋼鉄の船でありながら、瑞々しく柔らかな心、好奇心と人のために役立とうという親切心を忘れない。音楽に興味を覚えた彼女は、弦楽器の構造などにヒントを得て、歌う船としても有名になる。

瑞々しく感じやすい心を持つということは、それだけ傷つき易いということでもある。けれども、どれだけ悲しくともヘルヴァは涙を流す事も出来ず、睡眠と言う安らぎを得ることもない。それでも彼女は、<中央諸世界>からの任務をこなしていくのだが…。目次を見ればわかっちゃうけど、結末は素敵にハッピーエンド。いやー、楽しかった。

たださ、途中、ヘルヴァに人間の身体に移るチャンスが訪れるんだけど、ヘルヴァは自らの意思でそれを退けるんだよね。宇宙のどこへでも行ける「足」はなくなってしまうけれど、ヘルヴァに普通の女性として生きて欲しかった気も…。

「殺した船」で面白かったのは、<ディラニスト>という存在。

「ディラニストというのは、社会の解説者であり、抗議者であって、音楽を武器として、刺激として使うの。熟練したディラニストは(中略)
メロディーと歌詞とで、人を引きつけずにはおかない主張を述べることができて、そのために、彼が言いたいことは潜在意識へと徐々にしみ込んでいくようになるの」

これ、ちょっと何のこと?、と思いませんか。実はこれ、ボブ・ディランのことなんですね~。だから、ディラニスト。「風に吹かれて」なんかが出て来ます。

無機物と有機物の間、でも、ヘルヴァは誰よりも少女らしい。愛らしい少女の活躍、楽しかった!

これで終わりなのかなと思ったら、続きや関連した本もあるようです。読まなくっちゃ~。

■東京創元社の該当ページへの
リンク

目次
歌った船
嘆いた船
殺した船
劇的任務
あざむいた船
伴侶を得た船
 解説 新藤克己

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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北村 薫

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)


図書館本も溜まっているのに、また読んだのに感想書いていない本だって溜まっているのに、今日は何となく北村薫さんの「円紫さんとわたし」の世界に浸りたくなって再読をしておりました。

新しい世界にぐいぐいと漕ぎ出していく、馴染みのない世界や、未だ自分の匂いがついていない本の世界に遊ぶのも、それはそれで良いものだけれど、時に古いお馴染みの世界に戻って行きたくなる時がある。今日はちょっとそんな気分。

北村さんの探偵ものと言えば、覆面作家シリーズ、名探偵・巫シリーズ、ベッキーさんシリーズと、いくつかあるのですが、私が一番好きなのが、この落語家の円紫さんと女子大生のわたしシリーズ。「女子大生のわたし」は、びっくりするくらい、すれていないいい子で、シリーズの中では様々な季節が語られ、また、彼女自身も成長していくのだけれど、私の中では、秋の澄んだ空気が何となく彼女のイメージ。

探偵役である「円紫さん」は落語家であり、ワトスン役の「わたし」は文学部の学生であるからして、そこかしこに、そういった関連の知識がぽろぽろと丁寧に挿まれていて、それもまた何度読んでも楽しむことの出来る要因かなぁ(一回ではたぶん読み切れていないのと、新たな知識を得た後に読むと、ああ、こんなところにも手を抜いてないんだな、と分かる)。

私が持っているこの文庫は、1995年の第6版のもので、最初に読んだ時は、この「わたし」に近い年齢だったのに、今となってはむしろ「円紫」さんの方に近くなってしまいました。このシリーズは、1998年出版の「朝霧」(こちらはハードカバーで持ってます)にて、女子大生だったわたしが就職して新人編集者となる辺りで終わるのだけれど、その後の「わたし」についても読んでみたいものです。とうとう、「わたし」の名前も分らないままだったし。笑

表紙を並べていくのも楽しくてですね。シリーズ一作目の「空飛ぶ馬」では、文中で友人にヨーロッパの不良少年と揶揄されたりする、ショートカットのわたしの髪型も、だんだんに女らしくなっていくのです(と、思ったけど、並べてみたら、そんなに変わってないですね。むしろ服装か?)。



目次
織部の霊
砂糖合戦
胡桃の中の鳥
赤頭巾
空飛ぶ馬
 解説 安藤昌彦


織部の霊」にて、わたしは文学部の加茂教授から、落語家である円紫さんを紹介され、その知己を得る。円紫さんは、加茂教授の幼少時からの疑問を鮮やかに解決する。
砂糖合戦」では、マクベスの三人の魔女を連想させる、喫茶店の女の子たちの行為を未然に防ぎ、「胡桃の中の鳥」では、舞台は大学のある東京や、わたしの自宅のある神奈川(追記:「わたし」の自宅は埼玉でした…。神奈川に住んでるのは親友の正ちゃん。ああ、思い込みって怖い)を離れ、山形は蔵王へ。円紫さんの独演会を聴くのと、夏の旅行を兼ねたこの旅で、わたしは過酷な運命の中の弱小なるもの、に出会う。
赤頭巾」、「空飛ぶ馬」の二篇は、わたしの近所の人々のお話。一方は、悪意と幾分艶めかしいお話だけれど、「空飛ぶ馬」はラストを飾り、また、「わたし」の誕生日であるクリスマスや、年末を飾るに相応しい、ほのぼのと心温まるお話。

円紫さんによって解かれる謎は、空飛ぶ馬」の中にあるように、ただの謎解きではなく、関わった人たちの心を解いていくようなもの。

 解く、そして、解かれる。
 解いてもらったのは謎だけではない。私の心の中でも何かが静かにやさしく解けた。

だから、こういう謎仕立ても実にしっくりとくるのです。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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ドン ウィンズロウ, Don Winslow, 東江 一紀
砂漠で溺れるわけにはいかない  

「ストリート・キッズ」で鮮烈な印象を残した、ニール・ケアリーのシリーズ最新刊にして最終巻。いや、手に入れたものの長らく積読してたので、最新刊といっても、2006年8月に刊行されたものなんだけど・・・。

とはいえ、それもまた翻訳に掛かった長い年月を思うと、ほぼ一瞬の出来事なのかも。本国ではほぼ年間一冊というペースで書かれたこの五作のシリーズ、日本語訳は最初は同じく年一冊ペースだったものの、完結までに十三年半・・・。訳者の方にも色々事情があったようですが、やっぱり、これ、同じペースで読みたかったよ。

「ストリート・キッズ」で、ニールがジョー・グレアムからストリート・キッズの暮らしから引き揚げられたのは、彼が十一歳の時。ニールは探偵のイロハから掃除のイロハ、正しい食生活まで、このグレアムに徹底的に仕込まれる。このニール・ケアリー・シリーズは探偵物語でもあるんだけど、このような出自によるものか、ニールはある銀行の秘密部門、<朋友会>から依頼(というか、大抵の場合、強制な気もするけど)された仕事を遂行するものの、彼は探偵の免許を持ったこともないし、専従で仕事をしたこともない。彼の望みは、こよなく愛する十八世紀の英文学を研究して暮らすこと。彼の「仕事」の部分をとりあえず脇に置くとすると、これは彼の成長物語でもある。

ニールはグレアムに素質を見出され、この探偵仕事を始めた事になっているんだけど、実際、ニールはその若さと無害な外見を生かした潜入は得意なものの、その後の首尾はいつもあまりよろしくない。腕力だってないし、信じやすい性格からか、逃してはならない人間を良く逃していたりもする。大抵の場合、普通の「探偵」は、その仕事の前後において、自らが変わることは少ないと思うのだけれど、ニールの場合、その事件に思いっきり影響を受け、傷つき、事件後には受けた傷を癒すため、隠遁生活を送っていたりもする。ま、隠遁といったところで、大抵<朋友会>からは逃れられていないんだけど・・・。そんなわけで、よーく考えるとあまり探偵業に向いているようにも思われない・・・。

さて、そんなニールが今回駆り出されたお仕事は、ラスヴェガスのホテルから、齢八十六になる老コメディアンを自宅に連れ戻せ、というもの。相手の居場所だって分かっている、送り届ける場所だって確かだ、おまけに相手は高齢の爺さんと来た、グレアムの言うとおり、楽勝の仕事に思われたのだが・・・。その爺さん、ネイサン・シルヴァースタイン、若しくはナッティ・シルヴァーはのらりくらりとニールをはぐらかし、とうとうニールを撒いてしまう! 

今回のニールの個人的な事情としては、彼は二ヶ月後に「高く孤独な道を行け」で出会ったカレンとの挙式を控えている。そのことは彼にとっても大変結構なことなのだけれど、無性に子供を欲しがるようになったカレンに困惑し、そのことで互いにギクシャクしたまま、この事件のためにカレンと暮らす家を離れる事になる。ナッティを連れ戻しにいっても、頭はカレンと子供の事でいっぱい。もしかしたら気付けたかもしれないヒントをことごとく見逃した結果、ニールはナッティに逃げられ、どうしても自宅に帰りたがらないナッティの事情に気づく事がない。

老コメディアンであるナッティの昔話、ナッティとホープの関係など、最初はうんざりしていたものの、ニールは人生の先達として、彼らを尊重というか、ある意味では尊敬するようになる。そして、ニールが何よりも恐れる「子供を作る」ということ。彼の母親は麻薬中毒の売春婦であり、父親は母親の客の一人にして、顔も名前も分からない。ニールには家庭が分からないし、そもそも自分が父親になれる自信だってない・・・。そのニールの心が、この老コメディアンとの旅路の中で、少しずつ動いていく所が今回の見所でしょうか。

「ストリート・キッズ」から始まったニールの旅も、随分遠くに来たような気がします。しかし、「ニールの成長記」として読むなら尚更、もっと速いペースで読みたかったな、と思うのでした・・・。ストリート・キッズ」にて、ジョー・グレアムに出会って擬似的な親子関係を結び、最終巻の「砂漠で溺れるわけにはいかない」にて、こわごわと家庭に向けて一歩を踏み出す。新たなニールシリーズを読むことはもうないわけだけれど、ニールの今後の人生が幸せであるといいな、と思う。

     
←シリーズのその他四作。このシリーズは装丁とタイトルも魅力の一つ。
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芦原 すなお
ミミズクとオリーブ

街の喧騒を離れ、八王子の郊外で静かに暮らす、作家のぼくと妻。手土産片手に訪れるは、夫妻と同郷の警察官、河田。河田の楽しみは、奥さんの手料理なのだけれど(「お手間でしょうけれど、~にもしてくれたら」などと、土産を手渡したりもする)、それとは別にこの奥さんの卓越した推理力をも当てにしているようで・・・。人ごみが嫌いな奥さんの代わりに、目になり耳になるのは、作家の夫のお役目。友人、河田と漫才のようなやり取りをしながら、現場に赴くのだ。

表題のミミズクとオリーブは、庭にあるオリーブの樹に来るミミズクのこと。子供がいない夫婦の元に、日毎現れるミミズクは、奥さんの手から食べ物を貰い、ぽーぽーと鳴く。そんなのどかな風景が実に似合う夕暮れ。

目次
ミミズクとオリーブ
紅い珊瑚の耳飾り
おとといのおとふ
梅見月
姫鏡台
寿留女
ずずばな
 解説 加納 朋子


いやー、郷土料理に安楽椅子探偵といえば、まさに私の好みー!と思って、古本屋で捕獲したのですが、これは実は微妙でした。表紙の雰囲気、登場人物の考え方や行動から、昔の話かと思いきや、実はどうも現代の話のようであったり。どうせだったら、レトロな味わいもあることだし、現代ではなく、ノスタルジックに一昔前を舞台にしてくれた方が良かったなぁ。

そして、主役とも言える安楽椅子探偵の奥さんが! この奥さん、出来過ぎというか、こんなにデキるだなんて逆に怖い。友人河田が突然訪ねてこようが、手土産をああしてくれ、こうしてくれと細かく指示を出されようが、そしてその料理を奥さんの分などを考えもせず、男二人で出されるがままさっさと食べてしまおうが、特に全く気を悪くする様子もない。

でも、話の中で唯一時制を遡る、「梅見月」における、まだ結婚どころか、お付き合いすらしていない頃のお話なんて、この旦那さん、完全に奥さんの手の中で転がされているのである。いいのだろうか・・・。そして、奥さんはこの旦那さんのどこを、そんなに気に入ったのだろうか・・・。

せめて(?)、美味しそうな料理のメモ。

・カラ付きの小海老と拍子木に切った大根の煮しめ
・白身の焼き魚の身をすり鉢ですって麦味噌と合わせ、ダシでのばしてご飯にかけるサツマ(ダシでのばさず、小鉢に盛って酒のツマミにするのも良し)
・新しくて肉厚のスルメの天麩羅(身の方は上下に二つに切り、さらにそれぞれを二センチ幅で縦に切る。足の方は、一本ずつさいて揚げる)

続きも一緒に買っちゃったんだけど、どうしようかな、これ・・・。汗 ほのぼのはしてるんだけどねえ、ほのぼのは。ただ、ちょっと、この旦那さんの能天気っぷりに、軽くいらっとくるだけで・・・。
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米澤 穂信
夏期限定トロピカルパフェ事件

春期限定いちごタルト事件 」の続編。珍しくも新刊で買っちゃいました。

恋愛関係にも依存関係にもないが、互恵関係にある高校生、小鳩くんと小佐内さん。
小鳩くんは、小賢しい狐である自らを封印するため、小佐内さんは執念深い狼である自らを封印するために、互恵関係を結ぶのであるが・・・。

目次
序章  まるで綿菓子のよう
第一章 シャルロットだけは僕のもの
第二章 シェイク・ハーフ
第三章 激辛大盛
第四章 おいで、キャンディーをあげる
終章  スイート・メモリー

高校二年生になったこの夏、彼らの運命を左右するのは、<小佐内スイーツセレクション・夏>。

小鳩くんと小佐内さんが結んだ互恵関係は、本来は、学校など人目がある所をしのぐためのもの。
彼らが目指す「小市民的である」という事にしても、それは人との関係性に表れるものであるしね。
であるからして、夏休みなどの長期休暇中は、この関係は一旦お休みしても良いはずだったのであるが・・・。

小佐内さんは、なぜか小鳩くんを<小佐内スイーツセレクション・夏>と題した、彼らが住む町の甘味所巡りに引っ張り出す。小佐内さんは、一人ではお店に行けないなどという、可愛いタマでは有り得ない。小鳩くんは、小佐内さんの腹のうちを探りながら、このセレクションに付き合う事になったのだが・・・。小佐内さんの意図はさて如何に??

日常の謎に終始し、犯罪の要素はカケラもなかった、前回に対し、今回の謎は何だか不穏。小鳩くんの幼馴染、健吾が探る、薬物乱用グループに、誘拐事件。

そして、二年近く、順調に続いてきた、小鳩くんと小佐内さんの美しい互恵関係にもついにはひびが・・・。小佐内さんのついた「嘘」、最後に小佐内さんの頬を伝った涙。うーん、これらの謎については、次作「秋期限定マロングラッセ事件(仮)」に続くんだろうなぁ。平穏な日常の謎系が続きつつ、彼らの過去が少しずつ明かされるものと思っていたので、この展開はちょっと意外だったけど、次作が楽しみでもある(今回のこの展開には、小佐内さんの過去も、関係してはいるのだけれど、全てのカードが開かれている感じはないんだよな)。

そういえば、この間、ケーキを買ったときに、珍しくもシャルロットを選んでしまったのは、確実にこのシリーズの影響だったり。私が買ったシャルロットには、不意打ちをかましてくれるマーマレードのようなソースは入ってなかったけどさ。

 なんという旨さか!
 泡がさらりと溶けていくような軽やかな口当たりに、見え隠れする程度のほのかな甘味。スポンジ生地の内側は、クリームチーズ風味のババロアだった。そのチーズの味わいは自己主張が強くなく、その穏やかな味わいをしみじみと楽しんでいると、内側に隠されたマーマレードのようなソースが不意に味を引き締めてくれる。このシャルロットはホールを八つ切りにしたものと見たけれど、外見からそんなソースが隠れていることはわからなかった。どうやら一ピースに切り分けた後で、スポイトか何かでババロアの中にソースを注入したらしい。手のかかることをするけれど、確かにこれは嬉しい不意打ちだ。酸味と甘味がこれほどマッチしたものは初めて口にした。

甘いものをそれ程好まぬという小鳩くんを虜にしたという、<ジェフベック>のシャルロット、ああ、美味しそうーー!!・・・って、本筋にはそんなに関係ないけどね。

    リンク: 汎夢殿 (米澤さんの公式サイト)

*臙脂色の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡下さい。
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米澤 穂信
春期限定いちごタルト事件

目次
 プロローグ
羊の着ぐるみ
For your eyes only
おいしいココアの作り方
はらふくるるわざ
虎狼の心
 エピローグ

青春とは熱く滾る気持ちを抱えて、ただひたすらに燃えるもの?
それとも若さを胸に、明るく物事に向き合っていくもの?

いやいや、ここにそれらとは対極の場所を目指す二つの青春がある。若々しさからも瑞々しさからも、何だか遠くにあるように見えちゃうこの二人。清く慎ましい小市民を目指すのだ、と事ある毎に確認するのだけれど、わざわざそんな確認をする辺り、何だかちょーっと怪しいわけで・・・。

さて、小鳩くんと小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが、互恵関係にある高校一年生。二人して無事にこの春、船戸高校に合格を果たした。ある意味で、「高校デビュー」を目指すこの二人。
さあ、この二人の過去には一体何が?

小鳩くんの過去の方は、語り手がこの小鳩くんであるために、早々に知れるのだけれど、小佐内さんの方は最終章を待ってから。小動物を思わせるような外見に、いつも小鳩くんの後ろに隠れてしまう、地味さ全開の小佐内さん。嗚呼、過去の姿を是非見てみたい!

物語の方は、所謂日常の謎系ミステリー。校内など、身辺で起こった謎を、小鳩くんが解いていくスタイル。しかし、この小鳩くんは小市民を目指しているわけで、本来は探偵の真似事などもっての外。そう、それは過去、苦い思いの下に、彼が封印したはずのものだったのだ。この辺、彼が煩悶しながら進んでいくところが、面白いところ。短編一つ一つで解決される謎に、この小鳩くんと小佐内さんがなぜ互恵関係にあるのか、なぜこの二人は小市民を目指すのかという謎が重なっていくわけ。

先が気になって、どんどん読み進んでしまいましたよ。ライトノベル風味なので、実際、早く読めちゃうんだけど・・・。古本屋で見つけて買ったんだけど、続編は新刊で買う事になりそうです。次はどんな二人に出会えるのかなぁ。

小鳩くんの幼馴染の健吾もいい味出してます。いまのお前みたいにこそこそこぢんまりしたやつとは、俺は付き合いたいとは思わない」っていうのも、ある意味、真実を突いている。今後は、どうする、どうなる?、小鳩常悟朗。

 ← これが続き。今度は夏期限定のトロピカルパフェだそうな。
          流石、甘いもの大好き小佐内さん。
          これ、読んでると甘いものを食べたくなるような気も・・・。笑
          いや、甘いものが苦手な人だと胸焼けするかな?
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ダイアナ・ウィン・ジョーンズ、浅羽莢子訳「ダークホルムの闇の君」

amazonから引っ張った粗筋はこちら
出版社/著者からの内容紹介
別の世界から事業家チェズニー氏がやってきて四十年、魔法世界は今や観光地。だが諸国の財政は危機に瀕し、町も畑も荒れ放題。この世界を救うのは誰か? 神殿のお告げで選ばれたのは魔術師ダーク。彼と妻、一男一女五グリフィンの子供たちまで巻き込まれて……辛口のユーモアを盛り込んだファンタジイ。 解説・妹尾ゆふ子

これ、すごいです。グリフィンに両親の細胞が入ってるから、子供達とグリフィンは兄弟だし、彼らが生きる魔法世界は、ある事業家のせいで、長年に亘り冒険のテーマパーク化されてしまっている。これらの詳しい説明があまりなされないまま(ずーっと設定の説明が続く物語もうんざりだけど。そして、私の読み取りが甘いという可能性も大ですが)、話はどんどん進んでいく。年寄り竜・ウロコのかっこよさや(教え諭してくれる、威厳ある竜って好きだ)、物語としての面白さ、様々な小道具の素晴らしさなど、魅力的な部分が数多。でも、毎度物語に入り込みにくいのはなぜなんだーーー!(ハウル でいまいち、物語に入り込み難かった私)


と、考えていたら、「物語三昧」のペトロニウス さんの所で拝見した、こちらの記事『賢者の石』ハリーポッターシリーズ第一巻/なぜ世界はハリポタに熱狂したのか?② と、その時のコメントが頭を過ぎった(記事は直接リンク、コメントはそのままここに引用させて頂きます)。

<導入部の間口の広がり>天才的な物語作家は、例外なく導入部を間口の広い『誰にでも分かる』か、もしくは『信じられないほど典型的』なスタイルではじめます。そして、「そこ」から読者を感情移入させたまま、深く広い世界に連れ出してくれます。そういう意味では、まさに天才的物語作家なのだと思います。(「ハリー・ポッター」の著者J.K.ローリング氏についての、ペトロニウスさんのコメントより)

この辺りが「ハリー・ポッター」にはすんなり入れるのに、D.W.ジョーンズにはいまいち入り込み難い要因なのかなぁと思いました(「ハリー・ポッター」だって、きっと4巻、5巻辺りから始まると辛いはず)。D.W.ジョーンズは、その分、元々のファンタジーファンにはすんなり受け入れられるけれど、そうではない場合、少し読み進めるのが辛いのかなぁと感じました。何となく、自分の中でのD.W.ジョーンズの攻略法が出来たような気がして、個人的にはすっきり。

しかし、この「ダークホルムの闇の君」は図書館にたまたま置いてあったのだけど、残りの本は図書館になさそうであります。気長に探してみる事にします。 そして、この一冊目を導入部とすると、次作の方が面白そうな感じ(ダークホルムは二部作)。次作の「グリフィンの年」も読んでみたいと思います。

「これより十年ほど、あの脇谷に棲むことにした」ウロコは告げた。「あそこが気に入った。その間に、おまえたち二人に何が何でも魔法を教える。手始めは読心術じゃ。明日の朝、二人とも参れ。小わっぱ、猫鳥、わかったか?」

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡下さい。ペトロニウスさん、記事中でリンクしたので、トラバさせて頂きました。

著者: ダイアナ・ウィン ジョーンズ, Diana Wynne Jones, 浅羽 莢子
タイトル: ダークホルムの闇の君


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ドン・ウィンズロウ「ストリート・キッズ」

手に取った切っ掛けは綺麗な表紙。全くもってのジャケ買い(ってCDにしか使わないのかな)です。創元推理文庫は表紙が綺麗なものが多いです。
探偵もの→表紙いい感じ→買っちゃえ~!、という流れでした。
今でこそ、バンバン買うことはなくなりましたが、昔はバンバン買ってジャバジャバ読んでいたのです(そしてジャンジャン忘れていきましたが)。

同じ版元の北村薫「円紫さんとわたし」シリーズも大好きです。北村さん、こんな素敵な女の子は現実にはいないよ~と思いつつ、ミステリーなのにとても柔らかな気持ちになります。ミステリーと言っても「円紫さんとわたし」では、人死にが出たりはしませんし。

ドン・ウィンズロウ「ストリート・キッズ」に戻ります。こちらもシリーズで、恐らく今出版されているのは「ストリート・キッズ」「仏陀の鏡への道」「高く孤独な道を行け」の三作だと思います。タイトルにも惹かれる。そういえば最近続きが出版されていないような…?
(その後、四作目「ウォータースライドをのぼれ」が出版されました)
一作目の表紙の裏には、以下の解説が載せられています。

プロの探偵に稼業のイロハをたたき込まれた元ストリート・キッドが、ナイーブな心を減らず口の陰に隠して、胸のすく活躍を展開する

減らず口にイライラするかもしれませんが、私は主人公のニール・ケアリーが好き。
第一作目では、元ストリート・キッドのニールが、なぜ探偵として働くことになったのか、ニールが追いかける現在の事件と共に語られます。探偵修行、掃除の仕方、全てを父代わりのグレアムがニールに仕込む。この擬似父子の関係がいいのです。
あ、グレアムが教える掃除の仕方、普通に参考になりました。あからさまに手助けをするわけではないけれど、周囲の大人もいいのです。
ニール、幸せになってくれるといいな。
ニールが学んでいる英文学がわかれば、もっと面白さが増すように思いますが、話の本筋を差し引いても(?)、人物造形が優れているので読ませてしまうシリーズだと思います。

「よくやったな、坊主」
「ありがと、父さん」


著者: ドン ウィンズロウ, Don Winslow, 東江 一紀
タイトル: ストリート・キッズ


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