旧・日常&読んだ本log

流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

以降の更新は、http://tsuna11.blog70.fc2.com/で。


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吉野 朔実
お父さんは時代小説(チャンバラ)が大好き (角川文庫)

「お母さんは「赤毛のアン」が大好き」 が一作目ではなく、この「お父さんは時代小説(チャンバラ)が大好き」が、この本の周辺を描いたシリーズの一作目なのでした。特に問題なく読んじゃったのだけれど、多少、何だかおかしいなー、と思った部分も…(「お母さん~」が一作目だと信じて読んじゃったの)。

なぜそう思い込んだのか分らないのだけれど、えーと、それはやっぱり、母は強し、ということと、私が赤毛のアン好きだから??(とはいえ、吉野さんのリアリストなご母堂は、どうもアンではなく、マリラに感情移入して読まれてるらしい。そういう読み方って、たぶん珍しいですよね?)

というわけで、これからお読みになる方は、お気を付け下さいませ。お父さんが一作目、お母さんが二作目でありまする。

目次
「咳をしても一人」は誰の句だったか?
草の匂いにつつまれて
山吹と山茶花と
「羊たちの沈黙」日記
やっぱりアルジャーノンには花束を?
これがフランス料理だ!!
「いまさらアンドロイドが電気羊の夢を見るか?」
鮫と古事記
(対談)誇り高い少年たちの王国 吉野朔美×沢田康彦
午後のお茶会
ステキなタイトル
お父さんは時代小説が大好き。
犬づくし
正しい本の捜し方?
友人に薦めてもらった本はつまらないほど面白い。
この本によって自殺者は増えるだろうか?
パトリック・ジュースキントのこと
(対談)現実と夢の挟間に生きる人々 吉野朔美×穂村弘
ふんわり毛布にくるまって
漱石先生に再会する。
百見は一画にしかず
恐怖は人類の遺産である。
ロールシャッハ・テスト
狂気なおともだち
父の野望
(対談)植物の声に耳を傾けたとき 吉野朔美×北上次郎
あとがき
解説 目黒考二


この本は平成八年に単行本となったものが、文庫化されたもの。だから、本の雑誌に連載されていたのは、当然もっと前。今から10年以上前と言えば、大分状況が異なっているのが、ネット環境であるわけで、一部にはネットで調べたり、ネット書店を使えば解決されちゃうような問題も描かれておりますが、実際はこういう問題って、友人を介して解決するのがきっと面白いんだろうなぁ。「羊たちの沈黙」が三冊集まっちゃう件も楽しそう~(私は「ハンニバル」は面白く読んだけど、「羊たちの沈黙」は訳がダメでした…)。

吉野さんの周囲には、本好きの人々が溢れていて実に羨ましい! 私もブログをやるようになって、本好きなお友だちがずいぶん増えたなぁ、と嬉しく思ってはおりますが。

さて、友人つながりでいえば、「友人に薦めてもらった本はつまらないほど面白い。」。これは一体どういうことかと言えば、面白い、面白くない、そういった好みが一致しない方が、議論になって面白い、ということ。思い入れがあるほど、意を尽くして語るから、確かにこういうのって面白いですよね。

さて、目黒考二さんは、解説にて吉野朔美さんの本業の漫画を読んだことがないんだ…、と告白しておられますが、私も同様に吉野朔美さんのストーリー漫画をほとんど読んだことがありませぬ(あ、スピリッツ連載の「瞳子」はそういえば、ちょっと読んだかも。でも、あまり覚えてなーいー)。

なぜかいっつも「純情クレイジーフルーツ」の松苗さんと混同しちゃうんですよね、あれ、並べると全然似てない?汗




そして、気になった本たち。アンドロイド~、今からでも遅くはない?
レオ・レオーニのこの本、前から気になってはいるのだよね~。
…レオ・レオニって、レオ・レオニ(「
フレデリック 」とか)と一緒ですよね??(ちと不安)
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吉野 朔実

お母さんは「赤毛のアン」が大好き (角川文庫)


柴田元幸さんの「つまみぐい文学食堂 」を読んでた時に、気になった吉野朔美さんの本です~。

文庫で出ているということだし、と珍しくも買おうと意気込んで実書店に出かけたのですが、置いてなーい! 早く読みたいのにー、とがじがじしながら、ネット書店で購入しました。

で、届いて直ぐに読み始めたんだけど、いやー、これ、面白いですね。
本読みならあるある!、と思う、習性と生態といいましょうか、その辺りが、吉野さんの漫画で語られるわけです(時に文章もあり)。
すぐ読み終わっちゃうので、コストパフォーマンス的には、ちとどうかなーとも思うのだけれど、いっぱい書き込んであるので、たぶん何度でも楽しめるはず(というわけで、コストパフォーマンスは、きっと結果的に丸)。

オーソドックス(?)なところでは、本の解説を先に読むか後から読むか?、という疑問(ちなみに私は絶対に後から。私はこうやって読んだけど、あなたはどう読んだ?、とせーのでカードを開くようなイメージで、読み終わった後のお楽しみにしてます)や、カフカの「変身」におけるザムザのイメージなどなど、吉野さんや周りの本好きの人々を巻き込んだ話が面白ーい!!

最近、手を出し始めたポール・オースターについて、色々書いてあったのも、私にはちょうど良かったです。

最後の物たちの国で 」の絶望とユーモアにうーむと思い、「ミスター・ヴァーティゴ 」のめくるめくエンターテインメントを楽しみ、「ティンブクトゥ 」では純粋な魂にじーんときて。
でもね、どうも、ポール・オースターという作家が、いまひとつ掴めなくって。

と、思ってたら、吉野さんも、オースターはちょっと微妙な評価みたい。

 また読んでしまったな。どうして読んでしまうのかな? オースター。

と、読むたびに思ってしまう作家なのだそうな。

私は次はエッセイの「トゥルー・ストーリーズ 」を読んで、そのあと、柴田さん吉野さん共に面白かったという「偶然の音楽」に行ってみよっと。ポール・オースターの人生自体、扉の著者紹介を読んでもずいぶん波乱万丈だなぁ、と思ってたんだけど、その辺も作品に影響しているのかなぁ。



目次

 オースターたち
ポール・オースター『偶然の音楽』
本を拾ったことがありますか?

<本の解説>先に読むか後から読むか
ストリックランドの汚名
読み手の身勝手
装幀の力
なんかそーゆう本なのだ
私はこれを”読みきった自慢”[男性編]
いつも本が入っている
ローレンス・ブロック 風呂で読むか!?布団で読むか!?
父の霍乱
わたしのザムザ
危険な書物
どうでもいい話
私はこれを”読みきった自慢”[女性編]
アインシュタインの脳
ワインの通(みち)
お母さんは「赤毛のアン」が大好き
どれも これもが 読みかけ
装幀の秘密
”読書”の定義
『招かれた女』あとがきにかえて
対談
柴田元幸×吉野朔美
偶然と貧乏の達人、ポール・オースター
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姫野 カオルコ
蕎麦屋の恋

目次
蕎麦屋の恋
お午後のお紅茶
魚のスープ

「蕎麦屋の恋」
山藤製薬経理部、秋原課長四十三歳。淡々としているけれど、読み進む内に滅多矢鱈とモテている彼。彼は女性がその時必要としているものを、すっと差し出せる男のよう。とはいえ、彼の場合、進んでそうしているというよりも、これは生来の性質なのかも。二十そこそこで、出来ちゃった婚をした妻との間には、既に大学受験を控えた娘がいる。「出来ちゃった婚」をした時に感じた、何らかの翳りは知らぬふりをしたまま。毎日はそれでも過ぎて行く。しかし、彼が感じた翳りを、妻も感じていなかったとなぜ言える?

さて、ここに一人の女がいる。安定した商社勤めを辞め、調理師専門学校に通い、今は臨時講師のような事をしている波多野妙子。通勤に使う京浜急行快特の車内の中、活発そうな妙子の外見の中に、秋原は何かを渇望する翳りを見る。

人の育ちは外見からは分からない。けれど、妙子はどこか「普通」とは違う育ち方をしていた。家族皆で炬燵でぐだぐだとテレビを見る。彼女の家庭には、そんな当たり前の光景はなかった。一緒に並んでテレビを見る。それが、彼女の我が儘で贅沢な希望。こんな二人が並んでテレビを見る。それが、テレビのある「蕎麦屋」での「恋」。妻を愛してはいるけれど、流されるままに他の女とも関係を結ぶ、秋原が手を出さずに(ま、単にそういう雰囲気にならなかったのもあるけど)愛おしんだのも、するとかしないとか、そんな事じゃない、蕎麦屋の恋。

「お午後のお紅茶」
やわやわと流されているようでいて、目標に向かってしっかりと力強く歩む小林くん。柔らかなようでいて、彼には自らも意識しない美意識が確固としてあるのだ。
「お」午後の「お」紅茶のようなそんな店。そんな似非上品な店はやっぱり願い下げ?

「魚のスープ」
結婚して三年たった僕たち夫婦。育ちの良く健やかな桜子との日々。三年たった僕たちは子供がいなくてはいけなくなった。だって、問題のない家庭とはそういうものだから。
僕たちはそのために、子供を作る行為をするために、スウェーデンに旅に出る。しかし、この旅行は夫である僕にとっては、少々後ろめたいものだった。学生時代の性差を超えた友だち、ストックホルムに住むカズから突然チケットが送られてきたのだ。カズの意図を僕は測りかねる。結婚した桜子とは全く違うカズ。もしあの時、カズが僕のことを好きだったのなら、もしあの時、カズを選んでいたのならば・・・・。
結果として、僕の感傷は意味のないものだったし、僕はこの旅で桜子の違う一面を見る。分からないのならば、これからまた話して、一緒に歩いていけばいい。

姫野さんの作品の中では、まだ軽やかに読める方かなぁ。「魚のスープ」の桜子なんか、最初、嫌な女だなぁ、と思っていたんだけれど、彼女には彼女のやり方があるというだけで、それは決して対照的なカズの生き方とも対立するわけではないんだよね。一つの生き方が正しいわけではない。
珍しくも甘い余韻が残る姫野作品でありました。
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パラダイス山元
お湯のグランプリ―誰も書けなかった入浴剤文化論

お風呂、好きですか? 楽しんでますか?

上げ膳据え膳の温泉旅館もいいですが、あれはやっぱり値の張るもの。
そうそう足繁く行けるものではござりませぬ。

そこで、登場するのが入浴剤!この表紙画像の「風呂ーリスト・パラダイス山元」さんの、なんと幸せそうなことよ。

「はじめに」から引用いたしますと、こんな感じ。

ウチ風呂の魅力はなんといっても、なんでもアリなことです。やれ、お風呂は11時半で終了!とか浴槽内飲食厳禁!などとワケわからないことも言われませんし、体毛を剃ろうが、大声で「アーーーーーーッ、うっ!」とか叫ぼうが、若干家族からシロい目で見られるだけで、なんの問題も起こりません。

さぁ、夢の世界平和、大型レジャー時代が再び到来するまで、贅沢は入浴剤ぐらいにして質素な生活をエンジョイしましょう!

いや、大声で叫ぶのはどうよと思うけど、確かに何でもアリなのは、やっぱりウチ風呂。プライベートな空間だしね。

さて、ここに紹介されるは、「温泉入浴剤編」では北海道~九州のエリア別、及び幻の温泉入浴剤の8つのカテゴリ、「非温泉入浴剤編」では、漢方・鉱石編発泡系など6つのカテゴリに分けられた、全百種類の入浴剤。

お子さんがいらっしゃる方であれば、「子どもがよろこぶ楽しい入浴剤アラカルト」なんかも、いいかもしれませぬ。平成十三年初版とのことなので、内容がちょっと古いのかもしれませんが、キティーちゃんからセーラームーン、ウルトラマン、デジモンなど、キャラクターものも何でもアリっぽい。今であれば、もっと色々増えているのかな。

さて、私がこの本の中で興味を持ったのは、松村酒販による「甲州ワインの湯、同じく松村酒販「地酒の湯 濁り酒牛乳石鹸共進社「乳華の湯 牛乳風呂。・・・・あれ、食べもの系ばかり?笑

いや、温泉系も実際には良く使うのですけどね・・・。でもさ、温泉系の入浴剤の色って時々不思議ですよね。何でその色?、と思うことが多々。笑 (この本の中では、「~の爽やかな雰囲気を表した」などと、全般的に好意的であるんだけどさ)

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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さとなお
沖縄やぎ地獄

悪そうな山羊の表紙が一際目を引くけれど、これは著者の等身大の沖縄エッセイというか、食べたこと、感じたことを身の丈で理解して書かれたような本。

目次
トフギの謎
ゴーヤー調教
大量食堂
「オリ生」発「クース」経由「うこん」行
すばの細道(1)沖縄そばを攻めてみる
すばの細道(2)独特すぎるその食感
すばの細道(3)灰汁VSカンスイ
すばの細道(4)沖縄そばの秘密
ひめゆり定食を食べながら
沖縄やぎ地獄
汁物クリーンナップ
豚は長寿の素なのか
日本一苦い朝食
硬派でフィクサーな島豆腐
豆腐酔う
キミはタコライスを知っているか
沖縄=ステーキという幻想が終わるとき
脳内ネーネーズ

目次を読んでも、何だろうと気になるものが沢山あった。また、あくまで「著者の身の丈」をベースにしているので、例えば戦争について、例えば基地について書いていても、それは決して大上段に構えたものではない。

専門的な話ではないかもしれないけれど、ごく普通の「戦争を知らない」本土の人間が感じるようなことで、より自分に近いように感じた。難しいことを抜きにしても、著者の妻・優子さんと、娘・(しかしながら、いつも「坊ちゃん」と男の子に間違えられる)きょうちゃんとの、食べ歩き探索記も面白い。

不思議なことも、その不思議を見過ごしてしまえば、それは不思議でも何でもなくなって、知ることへの道を閉ざしてしまう。「すばの細道」に見る、沖縄そばの秘密へ迫るその様子も興味深い。沖縄そばは、「茹で揚げて油をまぶして自然冷却」したものを、再度湯がいてから出されているそうな。独特の食感に不思議だなぁ、と思ってはいたものの、深く考えることなんてなかったので、その姿勢に敬意を表したくなった。

めちゃくちゃに洗えば上品な味に、丁寧に洗わないととんでもない臭いを発するという、「山羊汁」も気になるところ(だって、「動物園の臭い」だそうですよ…)。また四歳児にして、「山羊汁」を「もっとぉ!」とのたまった、「きょうちゃん」の夜の様子は、まさにゴシック太字で強調されているとおり、「地獄じゃ。山羊地獄じゃ。やっぱり悪魔の食べ物じゃ~」といった様子(血の巡りがよくなる山羊料理には、高血圧の人は食べてはいけないほどの、強壮食なのだそうだ)。

文体ちょっと癖がありますが、家族での掛け合いは漫才のようだし、語り掛け口調も読みやすい。沖縄に行った事のある人も、そうでない人も、するする読んで楽しめる本だと思う。沖縄、また行きたいなぁ。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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吉本ばなな「キッチン」

目次
キッチン
満月―キッチン2
ムーンライト・シャドウ

唯一の身寄りだった祖母をなくし、天涯孤独の身となったみかげ。
「キッチン」は、彼女が身を寄せた田辺えり子と雄一親子との交わりの話。
「満月―キッチン2」では、さらに雄一が天涯孤独の身となってしまう。
みかげと雄一の周囲には、常に死が付き纏う。

私はこの中の「満月」が、すごく好き。
言葉にしなくても、ただ寄り添っていた、ただ明るい思い出を共に持てたということだけで、浮上出来る事も沢山あるのだと思う。

ただ、こういうとても明るいあたたかい場所で、向かい合って熱いおいしいお茶を飲んだ、その記憶の光る印象がわずかでも彼を救うといいと願う。言葉はいつでもあからさますぎて、そういうかすかな光の大切さをすべて消してしまう。

ばななさん得意のスーパーナチュラルな感覚がバンバン出てくるのだけれど、みかげのカツ丼の出前シーンがすごく好き。面倒臭いことばかりかもしれないけれど、ふわふわしたところではなく、もっと大変で、もっと明るいところへ、2人で行くのだ。

人はみんな、道はたくさんあって、自分で選ぶことができると思っている。選ぶ瞬間を夢見ている、と言ったほうが近いのかもしれない。私も、そうだった。しかし今、知った。はっきりと言葉にして知ったのだ。決して運命論的な意味ではなくて、道はいつも決まっている。毎日の呼吸が、まなざしが、くりかえす日々が自然と決めてしまうのだ。そして人によってはこうやって、気づくとまるで当然のことのように見知らぬ土地の屋根の水たまりの中で真冬に、カツ丼と共に夜空を見上げて寝ころがざるをえなくなる。

「ムーンライト・シャドウ」は百年に一度の見もののお話。
これもまた、喪失と再生の物語。ひとつの旅が終わって、また次が始まる。生者の時は流れて行くけれど…。

あの幼い私の面影だけが、いつもあなたのそばにいることを、切に祈る。

ばななさんの小説は、喪失と再生がテーマだし、その明るさは決して太陽のような陽性の明るさではない。月のように冴えた冷たい光の印象もあるけれど、美味しそうな食事の風景、取り戻せない時間を悼むところなどなど、決して冷たいわけではないのだよね。この透明な空気が好きだ。

吉本 ばなな
キッチン
*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

☆関連過去記事

「哀しい予感」/ 喪失と再生と発見


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喜多嶋隆「ラスト・ダンスは、裸足で Last Dance On The Beach」

目次
ラスト・ダンスは、裸足で
デビーに会ったら、よろしくと
渚のラム・コーク
夕陽にシャンパン
赤ワインは、旅のはじまり
初恋のウイスキー・コーク
サングリアが、殴った
門限破りのギムレット
キールのなかに、君がいる
卒業は、ドライ・マティニー
バーボンが聴こえる夜
プルメリアの樹の下で
ウイリーを聴きながら
ブルースじゃ重すぎて
さよならをビリーに
WENDY

重くなく、さらっと読めるけれど、何かが残るような短編集。
言葉にしない部分、雰囲気、行間が好き。

■「夕陽にシャンパン」は、活花の美人家元を起用したCF撮影の話。南の島でトロピカルな花を活けさせ、花の隣にその夏のデパートのファッション・テーマである、<トロピカル・エレガンス>をまとった彼女が立つという趣向。

「LET IT BEって、<あるがままに>って意味でしょう」
「たぶん、そんな感じじゃないかな」
くり返し、そのフレーズを口ずさみながら、彼女は水平線を見つめている。
LET IT BE・・・・・・あるがままに。
ブーゲンビリアの花を、土に咲いているそのまま撮ることで活かしたとき、彼女の中で何が変わったのか。
何がこわれ、何が生まれたのか。

「赤ワインは、旅のはじまり」は、初のフリーの仕事に飛び出す、出発ロビーから話が始まる。いつも繰り返される、彼女との出発間際のやり取り、彼女がくれた紙包み。

今月、失くしたものが3つ。
給料というもの。
かなり気の合う恋人。
それに、とても気に入っているレストランの、奥のカウンター席。
持ってるものは、ただ2つ。
使い込んだキヤノンの撮影機材。
もしかしたら、いい写真が撮れるかもしれない。そんな、角砂糖みたいに頼りない自信のかけら。
それが、すべてだった。

■「門限破りのギムレット」は、ホテルのバーカウンターで会った、スカGを駆る、ジャジャ馬お嬢さんのお話。

BGMが、<For Once In My Life>に変わった。
人生にただ1度の・・・・・・とS・ワンダーが唄っている。
そう。
大統領の決断だろうと、ひとりの娘の決心だろうと、2度と帰らない一瞬であることに、ちがいはない。
おれたちは、黙ってグラスを合わせた。

「WENDY」は水泳少女、ウェンディーの話。彼女はハイ・スクールの最終学年。恋人は空軍パイロットのエディ。彼女の最後の試合の日、エディは編隊飛行しながら、本島の基地に帰る。そして、そのまま空母で本土へ。休暇には帰ってくるとウェンディーに約束するエディだけれど、実はその頃既にウェンディーはこの島にいない。仕事につくため、彼女はハイ・スクールを卒業したら、この島を出ていく。

紺に近いほど青い空。
銀色の飛行機が、視界に入ってきた。
小型ジェット機の編隊。
もしかしたら、エディのチームかもしれない。
6、7機のジェット機は、左から右へ動いていく。横に並んだジェット機の編隊が、白い煙をポッと引いた。
何か、文字を描いていく。
G・・・・・・O・・・・・・!・・・・・・W・・・・・・E・・・・・・N・・・・・・D・・・・・・Y・・・・・・。
<GO! WENDY>
たしかに、そう読める。
ジェット機の編隊は、文字を描き終わると、そのまま東の空へ消えていく。


作家さんのタイプにも色々いるのだと思う。この喜多嶋さんは、同じテーマを繰り返し書くタイプの作家さん。新たな作品を読むことはないと思うけれど(amazonで見たら、最近の作は質が低下しているのでは、と書いてあった。同じテーマを繰り返し書いているので、無理もないけれど)、彼の描くテーマがずっと好きだった。自立すること、自分のルールを持つこと、自分のスタイルで生きていくことがテーマ。抜書きしながら、ちょっと気障?と思う部分もあったけれど、人生のワンシーンを切り取るのがうまいなぁ、と私は思う。

喜多嶋 隆
ラスト・ダンスは、裸足で

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よしもとばななの作品は、とても好きなのに、感想を書こうと思うといつもぼやけていってしまい、言語化が難しい。それは、死や喪失が身近にあるものの、決してドラマティックには描かれないためなのかもしれない。でも、死や喪失を越えて、生きていく人々の心持はいつも明るく好もしい。

吉本ばなな「哀しい予感」

「哀しい予感」の始まりはこう。

 その古い一軒家は駅からかなり離れた住宅街にあった。巨大な公園の裏手なのでいつでも荒々しい緑の匂いに包まれ、雨上がりなどは家を取り巻く街中が森林になってしまったような濃い空気がたちこめ、息苦しいほどだった。
 ずっとおばがひとり住んでいたその家に、私はほんのしばらく滞在した。それはあとで思えば、最初で最後の貴重な時間となった。思い出すと不思議な感傷にとらわれてしまう。いつの間にかたどりついた幻のように、その日々は外界を失っている。
 おばと2人で過ごした透明な時間を私は悼む。全くの偶然から産み出された時のすきまの空間を、共に持てたことを幸運に思う。いいのだ。終わってしまったからこそ価値があり、先に進んでこそ人生は長く感じられるのだから。

この部分が気に入った人は、是非読んでもらいたいと思う本。既に読んでおられる方には、懐かしい部分かなぁ。失われた家族の発見と、新しい愛する人を発見する物語。主人公は19歳の弥生。

引用したおばの家、おばの生活も素敵。
弥生の弟の哲生、弥生の両親も素敵だ。

ばななさんの本に出てくる男の子は、たいていの場合真っ直ぐで正しい。

私は彼をかなりずさんに扱ってきたが、心の底ではその物事に対する無垢な熱心さを尊敬していた。彼は生まれつき、自分の内面の弱さを人にさらさないだけの強さや明るさを持っていて、何にでも怖れを知らずにまっすぐぶつかってゆくことができた。

ごく普通の食べ物が美味しそうに見えるところも好き。
ばななさんの小説に出てくると、マクドナルドだって、非常に好もしく美味しい食べ物に見える。

最近の作品はほとんど読んでいないけれど、一時期ばななさんの本を集中して読んでいた。だから、余計内容が覚えられないのかもしれないのだけれど、「キッチン」と、この「哀しい予感」だけは内容もきちんと覚えていて、さらに時々読み返したりもする。

吉本 ばなな
哀しい予感

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C.W.ニコル 松田 銑訳「冒険家の食卓」

食事をともにするということは、単にそこに用意された料理を分ち合って食べることだけではなくて、楽しみと信頼と友情と力と人生そのものとを分ち合うことにほかならない

これは、こう語るニコルさんが、世界各地で食べた物を紹介する本。

食べる時の姿勢も素晴らしい。客人として食べ物を頂く時、見慣れない物、食べ慣れない物を、つき返してしまう怖さの事も良く理解している。誰だって、ご馳走と思って出したものを拒否されたら、きっと嫌な気分になるよね。

わたしは見知らぬ土地を初めて訪れ、新しい友人と一緒に食事をするような場合は、出された食物が何であるかをいつも質問する。ただし、目の前の食物の正体がチョコレートでくるんだ蟻だとか、いかの身をはらわたの塩づけにまぜたものだとか、わかっても、とっさに皿をつきのけたりは決してしない。質問するのは、頂く養分のもとが何なのかを知り、それから授かる生命のエッセンスをよく味わい、感謝するためである。
結局のところ、われわれが何かを食べるとき、その何かはわれわれ自身の一部になるのだから。

わたしの人生哲学は、心の底からの「イタダキマス!」の挨拶である、と言ってもいい。

目次
北極熊は鍋の中へ ― 氷原の熊鍋料理
南氷洋のすし ― 新考案”京丸巻”
料理人には逆らうな ― つまみ食い撃退料理
かば焼きだけが鰻じゃない ― イギリス風鰻料理
食い物で人を侮辱するなかれ ― エチオピアで豚を食うには
幽霊島の珍味 ― 日本の酒友諸君にすすめる一品
魚の頭がおれを睨む ― 魚の野外料理法
殺し屋志願 ― 七面鳥に引導を渡す法
懐かしの悪童料理 ― 若鶏の焚火焼き
フランス料理の天国と地獄 ― 私が語れる唯一のフランス料理
腹のことを考える人は尻のことも考える ― カリブー・ステーキと中古トイレ
雪原のディナー ― サヴァイヴァル用冷凍シチュー
酒を飲むのも命がけ ― エチオピア式歓待法
兎と幽霊と巨人の島で ― 冷えた兎のローストと淋しい酒のスタウトと
恐怖の泥団子 ― ジプシーの謎の料理
材料はいくらでも飛んでいる ― ハトポッポ料理
あなた材料を知りたいですか? ― 特選スパゲティ
食卓の下の花嫁 ― ピーター先生と野草のサラダ

目次を見ても分かるかな、ユーモアたっぷり、面白いです。一応、それぞれのお話の後に、作り方も書いてあるのだけれど、例えば<北極熊のポット・ロースト>なんてのは、一生作ることはないと思われる。
<雪のアイスクリーム>なんかも魅力的ではありますが、材料の「清潔で新鮮な天然の雪(汚れた雪は使わぬこと)」が手に入らないかな。

この中で一番おかしいのが、「料理人には逆らうな」のつまみ食いの話。
カナダの湖での調査の仕事をしていた際に、典型的な都会派の料理人バーニーの機嫌を損ねる、グランニーのつまみ食いを止めさせるために、ニコルさんが作ったものとは・・・。
その材料は清浄食品ではなく、ある種のかぶと虫が大好きなもの。

「懐かしの悪童料理」の、イギリスのいじめのひどさには驚かされる。
「イギリスの小学校の男の子たちというものは、冷酷無惨もここまでくればご愛嬌と言いたいくらい、絶妙な拷問の名人である。ただなぐったりするような、そんな生易しいことはしない」のだって。しかし勿論、そんなことでへこたれる様なニコルさんではなく、学校嫌いになりながらも、自然に親しんでいくのです。

「訳者のことば」にもあるように、ニコルさんは、「強烈な好奇心、危険に惹きつけられる冒険心、頑健な体力と負けずぎらいの根性」を備えている。冒険家ニコルさんの様々な場所での出会いと、食事。面白いですよ。

C.W. ニコル, 松田 銑
冒険家の食卓
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大岡信「名句 歌ごよみ 恋」

少し前に、「名句 歌ごよみ 夏」の話をした のですが、今度は「恋夏」と一緒に借りてきた。本当はこれらの他に「春」「秋」「冬・新年」があるらしいのだけど、流石にこの暑さの中、他の季節のものを読む気がしなかった。これらはまたその季節が来たら、読んでみたいなぁと思っている。

表紙裏より抜粋 日本の詩歌の二大伝統は、季節の歌と恋の歌である。本巻は、人生を力強く生き抜いた俳人・歌人らの[恋]の秀作の精選集。日本人の恋愛観、自然観を述べた単行本未収録の講演録四編と、シリーズ全五冊の句歌総索引を併載。

目次
和泉式部 ― あくがれ尽きぬ魂の渇き
建礼門右京大夫 ― かえらぬ昔への悲歌の結晶
与謝野晶子 ― 時を超える夫と妻の相聞歌
正岡子規 ― 肉体の苦と精神の至美の世界と
石川啄木 ― 創意とユーモアに生きる
歌人のみどり 自然の緑
唱和する心
日本文学と女性
日本文学の自然観

「名句・名歌アンソロジー」であるので、目次にある人物だけではなく、夏」と同様、多くの歌が載せられている。 句歌に詳しいわけでもないので、夏」同様、この辺はさらさらと流し読み。なぜ、恋」に収められているの?と思うけれど、私はこの歌が好き。

大和は 国の真秀ろば 畳なづく 青垣 山籠れる 大和しうるはし
                            古事記歌謡

古代伝説の悲劇の皇子倭建命(やまとたけるのみこと)が、東国への長征のはてに伊勢の能煩野で絶命する時、故郷をしのんで歌ったとして伝えられる歌の一つ。
(中略)
実際は皇子の事蹟とは無関係に、国見の儀式の時歌われた国ぼめの歌だろうという。しかし、悲運の皇子のいまわのきわの懐郷の歌として読むとき、この歌はまことにあわれ深いものがあり、第二次大戦中も学徒兵などにさまざまな思いをこめて愛誦された歌である。

国の美しさ、国を愛する気持ちを歌っているのはいいけれど、二度と後半部の意味で、使われることがないようにと思う。

その他、実はこの本を読んでいて、とても嬉しいことがあった。それは、「人のみどり 自然の緑」の章の、ある部分に見覚えがあったこと。懐かしい教科書に載せられていた文と再会して、とても嬉しかった。この話と、獅子狩文錦の話は強く印象に残っている。私と同世代の方は、もしかしたら記憶されているかもしれない。

■色の不思議さについて
桜の色は桜の木からとればいい色がとれる。しかしこれは、咲いている花から色がとれるわけではない。桜の花からは、薄ぼんやりした灰色しかとれない。桜が花を咲かせて、美しい花の色を示しているのは、最後の最後の瞬間に生命を使い果たしている色なのだ。桜の色は桜の木の真っ黒なごつごつした皮からとる。しかも、一年中いつの季節でもいいというわけではなく、花が咲くちょっと前、つぼみをもってきた頃に、その木の皮をもらってきて、煮立ててとる。桜の花のあの美しい色は、葉や枝、幹に、木が樹液を送り込んで、太陽の光の協力のもとにつくり出した色素が、最後に全開したものなのだ。大岡氏はこの話を、志村ふくみさん(染色の有名な作家であるとの事)という方から聞いた時、桜の花の美しさというものは、花だけではなく、桜の根にも、木の幹にも、枝にも皮にも、あの色がたっぷりとあるのだということを感じ取って、深く心を打たれたそうだ。

この話を読んだのは、もうずっと前のことなのに、殆どそのままを覚えていた。桜の木が全身を持って作り出す色。桜の花を見たり、染色の本などを読むたびに、思い出していた。

大岡 信
名句歌ごよみ 恋

*臙脂色の文字の部分は引用を、ピンクの文字の部分は引用後要約を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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