「平原の町」/その魂の行方
テーマ:早川書房
コーマック マッカーシー, Cormac McCarthy, 黒原 敏行
「平原の町
」
コーマック・マッカーシー「すべての美しい馬
」に出てきた、ジョン・グレイディのその後、です。
しかしながら、「すべての美しい馬」およびこの「平原の町」は、コーマック・マッカーシーの<国境三部作(ボーダー・トリロジー)>の二作であり、この二つの作品の間には、「越境」という物語が入るらしい。
ジョン・グレイディのその後、ということで、突っ走って、「平原の町」に行っちゃったんだけど、私はこの後、この事を深く悔やむことになるのです・・・・。<三部作>は伊達じゃないっす。きちんと順番通りに読みましょう~、ってことよね・・・。
老成しているようにも見えたけれど、何だかんだいってまだ十六歳と、主人公であったジョン・グレイディが年若かった「すべての美しい馬」に比べ、こちらの物語には、常に退廃の匂いが付きまとう。
十九歳となったジョン・グレイディが身を寄せるのは、テキサス州南西部の町、エルペソ近くの牧場。牧場主であるマックは愛する妻を亡くし、娘を亡くした義父であるミスター・ジョンソンもまた、喪失感に苛まれている。働いているカウボーイたちも、もっと新しい場所、環境の整った場所に行くことも出来るけれど、それはせずに、この古い世界に暮らしている。ソコーロが用意してくれた食事をとり、弁当を持ち、仕事へと出かけていく。しかしながら、この古い世界の終焉は近い。最終章では、この牧場も軍に収用されてしまう・・・。
ジョン・グレイディと互いに「相棒」と呼び合うのは、二十八歳のビリー・パーハム。何だか、やたらと出番が多く、何かを背負っているらしき人物だな、と思っていたら、このビリーが「越境」の主人公だったわけです。先に、こちらを押さえておくべきでした。
変わらないカウボーイたちの暮らし、馬の調教、牛追い、野犬狩り・・・・。
そんな生活の合間に、ジョン・グレイディは国境を越えた、メキシコの町ファレスで、十六歳の娼婦、マグダレーナに出会ってしまう。彼は周囲の忠告に耳も貸さず、彼女と結婚しようとするのであるが・・・。そして、訪れる悲劇。
ジョン・グレイディのその後を読みたくて、手に取った本書だけれど、作者の描きたかったことはもっと大きなことだったのだなぁ。
ラストではなんと時代は2002年! マックの牧場を出たビリーは、馬を進め、現代社会からはみ出したまま、老人となる。
詩と哲学が、土埃の中に見え隠れするようなこの作品。ラストのビリーと男との、男が見た夢の中の男の会話も、深いなー。とても、理解したとは言えないんだけど・・・。
ここに引いてしまうと勿体無い気がするので、今回は我慢しますが、最後に書かれた言葉がまたかっこいいんだ。
また、「訳者あとがき」より引用すると、作者コーマック・マッカーシーは、自作(「Blood Meridian」)に関連して、次のように語っているそう。
流血のない世界などない。人類は進歩しうる、みんなが仲良く暮らすことは可能だ、というのは本当に危険な考え方だと思う。こういう考え方に毒されている人たちは自分の魂と自由を簡単に捨ててしまう人たちだ。そういう願望は人を奴隷にし、空虚な存在にしてしまうだろう。
確かに、確かに、コーマック・マッカーシーの作品に出てくる人物達は、みな、魂と自由を捨てない者たち。しかし、これがまた時代にそぐわない。時代はどんどん、彼らの世界を圧迫していく。コーマック・マッカーシー自身も、かなり気骨のある人物のようで、ある大学から二千ドルの報酬で講演を頼まれても、”私がいいたいことは誰も買わない小説のなかに全部書いてある”と断り、極貧の生活を続けたのだそう(「訳者あとがき」より:ベストセラーとなった『国境三部作』以前の五作は、どれも五千部以上売れたことがなかったとのことなので、これは多分その売れない時代のこと?)。
さて、「すべての美しい馬」は、みずから志願してジョン・グレイディ役を獲得したマット・デイモンを主演として映画化され、2000年6月にはアメリカで公開されたそう。マット・デイモン、なかなか似合うのではないでしょうか。うわー、見たい! 日本では公開されないのでしょうか・・・(もしくは、既に公開されてて、私が気付かなかっただけ??)。
と、思ったら、発見! DVDだったら見られるのね~。
- ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- すべての美しい馬











1 ■マッカーシー
町の本屋さん(中古本屋さんも含む)で『すべての美しい馬』を見掛けることはあっても、『越境』と『平原の町』を見掛けることはありませんね。
マッカーシーの本て売れてないのですか・・・?アメリカでも・・・。イイ話を描く作家なのに・・・。
作品が映画化までされていて、極貧の生活を続けたのですか。その頑固さ、なんだか作品と作家が深く繋がるエピソードですね。
読まなくては・・・、『越境』から(笑)。