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2007-06-24 19:37:05

「夜は短し歩けよ乙女」/歩けよ、乙女。京の春夏秋冬を!

テーマ:角川書店
森見 登美彦
夜は短し歩けよ乙女

図書館での長きにわたる予約待ちの後、ようやく私の手の元に乙女がやって参りましたよ! やっと出会えた乙女の可憐なことといったら、まさにこの表紙絵のよう。その他にも、この表紙絵には読んだ後にもう一度眺めると、色々と楽しい仕掛けが施されております。今ひとたび、ごろうじあれ。

男汁溢れる「
太陽の塔 」も良かったのですが、同じようにストーカー癖に陥る先輩が居てすらも、こちらの可憐な乙女はあくまでキラキラとその可愛さを周囲に撒き散らす。いやまったく、可愛い女の子は世の財産です。

はからずもその場の主役へと躍り出て、可憐に活躍を果たす彼女、黒髪の乙女とは裏腹に、彼女に惚れ、迂遠な外堀埋めへと、その青春の殆どの労力をつぎ込む、彼女のサークルの先輩は、まるで路傍の石のごとき存在。彼ら二人の命運や如何に??

春。
乙女は満艦飾の夜に、二人の男の借金を賭けて、李白翁と「偽電気ブラン」の呑み比べを行う。この夜はまさにカーニバル・ナイト。木屋町から先斗町へとかけて、乙女、先輩、また夜に出会った胡散臭い人々を引き連れ、夜は過ぎ行く。

夏。
乙女は古本市にて、幼い頃に愛した絵本「ラ・タ・タ・タム」を手に入れる。

秋。
乙女は大きな緋鯉のぬいぐるみを背負い、達磨の首飾りを下げて、心行くまで学園祭を楽しむ。時に、ゲリラ上演される「偏屈王」の主役、プリンセス・ダルマ役をつとめながら。

冬。
乙女は京の町に吹き荒ぶ風邪の旋風を封じ込める。

さて、その間、ストーカーの如く彼女に付き従う「先輩」である「私」が何をやっていたかといえば・・・。春には乙女とはまた別の所で酒宴へと巻き込まれ、夏には乙女の欲する絵本を賭けて灼熱地獄を戦い抜き、秋には乙女を求めて学園祭を彷徨った挙句に、プリンセス・ダルマの相手役である「偏屈王」の座を捥ぎ取る。冬には風邪に倒れながらも、妄想と現実をごっちゃにする彼最大の能力を持ってして、乙女の危機を救う。

そこかしこで偶然を装い出会うたびに、「たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返し、乙女は天真爛漫な笑みを持って「奇遇ですねえ!」と応えるのであるが・・・。

美しく調和のとれた人生を目指して、もりもりとご飯を食べ、むん、と胸を張って歩き、喜ばしい事があれば、二足歩行ロボットの真似をし、なむなむ!と万能の祈りを唱える、黒髪の乙女。好奇心溢れる彼女の目を通した世界は、楽しく良き人ばかりであり、逆に、万年硬派、永久外堀埋め機関と化した、「先輩」の目を通して見る世界は胡乱。その世界の対比を楽しむも良し、乙女の可憐さを愛でるも良し、先輩の報われない努力に涙するも良し。

確かに、これは楽しい本でした~。登場人物も結構な数に上るのだけれど、彼ら彼女らにはそれぞれ登場する必然があり、その描き分け、肉付けもまた見事。

さて、酒好きとしては、第一章における偽電気ブランの描写にも心惹かれるのでした。乙女いわく、それはこんな飲み物なのだという。

それはただ芳醇な香りをもった無味の飲み物と言うべきものです。本来、味と香りは根を同じくするものかと思っておりましたが、このお酒に限ってはそうではないのです。口に含むたびに花が咲き、それは何ら余計な味を残さずにお腹の中へ滑ってゆき、小さな温かみに変わります。それがじつに可愛らしく、まるでお腹の中が花畑になっていくようなのです。飲んでいるうちにお腹の底から幸せになってくるのです。

お腹の中に花畑、咲かせてみたい! 飲み比べ、李白、などというキーワードから、同じくこちらも楽しい酒を描いた、南條竹則氏による「
酒仙 」を思い出してしまいました。

また、本好きとしては、第二章の「下鴨納涼古本まつり」における、俺様な美少年でもある古本市の神にも出会ってみたいところ。

ただの変人なのか、それとも人間の枠すら越えて、既に妖怪なのか、判然としない人々が出てくるのもまた楽しいところでした。というか、あの人たち、ほんとに人間??

目次
第一章 夜は短し歩けよ乙女
第二章 深海魚たち
第三章 御都合主義者かく語りき
第四章 魔風邪恋風邪


「虫とけものと家族たち」、「鳥とけものと親類たち」、「ラ・タ・タ・タム」 はamzonを見たところ、実在の本だったのですね。知らなかった~。

 ←森見氏、幼少期の思い出の絵本だったりするのかしらん?


*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

コメント

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1 ■無題

いやあ、上手にまとめられますねぇ。
一読してほとんど紹介しているだけのように読めるんですが、その紹介の仕方に熱が入っているので、十分楽しまれたことがわかります。読んでいるといろいろなシーンを思い出します。

2 ■>ディックさん

ブログ記事とは如何なるべきものか。
感想?書評?紹介か?
難しい所ですが、私の場合、備忘録も兼ねているので、ブログ記事は紹介(未来、忘れてしまうかもしれない自分に向けて。笑)&感想です。
この本は、読んでいる時の綺羅綺羅の気持ちを残したかったので、こういう形になりました♪
楽しかったです。
*トラバ返し、ありがとうございました。

3 ■あれはきっと妖怪です(笑)

楽しいし、羨ましいしで、めくるめく大学生活って感じですよねぇ。
学園祭でこたつに入りたいですわ。

4 ■京都旅行を楽しんだ乙女から

いつもつなさんのブログは、整理整頓されていて心地のよい室内を連想させます。
しかも可愛らしいお花が飾ってあって、珈琲ではなく紅茶の香りを楽しむ雰囲気がただよっています。
それこそ乙女二号ですよ・・・むううん。笑

>「ラ・タ・タ・タム」

本当にあったのですね~。表紙が素敵・・・。
本物の電気ブランは浅草の神谷バーで呑めますよ。

5 ■>momoさん

やはり、あれは妖怪でしたか。笑
ほんと、みなさん、楽しそうで! 自分も仲間に入りたいですよね、あれ。
momoさんは学園祭の炬燵ですか。私は、断然、電気ブラン~♪
トラバありがとうございました。お返ししようとしたのですが、また不調かも・・・。またやってみますね。私も先輩のあの自虐的台詞が好きでした。「しかるのち死ね!」笑

6 ■>樹衣子さん

樹衣子さんは、京都に行かれてましたもんね。さすが、乙女その一!(…関係ない?笑)
お、このブログにはそんないいイメージが。笑 ありがとうございます♪ 実際の室内は、今結構荒れています…。笑
では、乙女2号も、むん、と胸を張って歩きましょうか。

>「ラ・タ・タ・タム」
気になってしまって、思わず調べてしまいました。
表紙、きれいですよねえ。

>電気ブラン
本物も飲んだことないのですけれど、ここはぜひ「偽」電気ブランが飲みたいな、と。笑
本物の方には、レトロでおじさんっぽいイメージがあるのですが、実際のところ、お味はどうなのでしょう。

トラバ返しありがとうございました~。

7 ■あぁ・・・

つなさ~ん、この記事読んでたら
またこの本が読みたくなっちゃったよ。
すごく気に入ったみたいだねぇ。(*^_^*)
つなさんの熱い思いが伝わってきました。

ラ・タ・タムは実在の本なんですね!!
びっくり。
偽電気ブランみたいに、架空の本かと思ってました。

8 ■>みわさん

トラバ返し、どもですー。

ええ、楽しく読みました♪
ポップでキュートで、森見さんがこの作品を「娘」と称すされるのも分りますねえ。
登場人物が少し重なるという「四畳半~」も読みたいんですが、図書館にないみたいで。私はこっちを買っちゃうかも。笑 でも、「夜は~」は持っていると、確かに布教用にもいいかもしれませんね。笑

ラ・タ・タ・タムは実在だったんです。森見ワールドを堪能するためには、こちらも読むべき?笑

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